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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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餅搗

去年の年末と同じく、餅つきをする。

今回は参加希望者が多いので、人手は充分なのだ。


「おはようございまーす!」

「おはよう。あなた、もう手伝うの?」

「勿論です!」


リラが朝7時に突撃してきた。


「私はこの後、朝ご飯を食べてから本格的に始動する予定よ」

「はい。大根を()り下ろしたり、きな粉に砂糖を混ぜたり、オゾーニの具材を切ったりしておきます」

御雑煮(おぞうに)は、食べられるの?」

「スープとしていただく予定です!」

「磨った黒胡麻にもお砂糖を混ぜておいてちょうだい」

「はーい」


ユリは、塩漬け桜花の塩抜きをしていたところだった。尚、(あん)は昨日のうちに炊いておいた。あとは、乾燥ヨモギをふやかそうとしていたところに、リラが来たのだ。


皆の集合は9時の約束なので「8時頃来てくれるとありがたいわ」と話した覚えがある。やはりリラの家の時計は狂っているのではないだろうか?とユリは本気で心配していた。


乾燥ヨモギをボールに入れ、湯を注ぎ、しばらく置いてしっかりふやかす。ユリが作業していると、リラが覗きに来た。


「ユリ様、それはなんですか?」

「これは、乾燥ヨモギよ。草餅の材料の草よ」

「あ、これって、専用の草があるんですね」

「何だと思っていたの?」

「ガーランドクリサンセマムかなって」

「え?」


ユリが分からないでいると、ちょうど階段を下りてきたソウが答えてくれた。


「ユリ、春菊だよ」

「あ、春菊。んー、見た目は似た葉っぱだから、近いと言えば近いかもしれないけど、別種ね」

「そっかあ。花梨花(かりんか)様が、天ぷらを作ってくださったときの葉っぱに似てるなぁ。て思っていました」

「まあ、代用で、作れないこともないらしいけど、入手の困難さは、変わらなくない?」

「あはは、確かに!」


ソウは、ユリの戻りが遅いので、呼びに来たらしい。


ユリは、ふやかしたヨモギを裏漉し器で濾し、集めて固く絞った。割りと粉状だったので、このまま使う予定だ。乾燥状態がカットされていないものなら、絞った後に包丁で細かく刻んでから使用する。かなり細かくしたつもりでも、ヨモギは繊維が残る。


「それじゃあ、私は朝ご飯を食べてくるから、適当に休みながら、あまり頑張りすぎないようにね」

「はーい」


ユリはソウと一緒にリビングに来た。すでに朝ご飯が用意されており、食べるだけになっている。


「お待たせしました」

「リラ、もう来てるのにゃ?」

「そうなのよ。私は8時って伝えたはずなんだけどね」

「リラの家の時計は1時間進んでるのにゃ?」

「うふふふふ、私も同じこと思ったわ」


ユリとユメが笑っていた。


「リラは、実家の方から来てるんじゃないのか?」

「そう言えば、昨日本格的に引っ越しをしたはずだから、そうね」


リラは、マリーゴールドが居るうちは、ベルフルールの上に住んでいたが、マリーゴールドが嫁いで退職したため、完全に兄夫婦(グラン&シィスル)に譲るため、実家に戻ると話していたのだ。


