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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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分包

馬車を降りると、いつものメイドさん達による揃った挨拶だ。


「ようこそいらっしゃいませ、ユリ様!」


次にアルストロメリア会のメンバーの挨拶がある。


「お待ちしておりました。ユリ先生!」


「おー。これがうわさの」


ソウが感想を言いながら馬車から降りてきた。


「ソウ・ホシミ様!」

「オブザーバーだから構わなくて良いよ」


ソウは慌てたローズマリーを制止し、メイドたちと移動して行った。


「ローズマリーさん、ちょっとご相談があるのですが」

「ユリ様、どのようなことでしょう?」

「ローズマリーさんは、会をしきったり、運営したりで大変だと思うので、誰か私の助手をしてくれる人はいないでしょうか?」

「補助でしたら、サリーでも料理長でもお好きに使ってくださって構いませんが、アルストロメリア会のメンバーの前に立つのでしたら娘はいかがでしょう?」

「良いですか?ラベンダーさんにお願いできればと思ってました」


「サリー、ラベンダーは居るかしら?」

「本日はお部屋にお一人でいらっしゃる予定です」

「ユリ先生の助手として呼んできてちょうだい」

「かしこまりました」


「本人の意思は確認しなくて大丈夫なんですか?」

「参加したいと我が儘を言っていたくらいですので、むしろ飛んでくると思います」

「それならよかったです」


「ユリ先生、紹介させてください」

「はい」

「こちら、ネイビー侯爵夫人、コスモス様、

こちら、ピンク侯爵令嬢、サフラン様、

こちら、クリムゾン侯爵令嬢、コルチカム様、

こちら、マリンブルー伯爵令嬢、ストック様、

こちら、チャコールグレー子爵夫人、バイオレット様です」


各人から挨拶があった。が、既に覚えきれない。

チャコールグレーって、どんな色?

(スーツに使うような濃いグレーである)


「2回目以降のメンバーは、サンフラワー様、カメリア様、カーネーション様、私と、マーガレットです」



「はい、皆さんよろしくお願いします」


専用厨房に移動すると、既にラベンダーがサリーと一緒に待っていた。


「ラベンダーさん、無理言ってごめんなさいね」

「え!とんでもございません。お願いしたいくらいでした!」

「私、先週聞こうと思っていたら話を中断してしまいましたので」

「そうでしたね」



「今日はヨーグルトゼリーです。二人組で作業をしてください」


コスモス&ローズマリー

サフラン&マーガレット

コルチカム&サンフラワー

ストック&カメリア

バイオレット&カーネーション

で、組むらしい。

新人さん同士の組がなくてありがたい。ローズマリーが気を使ってくれたのだろう。


「ではまず、容器を確保してください。1人4つ必要です。洗ってはありますが、軽く洗ってください」

「ユリ先生、8こ用意すれば良いでしょうか?」


ラベンダーがたずねてきたので任せてみた。


「はい、お願いします」

「お嬢様、洗うのはお任せください」


サリーが、洗うらしい。

王宮からもココットは返却されたらしく、割りと数が戻ってきていた。

手が空いたらしいラベンダーが、次の仕事を聞いてきたので、助手らしい仕事を頼む。


「今日は個包装のゼラチンではないので、5gずつを6つ量っておいてください」

「かしこまりました!」


上皿天秤(うわざらてんびん)で、分銅(ふんどう)を使って量ってくれた。

学生時代に理科室でしか見かけたことの無い『はかり』だ!


ユリはクッキングスケールと呼ばれる、500gまで量れるはかりを持参していた。

持ち込み規制でデジタルはかりが使えないと思って持ってきたが、ソウがあっさりデジタルはかりを持ち込んだため、お店で余っていたのである。


「ユリ先生、これはなんですか?もしかしてはかりですか?」

「料理用のはかりです。天秤ほどは正確ではありませんが、薬を調合するわけではないので、10gを越えるようなものを量るには充分なのです」

「使ってみても良いですか?」

「はいどうぞ」


ラベンダーだけでなく、サリーも興味深そうに手伝っていた。


洗い物が終わり、全員にメイドの補助が付き、計量を始めた。


「ゼラチンを配ってください」

「かしこまりました」


サリーが計量をしている間、ラベンダーが量ったゼラチンを配りに行った。


ユリは皆の方を見て声をかける。


「先に、ゼラチンの5倍の冷たい水に、ゼラチンを入れておいてください」

「はい」


次に鍋を火にかけるのだが、火を見る人が見当たらない。


「サリーさん、今日は料理人の方は来ないのですか?」

「この後も教えていただくので、火の番はメイドに交代するそうです」

「あ、成る程。そういうことなのですね」


料理長や副料理長が居ないのは取り決めがあったらしい。

メイドが見るなら問題はないとユリは先に進めた。


「鍋に水と砂糖を入れ温めてください」


計量を手伝っていたメイドが、火かげんも見てくれるらしい。


「砂糖が溶けたら熱源から遠ざけ、熱いうちにレモン果汁を加えます」


鍋にレモン果汁を入れて見せる。

基本的に、いつものメンバーが鍋をおさえ、新しいメンバーがなるべく作業できるようにしてくれているようだった。


「水でふやかしたゼラチンを加えよく混ぜてから、裏ごし網を通し、あら熱を取ります」


ユリは指示をするだけにして、サリーが網とボールをおさえ、ラベンダーが裏ごしをしている。


「ヨーグルトと生クリームを新たにボールにあけ、混ぜます」


特に難しい手順もないので任せたまま進行する。


「あら熱のとれたゼラチンを加え、よく混ぜます。ここであまり冷やしすぎると、固まってしまって上手に出来上がらなくなります」


生地を少しだけゼラチンに入れ、混ぜてから戻す。ゼラチンはユリが加えて見せた。


「型に流し入れます。良く冷やしてできあがりです」


1つだけやって見せ、残りをラベンダーに託した。


「食べるときに、好みでジャムを添えて提供してください」


話している間に全員ができあがり、冬箱にしまい終わった。


「ラベンダーさん、ゼラチンを40gずつ分包できます?」

「はい。いくつ作りますか?」

「まだある?」

「え?あ!もうないです」

「じゃあ、12包お願いします」

「はい」

「あ、11包と30gかな。500g入りを持ってきたはず」

「はい」


サリーも手伝って、少し大きめの油紙のような紙に40gずつ包んでくれた。大きな薬包だ。


「ゼラチンをお配りしますので、なにか作ってみてくださいね」


ラベンダーと手分けして配り、ラベンダーにも1包を渡した。

ラベンダーは嬉しそうに受け取った。


「これ、30gだけど、よかったらどうぞ。要らなかったら料理長にでもあげてください」


サリーに渡すと物凄く驚いていた。

指示をあおぎたかったらしくラベンダーの方を見ていたが、「受け取っておきなさい」と言われ嬉しそうに受け取っていた。


「ユリ先生、どうもありがとうございます!」


揃った声で言われて一瞬ビクッとなった。

いったい誰が指揮をとっているんだろう?

この辺りが、ローズマリーが人を集めたりがうまい所なのかもしれないとユリは思った。



アルストロメリア会の指導が終了し、次はハンバーグだ。

サリーが、残りの片付けを他のメイドに任せ、案内に来た。


「少し休まれますか?」

「ありがとう。すぐで大丈夫よ」


「今回は見学してもよろしいでしょうか?」

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