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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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永別

12月31日(Eの日(だいちのひ))


「今日は何日にゃ?」


少し遅く起きてきたユメが、ユリに日付を聞いてきた。


「今日は12月31日よ」

「わかったにゃ」


ユメはそのまま引き返し、部屋に戻ってしまった。


「なんだったんだ?」

「なにか予定している事があるのかしら?」


「キボウ」

「なーにー?」

「キボウ、ユメについていてやってくれないか?」

「わかったー」


キボウが迎えに行くと、ユメは戻ってきた。


「ユリ、これ受け取ってにゃ」

「え?」

「ソウ、これ受け取ってにゃ」

「なに?」

「私の日記に書いてあるのにゃ。12月31日に、ユリとソウに渡す。ってにゃ」


紙袋を渡された。キボウも紙袋を持っている。ユリとソウは、急いで中身を確認した。

なんと、今まで渡したもの全てが、紙袋の中に入っていたのだ。


「その日記に書いてあるままを伝えるにゃ。

私はこの時代に生きるべきではないが、あまりにも心地よい。しばし、ユリとソウに甘えよう。そして去り際には、痕跡の1つも残すことなく、潔く旅立とう。にゃ」


「え、ユメちゃん、どこか行っちゃうの?」

「どこにも行かないにゃ。本来あるべきところに帰るのにゃ」

「私はずっとユメちゃんと一緒に居たいよ」

「ユメ、俺はユメは家族だと思っているよ」

「今日1日頼むにゃ」


ユリが泣きそうになり尋ねたが、ユメは達観した笑顔で微笑むだけだった。

世界樹様から告げられた期限は確かに今日迄だが、ユメが自発的に居なくなる想定はしていなかった。ユリはむしろ、お店を休みにして、迎えに来るであろう何かを追って、世界樹の森まで追いかける気でいたのだ。


「ユメー、ごはん」

「キボウ、お腹空いたのにゃ?」

「あ、ご飯にするわ。ユメちゃんも食べるわよね?」

「ありがとにゃ」


昨日みんなで作ったパンと、コーンスープを並べた。


「美味しく出来て、良かったのにゃ」

「ユメちゃんとても上手だったわよ」

「ユメの作った黒糖クリームパン、旨いな」


「だれー?」

「キボウ君、それはリラちゃんが作ったコーンとほうれん草のパンね」

「おいしー」


緑色が入っているところが、ポイントが高いらしい。


ソウは、ピザっぽいパンをユメにすすめていた。


「ソウ、いろんな味がして美味しいにゃ」

「そうか。そりゃ良かった」


「ユリが作っていたパンも食べたいにゃ」

「どうぞ。クルミとメイプルシロップを巻き込んであるわ」


「どーぞー。キボーのー」


キボウが作ったパンを、ユメにすすめていた。


「それは、イチゴジャムを巻き込んで、イチゴ味のアイシングがかかっているわ」


「みんな美味しいにゃ」

「作って大正解だったわね」

「リラに感謝なのにゃ」


パンを食べた後は、ユメの希望で、トランプやボートゲームをすることになった。


カードゲーム等にめっぽう弱いユリは大敗したが、ユメがほどほどに勝ち、楽しそうだったので、ユリは嬉しかった。


お昼ごはんには、ユメが喜んでいたカルボナーラを作り、少しだけ皆で散歩に行き、夕飯の後は、再びゲームに興じた。


21時を過ぎた頃だった。


「少し疲れたのにゃ」

「ユメちゃん?」


突然ユメが立ち上がった。


「ユリ、ソウ、キボウ、いつも一緒にいてくれてありがとにゃ。おかあさま、私を生んでくれて ありがとう」


そう言ったユメは、淡く発光して黒猫になり、眠ってしまった。


迎えを警戒していたユリだったが、ユメは黒猫で眠ったままだった。


暫くすると、黒猫の体からキラキラと光が立ち上がり、その光がユメの姿になった後、光のユメがニコッと微笑み、すうっと空の彼方に消えていった。そこに黒猫の姿はもう無かった。


「ユメちゃーん!!!」


ユリが転移をしようとして、ソウに手をつかまれ止められた。


「ユリ、一緒には行けないんだ!」

「ユリー?」


ユリが声をあげて泣き、ソウが抱き締めて、更に泣いた。キボウも心配そうにユリを見ていた。


ユリが暫く泣いていると、頭の中に響くような声が聞こえた。


『ユリ、ソウ、連れて行ってあげるよ』


キボウからの特殊な以心伝心が届き、ユリとソウはどこかに転移した。

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