朝ご飯を食べ、厨房に戻ると、リラは隅で咳き込んでいた。


「コンコン、ケホケホ」

「リラちゃん、大丈夫? 風邪引いたの?」

「あ、すみません。昨日の晩から実家なのですが、布団を持って行かなかったので、家に有る布団を使ったら、埃っぽかったみたいで」


ユリは、喉飴(のどあめ)を探そうと思ったが、最近舐めた記憶がないので、有っても使用期限切れだろうと、諦めた。


「大根はもう()った?」

「はい」


ユリは大根おろしのたまっている汁だけを、茶漉しを使って少し取り分け、蜂蜜と混ぜた。


「民間療法だけど、喉に良いらしいから飲んでみて。甘すぎるなら水で薄めると良いわ」

「はい」


リラは素直にそれをそのまま飲みほした。


「あれ、何だか、喉が楽になった気がする」

「本当は、切った大根を蜂蜜に漬けて作るんだけど、すぐ欲しいときは、磨り下ろしと蜂蜜を混ぜるのよ」

「切った大根を蜂蜜に漬けて作った場合、残る大根はどうするんですか?」

「酢と砂糖を加えてそのまま漬ければ、甘酢漬けになるわよ。他の漬け物にも使えるからね」

「凄い! 捨てるところなし!」

「ふふ、そうね」


ユリは、リラを少し休ませ、御雑煮を仕上げ、お湯を沸かし始めた。


8時頃、シィスルとリナーリとイポミアがやって来た。

ほとんど終わっている準備に、リラを見て呆れていた。


「ユリ、何か手伝うにゃ」

「キボーも、キボーも!」

「外に、折り畳みテーブルをいくつか設置してください。厨房に入れない人がたくさん来るので、基本、作業は外か店内になります」


「移動暖炉持ってくるにゃ!」

「手伝います!」


今日はお天気が良く、外はかなり明るく気温も暖かだ。


1回目分の餅米を蒸し始めると、8時半よりも前に、王都組のメンバーがやって来た。

臼と杵の持ち主のヒサシ・ハナダ(焼き鳥・串焼き)と、医師のカイト・サトウだ。

すぐ後から、パープル領のメンバーの、イチロウ・モリ(和食・川魚料理)、ジン・ハヤシ(焼き肉・弁当)、マコト・コバヤシ(ラーメン・中華)の森林コンビと、リツ・イトウとカナデ・サエキもやって来た。


男性参加者がソウを含め8人も居るので、今回は合いの手に移ってくれると言う話もあったが、ユリとリラの他、シィスルが挑戦してみたいと名乗りをあげているので、何とかなるようだ。今回は、20升の予定なのだ。餅つきにして10回分だ。気合いを入れて進行しないと、夕方までに終わらない。


味見だけ参加したい人には、11:30頃来るように伝えてある。


餅米が蒸し上がり、1回目の餅つきが始まった。ハナダとモリが杵を持ち、ユリが合いの手をする。リラは2度目だが、シィスル、リナーリ、イポミアは初めて見た為、「これ、手伝えるんだろうか?」と、悩むのだった。


◇ーーーーー◇ 

蒸上り

09:00 のし餅×2(1枚約2kg)

09:40 のし餅×2

10:20 のし餅×2

11:00 のし餅×2

11:40 12:15頃から試食、鏡餅~13:00迄

13:10 鏡餅1升、のし餅×1

13:50 桜花×6(5本約700g 残り試食)

14:30 桜花×6

15:10 ヨモギ×6(5本約700g 残り試食)

15:50 ヨモギ×6 出来上がり16:20予定

◇ーーーーー◇ 


ユリが予定表を貼り出した。9:40蒸し上がりの餅米は、リラが合いの手をして、無事に、のし餅になった。

10:20蒸し上がりの餅米は、シィスルが名乗り出て、おっかなびっくりながらも、合いの手をやりとげた。終わった後、しばらく折り畳みテーブルに突っ伏して伸びていた。

11:00蒸し上がりの餅米は、リナーリが頑張ると名乗り出たが、途中でイポミアに交代し、イポミアは最後までやりきった。

11:40蒸し上がりの餅米は、ユリが再び合いの手をし、順調に出来上がり、試食用に半分程を色々な味付けにちぎって分けた。


御雑煮、あんこ、きな粉、すり胡麻、大根おろし、焼き海苔を用意したため、皆好きなものを選んで食べていた。


ユリの予定では、1升分の餅米(餅にして2kg越え)で、足りるつもりだったが、試食のみの従業員が、ほぼ全員来て、慌てて残りの餅も小さめにちぎり、餅米2升分(餅にして4kg越え)を皆で食べきってしまった。


