王族
今日は、クレームブリュレとグラタンの日だ。
もちろんパープル侯爵邸に行って教えるのだ。
こちらに来てもらっても厨房に入れるわけにはいかないしね。
洗ってある色や模様つきココットを60個と、出来上がっているクレームブリュレ12個と、空のグラタン皿12個を馬車に積んでもらった。
人形のユメと馬車に乗ろうとした時に「今回の参加者だそうです」とマーレイに渡された紙には、割りととんでもないことが書いてあった。
王族勢揃い?
いつもの3家以外は王族関連の人らしい。
◇ーーーーー◇
今回初参加のメンバー
王妃 ハイドランジア殿下
第一王子妃 アネモネ殿下
王子 プラタナス殿下 第一王子の第一王子
王女 スノードロップ殿下 第二王女
王女 サンダーソニア殿下 第三王女
ブルー公爵夫人ネモフィラ様 (第一王女)
既存メンバー
ローズマリー、
ラベンダー、
パールホワイト伯爵令嬢ローズ様
スカイブルー伯爵令嬢ピアニー様
◇ーーーーー◇
あれ?良く見ると、王子が混ざってるよ?
お菓子作るの? 試食要員?
これどうしろって言うんだろう?
うーん。
悩んでる間に馬車は到着しちゃいました。
「ようこそいらっしゃいませ、ユリ様!」
いつものメイドの揃った挨拶だ。
何度聞いても少しビクッとする。
「お待ちしておりました、ユリ先生!」
おおー、初参加の王族メンバーなのに結構揃ってる。
衣装派手だなぁ。フリフリキラキラだぁ。
あのまま参加するのかなぁ?
一人小さい5~6歳くらいに見える、ドレスを着ていない子供がプラタナス王子かしらね。
それぞれの違う色の派手なドレスを見て、綺麗や素敵という感想より、暑そう重そうって思ってしまう自分が少しダメかもって思う。
「ユリ先生、紹介させていただきます。
こちら、王妃ハイドランジア殿下
第一王子妃アネモネ殿下
プラタナス殿下
スノードロップ殿下
サンダーソニア殿下
ブルー公爵夫人ネモフィラ様 です」
「ユリ・ハナノです」
「ご紹介いただきました。わたくしこの国の王妃という立場にあります、ハイドランジアです。今回は生徒ですので、ぜひハイドランジアとお呼びください」
「アネモネでございます。わたくしのこともぜひアネモネとお呼びください」
「プラタナスです!おうじさまってよんでください!」
「スノードロップです。スノードロップと呼んでください」
「サンダーソニアです。サンダーソニアと呼んでください」
「ネモフィラ・ブルーでございます。どうぞネモフィラとお呼びください」
「えーと、不敬にならないですか?」
「ご本人がおっしゃられているので大丈夫かと」
ローズマリーが答えてくれた。
「ローズマリーさん、前回はすみませんでした」
「ごめんねにゃ」
「いえいえ、みっともない姿を見せてしまいましてお恥ずかしい限りです」
「何かございましたの?」
今発言したのは、ネモフィラさんかな?
後ろからだったし、王女3人は声が良く似ている。
「ちょっと驚かせてしまったのです」
納得したようでそれ以上追求されなかったが、事情を知っている ラベンダー、ローズ、ピアニーは微妙な顔をしていた。
この3人は仲良しらしい。
今日は本来、別のメンバーが4人とローズマリーと王族メンバーの予定だったが、4人は、不敬になると困る。と考え、辞退してしまったらしい。
ラベンダーが強制参加だったので、仲良しのローズとピアニーが急遽呼ばれ、参加枠が残っているのでおまけに王子がついてきたということらしい。
総入れ換えは止めてもらいたい。
私がついていけないから。
何気なく伝えておいた。
ローズマリーに促されて移動する。
さすがに王族メンバーは着替えるらしく一旦休憩になり、その時にラベンダーから今回の参加者の話を教えてもらった。
ローズマリーは案内をかねて王族についていった。
そんなわけで、今日は警護の人なんだろうな、という感じの人がいっぱいいる。
「ユメちゃん、どうする? キッチンに来る? 庭で遊んでる?」
「見てるにゃ。ソウに頼まれたにゃ」
「え? 警護担当なの!? なら、よろしくお願いします」
「任せるにゃ!」
力強く約束したユメは、前回までクーファンを置いていた場所に座っているらしい。
ちょこんと座ったユメを見たメイドが、どこからか高い椅子を持ってきた。ユメの身長より高い、座面がユリの目の高さくらいある。
前面が梯子状になっていて簡単に上れるようだ。喜んで高い椅子に上りユメは座った。
目線が女性たちより高くなり、キッチンを見渡せる。
プールの監視員か、テニスコートの審判みたいである。
王族メンバーが飾りの少ないスッキリした服に着替えて戻ってきた。
しっかり名前入りの割烹着を着ている。
ユメの椅子をめざとく見つけたプラタナスが、自分も高い椅子に座りたいと駄々をこねたのはいうまでもない。
どうやらユメのために用意していた椅子らしく、1つしかないようだ。
そもそも2つ有っても危険なので座らせることはないとのことだが、あまりに粘るので護衛の一人が肩車して、誰よりも高い!となり、やっと落ち着いた。
護衛の人は大変だ。
開始前に精神的に疲れた。




