家屋
東側にある扉から家の中に入ると、テーブルが4つとカウンターのある素敵な店だった。
木の香りがするような、切り出した木のままに見えるテーブルに、全て違う椅子。手作りの良さが温かい雰囲気を醸し出している。
4人がけが2つ、2人がけが2つ、カウンターに3席 計15席の店内。
「素敵!」
両手を合わせて握ったまま感動していた。
「希望通りになってる?」
笑顔のソウに呼び掛けられ振り向いた。
「希望以上に!!本当にここを使って良いの?」
「ユリが使わなかったら作った意味がないよ」
ソウが私のために用意してくれただけでも嬉しいのに、昔何気なく言った言葉を覚えていて希望通りの店を作ってくれたソウには感謝してもしきれない。
「ソウ、ありがとう!」
「カウンターの中や奥の調理場も見て、調理場には冷蔵庫と冷凍庫とコンロがあるから」
「電気が有るの?」
「ソーラーと魔術」
「え?」
魔術???
知らない情報だった。
「ガスはプロパン、下水は浄化槽、上水道は井戸水だけど、モーターで汲み上げるから」
「凄い!ハイテク!」
「あはは、ハイテクか。他から見えるところはともかく、ユリしか見ないところはマイナス50位にはしてあるんだ。ユリが苦労しないようにと思ってさ」
「至れり尽くせりだわ!」
「それはよかった」
どれだけ時代が逆行しても頑張らなければと考えていた。ソウの気遣いに心の底から感謝した。
「あと、これここの通貨。白金貨以外が30枚ずつと、白金貨が1枚ずつ入ってる。事前説明の用紙に書いてあったと思うけど、買い物の金銭感覚はほぼ日本円と一緒。ただし、紙幣はない。一般人は大金貨と白金貨は持ち歩かない。単位はスター、記号は☆。輝くお金は星からの恵みという意味なんだって」
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貨幣について
単位は☆
1☆小銅貨 約15mm
10☆大銅貨 約20mm
100☆小銀貨 約25mm
1000☆大銀貨 約30mm
10000☆小金貨 約35mm
100000☆大金貨 約40mm
1000000☆小白金貨 約50mm
10000000☆大白金貨 約60mm
現物は現地で渡します。
円はそのままお持ちください。
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「それって、この紙ね。30枚ずつだと、えーと、
14,333,330☆って多くない!?」
「多くない多くない。仕入れとか当面の生活費とか色々使うでしょ」
色々って、ほぼ揃っている気がするし、家の代金はどうなっているのかしら?
特に足りないものもなさそうに思えるけど?
なんとなく、聞いても無駄な気がしてきた。
「そうね。・・・文字はどうなってるの?」
「読んでみればわかると思うけど、相違なく読めるはずだよ」
「そうなのね。本当、ソウのお陰で色々助かっちゃうわ」
足りないものって何かあるかしら?
今考えても特に思いつかなかった。
「まだ疲れていないなら市場に行こうか」
「え、どうやって?どこに?」
「一応、冷蔵庫と冷凍庫に色々入っているんだけどね。市場見てみたいでしょ?」
「うん!見たい!」
「家の中は後にして先に市場にいこう」