「ハナノさん、どうする?」

「うちの分の、のし餅1枚分で清算で」

「了解した。なら、次のは、全部鏡餅だな」


リラが合いの手をし、餅が出来上がり、全て鏡餅として整形する。

アルストロメリアは、1月全休業なので、鏡餅は作らなかった。

ハナダが去年と同じく1升サイズの鏡餅を作り、残りを希望者で分けた。

シィスルはリラに教わりながら、ベルフルールに飾る小さな鏡餅を作っていた。


再びシィスルが合いの手をし、出来た餅に塩抜きした桜を混ぜ、重さを量りながら分けた。5つをなまこ餅にし、残りを食べたい人に分けた。20個程に切り分け、海苔を巻いたり、そのまま食べたりした。

皆「美味しい」と喜んでいた。


次は、イポミアが最初から合いの手をし、最後までやりきっていた。その餅も桜花餅にし、同じように分けた。


次にユリが合いの手をしようとしたら、リナーリが再び挑戦したいと申し出た。無理そうならリラが引き継ぐと言うので任せると、頑張って最後までやりきっていた。これは最初からヨモギを混ぜてつく、よもぎの草餅だ。


量って分けた5つをなまこ餅にし、残りをきな粉にまぶして配った。初見の人たちは、抹茶味だと思って食べたら違ったと驚いていた。


最後は、リラが合いの手をし、やはり同じように餅を分け、試食も配った。従業員の皆は、草餅の正体が分からないまま美味しいと食べていた。


餅をついたメンバーは、のし餅を1枚、桜花餅と草餅を1つずつ受け取ることになる。

10個ずつ出来た桜花餅と草餅は、ユリが3つずつ受け取り、のし餅もソウの分として1枚受け取った。


手伝ったリラ、シィスル、リナーリ、イポミアに何が欲しいか尋ねると、今まで見たことがない、料理になったものが食べたいと言い、餅は辞退された。


ユリが話している間に、ソウとキボウが、餅ごと送り届けたらしく、気が付くと誰も残っていなかった。


「あら、残っているのは、私たちだけなのね」

「そうみたいですね」

「あなたたちの都合が良いのなら、今から何か作りましょうか?」

「はい!私は大丈夫です!」

「私たちも大丈夫です!」


リラとイポミア&リナーリ姉妹は大丈夫らしい。


「私は、グランさんに聞かないと」


シィスルが悩んでいると、リラが兄に以心伝心を送ったらしい。


「シィスル、勉強なら頑張ってくるように、だってさ。あはは」


すぐにシィスルも確認したらしく、問題無いようだ。


「さて、何にしましょうか。リラちゃんも知らないものっていうのは、難しいわね」


ユリは、たこ焼きかピザでも作ろうかと考えていたが、8人前作るのは大変そうだなと悩んでいた。


「ユリ様、皿うどんが食べたいです!」

「あなた、それで良いの? 食べたこと有るわよね?」

「はい」


リラの発言に、シィスルやイポミアが「食べたい!」と同意していた。


「ちょっと、材料を揃えてくるわ」


ユリは、転移して買い物に来た。無人スーパーで手早く必要なものを購入し、ソウに作ってもらった認証キーで支払った。タッチ決済のような仕組みだ。


ユリは急いで戻り、早速調理を開始した。


リラは一度作っているので勝手をわかっており、シィスルやリナーリに指示を出し、野菜を切っていた。


「イポミアさん、調理する?」

「はい! 私も調理したいです!」

「では、私が茹でた素麺(そうめん)を、このくらいの束にまとめてください」

「はい!」


皆で皿うどんを作り、シィスル、リナーリ、イポミアが、物凄く喜んで食べたのだった。そしてなぜか、ユリはフルーツ飴を作ることが決定していて、今日も作るのだった。

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