黒糖
抹茶と違い、チョコアイスクリームは売り切れた。
当日購入分も早々になくなり、おやつタイム2順目にはほぼ無くなった為、店売り分を1回作るようだった。
1度に約20デッシャー分できるが、おかわりをする人がいたため、全部売り切れた。
意外なことに、桃アイスクリームについて注文を言い出す人は居なかった。
閉店し、マーレイとリラが来たときに、疲れて伸びていると心配されてしまった。
「お休み開け、月の日のブルーベリーアイスクリームを作ります。9回と、もう1つは紫芋を2回です」
「ムラサキイモ? それはなんですか?」
「何にゃ?」
「名前のまま、紫色のお芋です」
「お芋がアイスクリームになるのですか!?」
「お芋も、カボチャも、黒糖、あ黒蜜の原料ね、もアイスクリームになりますよ」
「えー!」
「ムラサキイモは紫にゃ?」
「そうですね」
「ブルーベリーも紫にゃ」
「あー、じゃあ、カボチャか黒糖にしましょうか?」
「黒糖が良いにゃ!!」
「私も黒糖が良いです!」
二人とも黒蜜大好きだからかな。
そう思ってマーレイを見ると慌てたように答えてくれた。
「黒糖が良いです」
マーレイが自分から意見を出すなんて珍しい、と思って良く考えると、そういえば、カボチャ苦手なんだったわね。と思い出した。
「では、ブルーベリー9回、黒糖2回で、ココット詰めが50、大デッシャー90、中デッシャー60です」
「はい!」
「はいにゃ!」
「かしこまりました」
アングレーズソースが要らないフルーツ系のアイスクリームは楽である。
「冷凍ブルーベリーと、お砂糖と、生クリームを一緒に入れて混ぜます。お願いしますね」
アイス箱を任せて、ユリは黒糖用のアングレーズソースを作りに行った。
2回分なのですぐ出来上がる。
二つの鍋に作って戻ってくると、既にブルーベリーアイスクリームの2回目だった。
助手たちが優秀すぎてありがたい。
もしお手伝いがなかったら、店売り用も当日売りのお土産用も作れなかった。
アイス箱が無かったらランチやおやつの店売り分を作ろうとさえ思わなかった。
私は人に恵まれている。
ユリは周りの人たちに心の中で祈りを捧げるように感謝していた。
「あ!そういえば、ソウはクッキーを持ってくるのかしら?」
「きっと持ってくるにゃ」
「やっぱり?・・・じゃあ、アングレーズソース作っておこうかしら」
今回使わなかったとしても、バニラでも作れば良いしと、ユリはアングレーズソースを作りに行った。
3つ目のアングレーズソースが冷えた頃、ソウがニコニコしながら帰って来た。
「ただいまー!クッキー買ってきたよ!」
「やっぱりにゃ」
「あはは。ソウお帰りなさい。クッキー&クリームは最後で良い?」
「勿論! 今日は何作ってるの?」
「ブルーベリー9回、黒糖2回よ」
「へぇー、黒糖」
「選択肢が、紫芋、カボチャ、黒糖だったのよ」
「なるほど」
ソウも手伝いに加わり、フルスピードで作業が進んでいく。ブルーベリーの9回が終わり、黒糖を作ることになった。
「これは、黒糖で作ったアングレーズソースです」
「あんまり黒くないにゃ?」
「牛乳と卵黄が入っているからね」
「黒蜜みたいな匂いがします!」
「そうね。では、混ぜましょう」
アイス箱に黒糖のアングレーズソースと生クリームを入れてハンドルをまわした。
「黒蜜を足したいんだけど、混ざらないように混ぜるのは難しいかなぁ?」
「どういう意味?」
「見た目的には、黒蜜の線が残ってる感じ?」
「ボールにあけてから、かけたら良いんじゃないの?」
「うん。そうしてみる」
できあがり、ボールにあけた黒糖アイスクリームに、黒蜜を細く線のように垂らし、冷えて少し固くなってからデッシャーで取り分けた。
うん。良い感じ。
2回分が作り終わり、いよいよクッキー&クリームだ。
普通のバニラを作り、アイスクリームが出来上がってから、買ってきたクッキーを砕いて入れて更にハンドルを少し回してできあがり。
出来立てより、少しおいた方がクッキーがしっとりするらしい。
ユリは食べないアイスクリームなので、知識のみで作った。
今日の家内用は、ブルーベリーが10、黒糖が10、クッキー&クリームが25ある。
「私は要らないから適当に分けてちょうだい」
「私は1つずつで結構です」
「なら3こずつ食べるにゃ!」
「はい!私も3こずつ食べます!」
「俺も3こずつ食べる」
「クッキー&クリームは少しおいた方が美味しいらしいわよ?」
ユリは熱いお茶をいれながら、食べきらないように促した。
「よし、残りは休み明けに皆で食べよう!」
5日分の賃金として、マーレイに40000☆、リラに20000☆支払った。
マーレイに、多すぎる。と言われたが、夜間の仕事は本来なら割り増し料金なんですよ。と言って、そのまま受け取ってもらった。