木箱
帰りは中で少し休むようにとソウに言われた。
ユリは一緒にいたかったが、帰ったら荷物が着いているだろうから片付けがあると言われ、おとなしく従った。
うとうとしていると馬車が止まり、ソウに着いたよ。と呼ばれた。
馬車を降りると家の前に木箱入りの荷物が積んであった。1m四方の箱が54個。
「えーと、盗まれないの?」
不思議に思ってソウに聞くと、この辺一帯無断で入る馬鹿はいない。とのことだった。
それってやっぱり、お店をやっても誰も来ないのではないのかしら?とユリは思った。
木箱から中のダンボールに入った荷物を取り出す。
クッションなど、ビニール袋に入れそのまま木箱に入っている荷物もある。
「ユリ、どれをどこに持っていけば良いの?」
「あ、ごめん。箱の外に中身か部屋の名前を書いておいたから、それで」
「わかった。これは、化粧品だからユリの部屋だね。ユリ、2階に行くよ。一緒においで」
「うん!一度全部の部屋見なくちゃ!」
2階にはユリの部屋、キッチン、リビング、クローゼットルーム、バスルーム、水洗トイレが二つの他、空き部屋が3部屋あった。
完全に、1階が店で、2階が住居になっている。
「空き部屋が3部屋あるから俺、ここに住もうかな?良い?」
「ここに一緒に住んでくれるの?」
「ユリが良ければ」
「うん!良いよ。ここに住んで!」
ソウは最初からここに住む気でいた。流石にユリが来る前に住んでいる訳にもいかず、領主の屋敷に滞在していたのだった。
「大方片付いたら俺の荷物を取りに行ってくる。まあ、俺の荷物はほとんど無いけどな」
ユリの部屋には可愛らしい花模様のドレッサーと、おしゃれなベッドと机が既にあった。
他の1部屋のベッドと机はシンプルな作りで、もう2部屋は、何も置いていなかった。
各部屋は六畳位の大きさで、壁一面が収納だった。
シンプルなベッドが有る部屋がソウの部屋かな?とユリは思った。
「さあ、頑張って荷物を家に入れよう!」
「はーい!」
重い物のほとんどは店で使うものなので、以外と早く外の荷物は片付いた。
54個もの木箱をどうしよう。と思っていたら、沢山の荷車を引いた人達が引き取りに来た。
4個ほど残して引き取ってもらった。
なぜかとても喜ばれた。
不思議に思ってソウに聞いてみると、「いくらでも使い道があるからな」と言っていた。
1階は、店舗と厨房と内倉庫と外倉庫が2つと小さめの部屋があった。仮眠室に良さそう。
外倉庫にプロパンガスの大きなボンベが沢山あった。
四個の木箱は借り受け荷用の外倉庫に2つ収納し、2つは北側の外にひっくり返して並べた。