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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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再会

2月1日(Wの日(みずのひ))

リラは、早朝から待っていた。昨晩から休憩室に泊まり込み、いつ帰ってきても分かるようにと、お店に居るのだ。


お店の設備は、何を使っても良いと言われているので、休憩室を使うのは問題はないが、マーレイとイリスには、思いっきり止められていた。


厨房やお店の掃除は有志を募ったが、全員が参加して、シィスルたちも手伝って昨日済ませ、今日は日の出と共に起き出して、外の掃き掃除も済ませ、今はお店でノートを書いたり、借りた本を読んだりしている。


9時前には全従業員が集まり、予定どおり、明日からの販売分の仕込みを始めた。


「ユリ様来ないですねー」

「何時頃いらっしゃいますかね?」


9時半頃、階段を下りてくる音が聞こえた。でも軽めの足音で、キボウだろうとリラは思った。


「どこいったのー?」


ユリの声が聞こえ、全員の手が止まり、階段の方に注目した。


「だーれー?」


なんと、知らない女児が階段から下りてきたのだ。黒髪をおかっぱに切り揃えている。


「え、あなたは、誰ですか?」

「まりちゃんは、まりちゃんです!」

「あ、私はリラです。仲良くしてください」

「いーよー!」


ユリが階段を下りてきた。


なんと、髪が短い!!

