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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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再度

サリーに案内され、ラベンダーが待っている部屋へ戻ってきた。

何度か来ているのに、ユリは一向に屋敷内が把握できない。

まあ、方向音痴なのだから仕方ない。


ラベンダーだけか、居てもローズマリーの二人だけだろうと思っていたら、本日のアルストロメリア会のメンバー全員と、ほとんどのメイドが勢揃いしていた。


すすめられた席に着席すると、ユリたちよりも後から来たためか、ラベンダーはユリの隣に座った。反対側にはソウがいる。


ユリたちの着席を確認すると、ローズマリーが話し出した。


「ユリ様、まずはラムレーズンアイスクリームのお話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「あ!忘れてました!お願いします!」


「では、私から。あのように美味しいアイスクリームは、是非アルストロメリア会で教えていただきたいです」

「教えるのは簡単です。口頭で済みます。味や、アルコール あ、お酒が入っていることに対しての感想が欲しいです」

「あの程度のお酒なら子供でも大丈夫でございますよ?」

「そうなのですか?他に食べた方は?」


ラベンダーが手を上げてから話し出した。


「はい、私も妹も、美味しいだけで問題ありませんでした」


その他に食べてみたのは恐らく使用人たちだ。

自分から発言することはまず無い。


「サリー、まとめたものを話しなさい」

「かしこまりました。料理人もメイドもほぼ全員がいただきました。忌憚無い意見を集めても、美味しい。以外の回答がありませんでした」


ソウが助け船を出す。


「ユリ、作り方の違いを説明しないと意味無いんじゃない?」

「あ、そうか。あのアイスクリームはアイス箱で作りました。アイスクリーム専用真冬箱です」


「できたのですか!?」

「試作機をいただきました」


試作機?と全員が理解できないでいる。


「ユリ、実物見せた方が早いよ」

「持ってきてないよ?」

「持ってくれば良いんでしょ?」


ソウが転移で消えた。

会場が騒然となる。


即戻ってきたソウは、アイス箱と、ラムレーズンの漬けてある瓶を持っていた。


「んー、では、今から作りましょう。ローズマリーさん、もう一回アルストロメリア会をして良いですか?」

「勿論でございます!」


「サリーさん、アイスクリームを作ったときと同じ用意をお願いします」

「かしこまりました」


「では、アングレーズソースを作れる方はお手伝い願います。ローズマリーさん、ラベンダーさん、マーガレットさん、カメリアさん、カーネーションさんと私で6倍できますね。この器械で2回分です」


どこからともなく持ち込まれた台車のようなもので、アイス箱は運ばれていった。


専用厨房に移動し、皆作り始める。

参加できないメンバーが悔しそうだったので、横に1人ずつ付いて良く見て覚えてくださいと言うと、ユリのそばには、パールホワイト伯爵夫人のサンフラワーが来て、あの日来られなかったことをとても悔しく思っていたと話していた。


「では特別に、説明しましょう。あの日のアイスクリームは器械を使っていませんので、お店で食べたのと一緒でした。今作っているのは、配合は同じですが、行程が違うので、別物が出来上がります。楽しみにしていてください」

「はい!ありがとうございます」


「ローズマリーさん、全部ラムレーズンにします? 違うのも作ります?」

「違うのとは、どのようなものでしょうか?」

「ココア、抹茶、きなこ、あとはシャーベットとか、かな?」

「今おっしゃったものだと、きなこはございます。一緒に黒蜜がございます」

「じゃあ、黒蜜きな粉にしましょう。お店でも出していない味です」

「まだどなたも食べたことがないお味なのですか?」

「そうですね」


初物好きの女性たちの目が輝く。


「さて、アングレーズソースが冷えたので作りましょう。とても簡単です。アングレーズソースと生クリームをそのままいれてかき混ぜるだけです。では、充填します」


ユリがさっと充填すると、回り全員が驚いた。


「ユリ先生!大丈夫ですか!?」

「え?っと、何が?」

「今、魔鉱石3つ分の充填をされましたよね? お体はなんともございませんか?」

「なんともないですし、毎日やってますけど・・・?どういう意味ですか?」

「一般の貴族は魔鉱石3つ分の充填をすると倒れます。なので魔鉱石を3つ使う場合、2~3人で担当します」

「あ、そういえば、パープル侯爵もそんな事を言ってました。持ってきた真冬箱を私が充填したら、この後充填するのは代わって貰った方が良いと。でも忘れて自分で充填しちゃいました」


