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12 女戦士降臨


 マスコットキャラがしゃべりだした。


 『ハーイナツミ、マー君とヨシ君もいるわね。ふたりとも50年ぶりかな?

 いまは西暦――……

 あらなんかヘンね?

 ネットワークが同期しない。ていうか無い。ちょっとお待ち、新しいネットワーク検出した

 ……やだここイグドラシルじゃないの!』


 「そうなのよ、ベータちゃん」

 

 『驚いたなあ……あんたここに来れないはずでしょ?』

 

 「うん……そのはずだった」


 『まいっか、それでなにする?またホームビデオ見る?それともゲーム?』


 「なんであんたここがイグドラシルって分かったの?」


 『そりゃわたしの〈ハイパワー〉のお仲間が独自ネットワーク結んでるから、世界じゅうに散らばって情報収集してんのよ。――すごいねえ。ひとりなんか火星より遠い土地に行ってるぞ。イグドラシルがこんなに広いとは知らなかったな~』


 「なんでアルファさんの声がするんだ!?」マサキが言った。

 「そりゃ、おーえすの代わりにアルファの電子頭脳をお裾分けしたんだとかどうとか――言ってたわ」

 「ていうかあのひと〈ハイパワー〉だったのか!?そんなことぜんぜん言わなかったじゃん!」

 「言わなかったっけかね?」

 「聞いてないよ!」

「おれ気付いてたぞ」ヨシキが言った。「あの人ぜんぜん年取らないし、だいたいアルファって名前からして変だろ?」

 「ほらー」

 「でもかーちゃんから教えてもらった記憶は無いから」

 「――ごめん」


 『はいはいあんたがた~、めんどくさい親子の会話うるさいからね~』画面上のベータがパンパンと手を叩いた。『用がないんならシャットダウンしちゃうぞ』


 「へそ曲げないで。でもとりあえずいまは――」

 ナツミが言い終わらないうちに画面が消えた。


 「……こいつもめんどくさい機械だな」

 「誰がこいつだって?」

 「おわっ!」


 背後から声をかけられてマサキとヨシキは椅子から飛び退いた。

 等身大のアルファが立っていた……いや、ベータか。

 しかし格好が……いわゆる「ビキニアーマー」と呼ばれてる物か。「アーマー」なんて肩パッドにしかない。腰には大剣を吊していた。

 ナツミの親友、天草カオリの若かりし頃と瓜二つ……しかし髪の色は、紫。


 「えーと……アルファなの?」

 「ベータだよ!アルファはずっと遠くにいるわよん」

 「じゃあホログラムかなにか?」

 「へっへー、どうでしょう?」

 

 息子ふたりはベータの上から下まで眺め回していた。

 ナツミもファンタジー女戦士を凝視した。

 (アレはいささか目の毒じゃないの?特にあの……)

 ナツミの表情を正確に読み取ったベータが言った。

 「あ、ボクたちにはちーっと刺激強かったかな?」ベータは豊満な胸を指さした。おっぱいがスッとダウンサイズした。

 息子たちはやや不満げだ。

 

 「じゃ、やる?」

 「エッなにを?」マサキが面食らった顔で言った。

 「冒険だってば!なんだと思ったの?」

 「いやあの」

 ヨシキは椅子に座り直した。「Tーバックって初めて見た――」

 「は?」ナツミは顔をしかめた。

 「いや」ヨシキは手を上げた。「なんも言ってない」

 「ベータ!うちの子をからかわないで!」

 「ごみんごみん」

 だがヨシキが再びサッと立ち上がり、立ち去るように背を向けた。

 「ヨシ君?」

 「なんか……「うちの子」とか言われんの、しっくりこねえ……」

 「えっ!?母さん気に障ること言った?」

 「別に」


 そう言い捨ててヨシキは立ち去ってしまった。


 「あ、ヨシキ――」ナツミはテーブルに手をついて立ち上がったが、ヨシキはとっとと外に行ってしまった。

 マサキもその姿を眺めていたが、やがて溜息をついた。

 「母さん気にすることないよ。あいつちょっと難しいんだ」


 「そうなの……でも」



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