肩くらいで切り揃えられている。


「あ、リラちゃん、お久しぶり」

「あ、え? あれ? ユリ様、髪以外にも、何か違うような」

「うふふ、そうね」


老けて見えたのだが、リラは声に出さなかった。


「こちらの、まりちゃんは、どちらのお子さんですか?」

「この子は、茉莉花(まりか)。意味は、ジャスミンよ。私とソウの子供よ」


「は? ええええええええ!!!!!」


リラ以外も、手に持っていたものを落とすレベルに驚いて固まっていた。


「ユリ様、いったいどうなっているんですか!?」

「今回はね、あちらで5年過ごしたのよ。私の実齢が追い付いたのね。うふふ」


「少しお疲れに見えますが」

「5年分老けたのでしょう」


「かーたま、おかしー!」

「はいはい」


「ユリ様がお母様になってる。ユリ様が、」


ぶつぶつ呟くリラよりも、母であるイリスの方が復活が早かった。


「ユリ様、ご出産と、マリカ様のお誕生、おめでとうございます」

「イリスさん、どうもありがとう」


イリスに続き、ユリは皆から祝福を受けた。


「ユリ様、マリカ様は、おいくつなんですか?」

「えーと、もうすぐ4歳、あ、こちらの年齢で言うと、5歳かしらね?」

「え、うちの娘と同じ年」


メリッサが驚いていた。


「ユリー、おかしー」

「あ、キボウ君、ちょっとだけマリカ見ててくれる?」

「わかったー。マリちゃん、マリちゃん」

「はーい」


マリカはキボウと一緒に椅子に座っておとなしくなった。ユリが慌てて何かを取り出し、皿に入れ、2人の前に並べた。


何か食品を出したユリを見て、復活したリラが食いつく。


「ユリ様、そちらはなんですか?」

「子供のおやつよ。柔らか目に茹でたマカロニに、きな粉がまぶしてあるわ」


少し悩んだユリが、リラに1粒手渡した。

パクッと食べ、にんまりする。


「なんか、素朴だけと美味しいですね」

「幼児用のおやつだからね」


「えーと、ホシミ様も戻られていらっしゃるんですよね?」

「そろそろ来ると思うわ」


するとソウが現れ、鞄から荷物を取り出した。


「お、リラ久しぶり」

「あ、えーと、ホシミ様、何だか貫禄が?」

「あはは。少し太ったかな」


ソウはユリより、遥かに老けて見える。


「ユリ、受け取ってきたよ」

「ソウ、ありがとう」


「あ!これ、みんなで作った陶器!」

「みんな少し集まってくれ。各自、自分のを引き取って貰えるか?」

「ベルフルールの分は、私が分かります」


リラが、ベルフルールの分を避けてくれた。


「この、花柄の皿とカップは、ユメか?」

「そうです。ユメちゃんが描いたお皿とカップです」


ユリも見に来た。


✿❀Mallika❀✿


「あら、これなんて書いてあるの? まりっか?」


ユリは、ユメが描いたという皿にある文字を読んだ。


「どれ?」


ソウが、ユリの指した文字を見た。


「これは!」

「ソウ、分かるの?」

「読みは、マリカ。サンスクリット語の、ジャスミンだ」

「えー! ユメちゃん凄い!」


「書いていたとき、ユメちゃんは思い付いたまま書いて、ユメちゃん本人も、何て書いたか分からないって、言ってました」


おやつを食べ終わったらしいキボウとマリカがこちらへ来た。


「キボーの!」

「まりちゃんの!」


そう言って、マリカはユメが作ったカップをキボウから受け取った。


「マリちゃん、割ってしまうと怖いから、もう少し大きくなってから使おうね?」

「とーたま、まりちゃんの!」

「マリカ、父様(とうさま)の言うことを聞きなさい」

「はーい」


「反対になった」


リラが呟いた。ユリが呼び捨てし、ソウがちゃん付けで呼んでいることに、違和感を感じたのだ。


「これ、私が作ったお皿だから、マリカに渡してもらえる?」


ユリは、葉っぱ型の小皿を1つソウに渡した。ソウは受け取り、マリカに差し出した。


「マリちゃん、母様(かあさま)が作ったお皿だよ」

「わーい。まりちゃんのおさらー」


1つ渡されて気が済んだらしく、ソウに抱っこされマリカはおとなしくしている。


「キボウ君、世界樹様に渡しに行くなら、何かお菓子持っていく?」

「もってくー」

「なら、出来るまで、待っていてね」

「わかったー」


ユリが三角巾を頭に被り、手を洗い、マリカをソウが引き取り、厨房で仕事を始めた。


「あの、シィスルたちを呼んでも良いですか?」

「構わないけど、あちらも忙しいんじゃないの?」

「お皿の引き取りに来たいと思うんです」

「あ、そうね。早く見たいわよね」


ユリは、物の置き場が思い出せなかったりする。


「なんか久しぶりすぎて、勝手が。リラちゃん、よろしくね」

「あ、はい」


「そうだ、イポミアさん、お店に新しく人を雇って、あなたは厨房に入る?」

「良いんですか!?」

「人を雇えてからにはなるけど、その方向で行くわね」

「ありがとうございます!」


しばらくして、シィスル、リナーリ、セリ、カンナ、グラン、レギュム、クララが訪ねてきた。


やはりユリを見て、あれ?という顔をしたあと、髪が短いのに気づき、驚いていた。


「えー!」

「シィス、声」


リラが、シィスルに内緒話をしていた。マリカのことを伝えたのだろう。


ベルフルール組は、陶器を引き取ると、すぐに帰っていった。


5年ぶりのユリは、割りとポンコツで、かなりリラがフォローして、お昼ごはんの時間になった。


「ユリ様、何があったんですか?」

「えーとね、12月31日の夜、ユメちゃんが眠ってしまった後に、光になって消えてしまったのね。それでずっと私が泣いていたからキボウ君が特別に世界樹の森まで連れていってくれてね。そこで、世界樹様に謁見したら、ようは、半年以内に子供が出来れば、ユメちゃんの魂を救うことが出来るって言われたのよ」


世界樹様は言ったのだ。「そなたたちと会うことは叶わぬが、苦労をした分、本人の希望やこれまでの望みが叶うであろう。そなたたち、子を作られよ。今ならユメの魂はここにある。ただし、ユメに会うことと、記憶を戻すことは出来ぬ」


「昔ユメちゃんがね、今度生まれたら、(ユリ)の子供になりたいって、言っていたのよ」

「マリちゃんは、ユメちゃんの、生まれ変わりなんですね」

「だと思うわ。だからこそ、お皿の名前は驚いたわ。マリカの名前は、生まれてから決めたのよ」


午後になり、やっと勘を取り戻してきたユリが、本調子になってきた。


「世界樹の森で暮らしていたんですか?」

「うーんとね、場所はそうなんだけど、生活は、ここの2階ね。出られなかったけど、困ることはなかったわ。マリカの服も作れたからね」

「上にいたんですか!?」

「そういう訳ではないらしいわ。空間がねじれていて、2階の階段を下りようとすると、世界樹の森の中に出るのよ。で、森の中の門のようなものを潜ると、ここの2階に繋がっている感じ。外から見たら、塔なんだけどね。今はもう繋がっていないわ」


実際にここの2階を使っていたわけではなく、ユリとソウが想定する生活空間が、ここの2階だったため、設備がそれになぞらえたのだ。その証拠に、使用したと思っていたものは、実際の2階からは減っていない。


メイプルたちが暮らしていたときは、自分達の寝室は再現されたが、その他の生活空間は、明確な想像が出来なかったため、現状より上である、リスが残したものをそのまま使うことになった。


「ユリ様、結婚式でお会いしたホシミ様のご両親に、マリカ様をお見せしなくて良いのですか?」

「この後行こうと思ってるわ」

「お店の準備ならしておきますので、どうぞ親孝行なさってください」

「んー、わかったわ。ありがとう」


ユリはソウに声をかけ、マリカをつれ、親族に会いに行くのだった。

次回、クロネコのユメと共に最終回です。

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