表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/687

果汁

18:00になり、客が帰り、マーレイとリラが来た。


「お手伝いに参りました」

「お手伝いに来ました!」


「ありがとう!いつも突然でごめんなさいね」

「何をいたしますか?」

「まずはグレープフルーツを全部洗ってください」

「はい」


リラとグレープフルーツを洗っているマーレイに声をかけた。


「グレープフルーツをしぼったことはありますか?」

「ないと思います」

「では、この向きに半分に切って、こういう感じにしぼってください。この皮を使うので、壊さないように丁寧にお願いします。まあ、何個か失敗したって沢山あるので気負わないでください」

「はい」


マーレイにグレープフルーツのしぼり器を渡した。


「果汁はこのボールにあけてください」

「はい」


「リラちゃん、グレープフルーツを洗い終わったら、トレーにこの辺の食器を並べてくれる?」

「はい!・・・???」


リラは不思議そうな顔をして食器を並べていた。


ゼラチンを水でふやかし、オレンジジュースとレモン果汁とグラニュー糖とパンプルムーゼを用意した。

とりあえず20個分の配合だ。


パンプルムーゼはグレープフルーツのリキュールで、たしかフランス語のグレープフルーツって意味だったと思う。


しぼった皮から丁寧に中身を取りだし、リラに並べてもらった食器の上においた。


「リラちゃん、こうやって乗せてくれる?」

「はい!!」


リラはやっと意味がわかってスッキリしたのか元気良く返事をした。


中身を取りだすのが一番めんどくさい。

力任せに引っ張ると穴が開くのだ。


しぼり終わった果汁でとりあえず20個分仕込むことにした。

グレープフルーツ果汁は加熱し、砂糖を溶かし、ふやかしたゼラチンを溶かし、裏漉してからあら熱を取り、オレンジジュースとレモン果汁を加えた。

パンプルムーゼを加え、少量を金物のトレーに流し、先に冷やし固める。これは保険だ。


固まるギリギリくらいまで氷水に当てて熱を取り、急いで並べた皮の中に注いでいく。

レードルで注いでいたら、らちがあかないので、ヤカンで注ぐ。


丁寧に扱ってもどうしても中身が抜けるのが出てくる。それをひっくり返し、中身を空けたら先に固めておいたゼリーを張り付け一度冷蔵し、穴を塞ぐ。


寒天と違ってゼラチンは継ぎ足ししてもくっついて固まるのでできるのだ。


8~9分目まで注いだものを冷蔵庫に入れ、先程より少し冷えていないゼリー液を冷蔵庫の中で足し、ギリギリいっぱいまで注ぐ。これは表面を綺麗に見せるためだ。


これを固まるまで冷やして出来上がり。

提供するときは半分(1/4カット)に切って出すと驚かれておもしろい。


「今のをあと4回する予定だけど、冷蔵庫に入らなそうね・・・」


ユリは冷蔵庫を見て考えた。

グレープフルーツ20個分は、業務用冷蔵庫の4段を占領している。

固まってしまえば、番重(ばんじゅう)にしまえるのでもう少しどうにかなりそうではあるが、やはり100個分(200カット)を一度に作るのは無理そうである。


「あと2回作りましょう。マーレイさん、リラちゃん、時間は大丈夫?」

「はい。問題ありません」

「ご飯食べてから来ました!」

「ありがとう!お願いしますね!」

「はい」「はい!」



3回目が終わる頃、ソウとユメが顔を出した。


「ユリー、今日は何を作ってるの?」

「何してるにゃ?」


「あら、ソウとユメちゃん! 食べてみる?」

「果物にゃ?」

「ちょっと待ってね」


ユリは最初に作って既に番重にしまっていた物を2つ持ってきて、それぞれカットした。

4枚の皿にのせスプーンを添えた。


「どうぞ、グレープフルーツゼリーよ。マーレイさんとリラちゃんもたべてみてね」


「不思議な果物にゃ」

「すごーい!おもしろーい!」

「あ、これ、昔も作ったね。大丈夫? 穴空かなかった?」

「穴を埋める方法を編み出したから大丈夫よ!うふふ」


ソウは、昔ユリが作ったのを思い出した。

そのときは、皮に穴が開いてゼリー液が抜けてしまい、ゼラチンで固まり下の食器と一体となったグレープフルーツの皮が冷蔵庫から出てきて、二人で大笑いしたのだ。


「果物のグレープフルーツより美味しかったです!」

「面白いにゃー。美味しいにゃー」

「凄いなー、抜けないようになったんだ」

「とても美味しかったです。ありがとうございます」


好評のようで良かった。

ユリはひと安心した。


「さて、60玉分作ったからもう良いかしら。240人前だし・・・いや、もう一回作りましょう。大体お土産は300くらい出るんだったわ」


マーレイはかなり丁寧にしぼったようで、皮を割ったり破いたものはなかった。

ユリが自分でしぼるよりきれいだった。

あと5~6個で全部であるが、仕込み的にも4玉は半端になる。


「マーレイさん、4個は切らないでそのままにしておいてください」

「かしこまりました」

「しぼり終わったら、今日は終わりで良いですよ」

「はい」


リラは固まったものを番重に移したり、洗い物を片付けたりしてくれていた。

最後の分の皮を器に乗せるまで用意してくれた。


「ありがとう!助かったわ!よかったらグレープフルーツを2つ持って帰ってね。ゼリーが良ければゼリーも1つ持って帰っても良いわよ」

「ありがとうございます!!ゼリーもありがとうございます!」

「あ、リラ・・・。ユリ・ハナノ様、どうもありがとうございます」


マーレイはリラを止めようと思ったが、そもそもユリが言い出したことなので、お礼を言うことに変更したのだった。


「次は、オレンジを持って来る日に来られるかしら?」

「はい」「はい!」

「お願いしますね」

「かしこまりました」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