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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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小娘

馬車に乗って、やっと緊張から解放された。


「はー、今日は特に疲れたー!」

「お疲れにゃ」

「ユメちゃん、退屈だったでしょう? 最後までありがとね」

「お菓子とグラタン食べただけにゃ」

「ユメちゃんが見守っていてくれたから安心だったのよ」

「良かったにゃ」


いくら貴族がいない世界で育ったとはいえ、王族に相当する国民の象徴は元の国にもいらしたので、さすがに王族の対応はしたくない。

不敬とか良くわからないもの。


まあ、さすがに今回限りだろうし、よし、私頑張った!



「ユメちゃん、お腹はすいてない? 帰ったら何か食べる?」

「葛切りが良いにゃ」

「ユメちゃん葛切り好きねぇ。わかったわ、帰ったら作るわね」

「ありがとにゃ!」


馬車が到着し、マーレイから洗ってあるココットを渡された。

食べ終わった分は洗って返されたようだ。

白い容器は店売り分だから、返却はありがたいわね。


そういえば、言ってくるの忘れてたけど、色つきや、模様つきのココットは、アルストロメリア会専用にしようと思ってたのよね。

お店では使いにくいし、一石二鳥よね。



ドアに手をかけると鍵が開いていた。

ソウが帰ってきてるのかしら?


「ソウ? 帰ってるの?」

小娘(こむすめ)にゃ」


小娘? って、誰?


「ユリ様!」

「リラちゃん? どうしたの?」


あれ? ユメちゃんの言う小娘って、リラちゃんのこと? リラちゃんの方が大きいような? ・・・ま、そんなことは置いておいて、リラちゃん、いったいどうしたんだろう?


「勝手に入ってごめんなさい」

「それは良いけど、何かあったの?」

「この前の、イエローこうしゃく家のライラック様が家まで来て、良くわからないけど、私がユリ様と呼んでたからって、難しいことを色々言われて、よくわからなくて、怖くて、ここに来て隠れていました」

「えー! 何もされてない?」

「はい。見つからなかったので」

「そっか、何もなくて良かった。怖かったでしょ。マーレイさんもまだ外にいると思うから呼んでくるわね」

「ありがとうございます」


外に出て、簡単に説明しマーレイを呼んできた。


「リラ、大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

「マーレイさん、そのまま帰ったら鉢合わせしないかしら?」

「え! まだいらっしゃるでしょうか?」

「リラちゃん、どのくらいここにいたの?」

「お昼過ぎからです」


もう夕方だし大丈夫かなぁ。


「さすがにもういないかな。でも、マーレイさん、少し休んでいってください。リラちゃんとおやつでも食べましょう」

「わー!ありがとうございます!」

「お気遣いくださりありがとうございます」


「ユメちゃん、どのくらい食べる?」

「この前と同じくらいにゃ」

「ユメちゃん???」


リラが不思議そうにユメを見る。

あ、説明してないや。


「もしかして、黒猫のユメちゃんですか?」

「そうにゃ」

「わー! 凄い! 可愛い! リラです仲良くしてください!」

「わかったにゃ」


さすが子供は柔軟だわ、理解が早い。


あれ?マーレイさんが今更ながら驚いてる。あー理解していた訳じゃなかったのね。


カランカランカラン。 ソウが外から帰ってきた。


「お!勢揃い?」

「ソウ、お帰りなさい」

「ただいま。なんかあった?」

「ライラックさんが来て、リラちゃんに何か言ったらしいのよ」


とりあえずユリはお湯をわかしに行った。

裏漉し済みの葛粉は冷蔵庫にある。


「リラ大丈夫だったのか?」

「はい。ここに隠れていました」

「何て言われたんだ?」

「難しいことを色々言っていたので良くわかりませんでした」


厨房から戻ってきたユリは疑問を口にした。


「何で毎度同じ曜日にくるのかしら?」

「え?」

「これで3回目だけど、毎回同じ曜日よね?」


あ、お湯が沸いたわー。

ユリは厨房に戻っていった。


「はい。私が会った2回ともEの日(だいちのひ)です」

「全部同じにゃ」

「もしかすると、イエロー公爵がいない日に来ているのかもしれないな。ここのところ毎週末集まってたし」


「ならー、明日はライラックさん来ないわねー」


厨房からユリが聞いてきた。


「おそらく・・・ 。リラ、もし又来たら俺に言え」

「はい。ありがとうございます」

「ユメ、もしもの時は頼むな」

「任せるのにゃ!」


ユリはトレーに器を5つと重ねた小鉢と黒蜜を乗せて戻ってきた。


「葛切りができましたよー」

「うわー! 美味しそう!」

「マーレイさんも食べてね」

「恐れ入ります。いただきます」

「食べるにゃー!」

「いただきます」

「いただきまーす」

「はい、どうぞ」


ユリはすぐに席を立ち、厨房に戻っていった。すこしして、おかわり用らしい葛切りをボールに沢山持ってきた。


「ユメちゃん、おかわり持ってきたわよー」

「おかわりするにゃ!」

「はい、どうぞ。リラちゃん、おかわりあるわよ。マーレイさんも食べられるならおかわりどうぞ」


「ユリ、俺もおかわりして良い?」

「え? もちろん良いわよ? なんで?」

「俺だけ呼ばれなかったから」


呼ばれなかった?

ユリは自分の発言を良く思い返す。


「?・・・。あー! もともとユメちゃんに作る約束をしていたのよ。マーレイさんもリラちゃんも言わないと遠慮するでしょ? それだけよ?」

「なるほど、いや、ちょっと、最近太ったって色んな人から言われてて・・・」


ソウに「最近少し太りました?」と声をかける人は、本意というよりやっかみである。

元の世界の同僚や知り合いだ。

ソウのユリ大好きは、ユリ本人以外の共通認識だ。この国においてさえも。


「痩せたって、太ったって、ソウはソウよ。健康に影響があるほどは困るけど、少しくらい太ったって、問題ないわ」

「ソウは痩せすぎにゃ」


実際ソウは大分スリムだ。

もう少しウエイトをあげた方が、体重と同じだけ持てる、荷物を持った転移も楽である。



ユメがたっぷり黒蜜をかけたのを見て、リラも自分の器に黒蜜を足していた。


「この黒いの、とっても美味しいですね」

「黒蜜にゃ!」

「くろみつって言うんですか。ユメちゃんは物知りですね!」


なんかとっても仲良くなったみたいで微笑ましいわ。

リラちゃんはさぞや怖かったのではないかしら。

おやつ食べてユメちゃんと仲良くして、落ち着いたかしらね?


食べ終わり、少しするとマーレイとリラは帰っていった。

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