ユリはハンドルを回しだしたが、回りはユリの言葉に絶句していた。


「ユリ先生、魔力多いのですね・・・計ったことはないのですか?」

「どうやって計るのですか?」

「魔鉱石をたくさん用意して、倒れるまで充填して限界を計ります。魔力総量の1割を切ると体が重くなり、全部放出するとしばらく動けなくなります」


あーそれでユメちゃんは、動けなかったのね。そこまで頑張ってくれたなんてユメちゃんありがとう。と、ユリは改めてユメに感謝した。


「今度お休みの日にでも試してみようかしら。でも、充填した魔鉱石の使い道がないわ」

「いくらでも買い取る商人が居ります」

「そうなんですね」


ユリは気楽に話していたが、聞いている人たちはユリの魔力の多さにおののいていた。


「そろそろレーズンを加えます。皆さん見に来なくて大丈夫ですか?」


アルストロメリア会のメンバーは我にかえり、あわててユリのそばに寄り、アイス箱を覗き込む。


ユリがレーズンを加えると、ラム酒の香りが漂う。


「はい!できました」

「え、もうできたのですか?」

「これが、混ぜながら冷やせる強み、その1です」


ユリは用意して貰った小皿にアイスクリームを取り分ける。


「溶けますので受け取った方から食べてください」


「ユリ先生!これが一番美味しいです!」

「出来立てが一番美味しいのですよ。そして、混ぜながら冷やしているので、空気がたくさん入って凍ります。なので、滑かになります。これが強みその2です。手でかき混ぜたものはどうしても少しシャリシャリするのですが、これはしませんね」


中身をボールにあけ、ユリが洗おうとしたらメイドが代わってくれた。


行き渡ってボールに残っている分をメイドに渡した


「みなさんでどうぞ。感想くださいね」

「はい!」


「次に黒蜜きな粉アイスクリームを作ります。横で説明しますので、やってみたいかたは手伝ってください」


結局、全員が代わる代わるハンドルを回した。最後の辺りハンドルが重いので、ユリが代わり、アイスクリームができあかった。


すぐにボールにあけると、横からメイドが洗い物を受け取り持っていった。


黒蜜を線のようにたらし、皿に取り分けた。


「黒蜜が足りない人は自分で足してください」

「うわ!美味しい!なんとも言えない落ち着く味です!」


ラベンダーが横で感激していた。

そして、ほとんどの人が黒蜜を足していた。

良く見れば、ソウまで黒蜜を足している。

皆どれだけ黒蜜好きなんだろう?


行き渡ったので残りに黒蜜をかけ足し、メイドに渡した。


「これも感想くださいね」

「はい!」


「こんな感じで、冷やしながら混ぜると滑らかに出来上がります」

「ユリ先生、このアイス箱は販売されるのですか?」

「もう少し小型化したものが販売される予定です。それならハンドルもあまり重くならないと思います」

「絶対に買いたいと思います」


「それと、簡単な配合つきで販売すると思いますが、アングレーズソースは習わないと難しいと思うので、アイスクリームの種類がたくさん作れるのは、アルストロメリア会のメンバーだけかもしれません」

「それはとても。ほほほ」

「販売されたら、付属以外のレシピを配りましょう」


「ユリ先生、次回はパンプキンプリンをお願いします」

「あ、はい。蒸し器どうなりました?」

「料理人は存じていたらしく、手配いたしました。ただ、当日は蒸したカボチャを用意した方がよろしいですよね?その間することがありませんし」

「私が来る頃に蒸し上がっていると言うことですか?」

「はい」

「私はとても都合が良いですが、大変じゃないですか?」

「それは大丈夫でございます。皆前日から居りますし」

「え?」


「当家にいらっしゃるのに、馬車で1日では到着しない方も多いのですよ。仮に当日中に来られる方でもその日のうちにはお帰りになりませんし、ユリ先生も たまにはお泊まりになりませんか?」


ユリは思い付きもしなかった。

この国の基本情報を押さえていないユリは、広さなども把握していない。

この国はかなり広い。一番遠い端から端まで行くのに、馬車で3ヶ月で着かない。


王宮に有る転移陣を使うには許可も魔力も要り、おいそれと使えないため、緊急召集などにしか使用していない。

ただ、手紙などは、軽い魔力で送れるので、手紙専用の転移陣からどこの領地にでも送ることができる。


「今度機会があったら泊めてください」

「歓迎いたします」


本日のアルストロメリア会は2度目の解散をし、帰ることになった。


馬車まで送ってくれたラベンダーとサリーが、合計18万☆と、洗ったココットを渡してくれた。

先程のアイスクリームは、メイドと料理人とその他の使用人の皆で食べたそうで、できたての柔らかさの違いなどに特に驚いていたらしい。


ソウに気づいたマーレイが、メイドが運んできたアイス箱に驚きながらも馬車に乗せてくれた。

ラムレーズンの瓶は忘れずにソウが持って来てくれた。


「帰ろうか」

「はい。帰りましょう」

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