市場
市場まではソウが馬車を操縦した。
横に座り、景色を見ながら楽しんだ。
草原が広がり色々な草花が咲いている。
流れる風が気持ち良い。
「ソウ、馬車の操縦までできるんだね」
「覚えたんだ。ここは自動車無いしな」
そうだった。自動車無いんだ。これからどうしよう。
ソウに頼らずどうしたら良いか考えてみた。
他に誰か雇ったり、自力で操縦を覚えたり、どちらも無理そうな・・・。
考えても考えても良い案が浮かばなかった。
ユリは来たことを後悔していたりするんじゃないだろうか?
考え込んでいるユリを見てソウは心配になった。
ソウは思いきって聞いてみた。
「ユリ?大丈夫?なに考えてたの?」
「あ、ごめん。私も馬車操縦できるようになりたいなって思って」
「そんなことか。いつでも俺がやるから心配要らないよ」
ソウはユリを見てニッと笑った。
そうは言っても、いつもソウがいる訳じゃないだろうし、どうにかしなきゃ。と、ユリは一人で決意した。
10分くらい走っただろうか、草原の先に、ぐるっと囲うような壁が見えてきた。
入り口らしき場所には帯刀した 憲兵がいる。
きっと一旦降りて、なんか書いたりするのよね?
ユリはそう思っていたのに、門を素通りだった。
「止められたりしないのね?」
「あー、俺だからかな」
「ソウ、偉い人なの?」
「偉いというか、橋渡し役だったからな」
「そうだよね。家も用意してくれたし先に来ていたし」
「そういうこと」
ユリはいまいち釈然としなかったが、揉めるほどの事ではないわね。と追求しなかった。
この時ソウは、
ユリが色々追求しなくて助かった。あまり本当の事を言って混乱させたくないしな。
と思っていたのだった。
実を言えば、ソウはこの領地の領主よりも位が高い。しかし、領地を治める気も、支配する気もないので、好きな場所で好きにさせてもらっていた。
「さて、何から見たい?」
馬車を止め、預かってもらい、二人は市場へ繰り出した。
「馬車を預けた人は知り合い?」
「知らなくはないけど、馬車を預かって馬を休ませたりする仕事だよ」
そういう仕事があるのね。
確かに、お馬さんを放っておいたら可哀想だものね。
ユリはいつも変わったところが気になる。
市場が見えてきた。
マルシェ風だと勝手に予想していたけど、日本の八百屋さん?
みんな洋装っぽい服装なのに、雰囲気が日本の市場っぽい。
なんだろう、何でそう感じるんだろう?
違和感の正体に気づけないまましばらく歩いていた。
「あ!箱だ!」
木の箱に入っているものだと勝手に思っていたのに、ダンボールに入っているからだ!
「ん?どうした?」
「ううん、なんでもない。」
リンゴがダンボール箱に入っていたのだ。
箱に「りんご」と、日本語が書いてある。
今回持ち込んだものなのかしら。
他にも持ち込まれたものがあるか探してみようかなとユリは思った。
食品の品揃えは野菜が豊富だった。
生魚は見かけず、肉は予約制らしい。
調味料は計り売りのようで、店先では壺に入っているようだが、小売りは竹筒に入っていた。
ガラスは高価なのかしら?
それともそのまま竹筒のまま使うのかしら?
買ってみればわかるんだろうけど調味料はいっぱい有るからまだ必要ないのよね。
疑問のまま調味料売りの前を通りすぎた。
冷蔵庫の中を見てこなかったことを思い出した。
「ソウ、冷蔵庫には何が入っているの?」
「肉だな。あとは野菜と果物」
「あ、うん、種類は?」
「ごめん。用意したの俺じゃないんだ」
「ふふふふふ」
「どうした?」
「あまりに凄すぎるソウが遠くに行っちゃったような気がしてたんだけど、ソウだった!」
「なんだよそれー」
二人して笑いだした。
お互いに、無理してるのでは?と気にしていたのだ。
「今日は市場の雰囲気だけだね。苗とか種は売っているの?」
「言ってくれれば、あ、いや、書いてくれれば用意しておくよ!」
市場をひと回りして馬車まで帰ってきた。