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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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茶漬

今日はヨーグルトゼリーを教える日だ。

そういえば、クレームブリュレのココット型は王宮から返却されたのかしら?


無いとすると今日困るわね・・・。


少し考えて、持ち出すことにした。


本来、大きな型で作って、切り分けてソースをかけて提供するお菓子だけど、持ち帰れない形状はたぶん困るだろうし、わりと大量にできるから二人組にして更に半量で作ったら良いかしら。そうしたら一人4個くらいね。

あ!ゼラチン持っていかないとダメなのかも?でも、聞きに来なかったわよね?


ユリが一人でぶつぶつ言っていると、少し眠そうなユメが起きてきた。


「おはようにゃ」

「おはようユメちゃん。何か食べる?」

「まだ要らないにゃ。もう出かけるにゃ?」

「まだ出ないわよ。今日の用意をしていただけよ」

「今日は何作るにゃ?」

「ヨーグルトゼリーよ」


「アイスクリームは作らないにゃ?」

「予定はないけど、食べたいなら作るわよ?何味が良い?」

「本当に野菜がアイスクリームになるにゃ?」

「私が居た国には、結構へんてこりんな物もあったけど、紫芋アイスクリームは割りと有名で、カボチャアイスクリームも食べたことがあるけど美味しかったわよ」


「へんてこりんってなんにゃ?」

「わさび入りとか、まあ、美味しかったけど。あと、金箔が入っているのとか、お料理の味のとか。食べたことはないけど」

「へんてこりんにゃ!」


「カボチャアイスクリームは、パンプキンプリンみたいな味よ」

「食べたいにゃ!」

「いつ作れば良い?」

「今日じゃなくても良いにゃ」

「ラムレーズンの日に作るので良いかしら?」

「わかったにゃ」


「おはよう。二人とも早いな」

「おはよう、ソウ」

「おはようにゃ」

「何か食べる?」

「冷たいお茶漬けが食べたい」

「買ってあるお茶漬け海苔で良いの?」

「うん。あと、何かジュース有る?」

「王林のりんごジュースと、オレンジジュースかな」

「りんごジュースで」


「おーりんって何にゃ?」

「りんごの種類で、緑色なのにとっても美味しいりんごなのよ。そのジュースね」

「まだあるにゃ?」

「いっぱい有るから飲んでみる?」

「飲んでみるにゃ!」


ユリは炊きたてのご飯を水で洗うようにして冷まし、水気を切ってお椀に入れて、

氷水と冷茶とお茶漬け海苔を添えてソウに出した。


ソウは、氷水をかけて冷たいお茶漬けを食べていた。


「ソウ、美味しいにゃ?」

「冷たいお茶漬けか? 食べやすくて美味いぞ」

「ユリ、まだあるにゃ?」

「ユメちゃんも食べてみる?」

「食べてみるにゃ」

「じゃあ、私もそうしましょ」


ユリは、二人分の冷たいお茶漬けを ささっと用意し、良く冷えたりんごジュースも3つ持ってきた。

持ち込んだペットボトルのストレート果汁だ。


「冷たくするなら、冷たいご飯で良いにゃ?」

「温かいご飯を食べるときに冷やした方が美味しいかな」

「美味しい方が良いにゃ」

「そうだね。ユメちゃんは、スプーンが良いかしら?」

「箸持てるにゃ」

「え!そうなの?」

「あまりよく覚えてにゃいけど、昔、箸使ったことがあるにゃ」


ユメちゃんは、不思議な存在だわ。とユリは思っていた。


ユメは、自分自身の記憶は曖昧な点が多く、1つ前の世界の記憶は、ここではじめて気がついたときに、ここを異世界と認識したことと、恐らく前の世界で死んだことと、ほぼ言語の記憶しかない。

二つ前と認識している記憶は、この同じ世界にいて大魔導師で女王であったが、他人の記憶を見ている気分で、自分自身であると理解はしているが、あまり実感はないのである。


結局ユリは、スプーンと、先が丸いフォークと箸を全部持ってきた。


「さあ、食べましょう」


ユリは、冷茶をかけていた。

それを見たユメは、どちらをかけるべきか悩み、半分ずつかけた。


「美味しいにゃ!お茶漬けも、おーりんもどっちも美味しいにゃ!」


ユリは微笑ましそうに笑っていた。


ユメは箸で頑張ったようだが、最終的にはスプーンで食べていた。


「ソウは、今日はどこかいくの?」

「今日はついていこうと思ってるよ」

「なら、お昼ご飯は、ハンバーグね」

「なんで?」

「ヨーグルトゼリーのあと、料理人のたぶん8人にハンバーグを教える約束なのよ。あ!ミートミンサーも持っていかなきゃ。そうだ、ミートミンサーが欲しいって言われたら、ソウは対応できる?」

「侯爵に請求するなら対応しても良いけど、ユリの想像より高いよ?」

「お値段交渉はお任せします」


「ソウが行くなら、ちょっと出かけてくるにゃ」

「ユメちゃんは来ないの? じゃあ、お店のお菓子、好きなの食べて良いからね」

「ありがとにゃ!」


ユメは部屋に戻っていった。


「お店も、アルストロメリア会も、助手がほしいわぁ」

「リラじゃダメなの?」

「リラちゃんじゃ、昼間からできないでしょ?」


「あー、ユリ、平民に学校はないから」

「えー! それなら昼間からアイスクリーム作ったのに・・・」

「そうなんだ?」

(げつ)(きん)、じゃなかった、月曜日(つきのひ)金曜日(きんのひ)まで朝9:30~18:30勤務で、14:00~15:00がランチセット付休憩、残業の時は夕飯付きで時給換算1500☆。基本月給20万☆、料理もお菓子も教える特典付きで雇われてくれるかしら?」

「その条件でOKしない人は居ないよ」

「じゃあ、マーレイさんに聞いてみる!」


朝食を片付け、出かける用意ができた頃、マーレイが迎えに来た。


早速先程の話をすると、最初驚いたようなマーレイが、笑顔になって答えた。


「リラが断ることはないと思いますが、それほどまでに素晴らしい条件で本当に良いのでしょうか?」

「これで、一応最低条件なんだけどね。金額はマーレイさんより低くと思って設定したけど、本当はもう少し払いたいのよね」


マーレイは驚いた顔をしてから笑った。


「今日帰ってから話しておきます」

「お願いしますね」


馬車に乗り込み出発した。

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