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ソウ目線

久しぶりにホシミ家に戻ると知らない子供がいた。


「おまえ誰だ?」

「もしかして、貴方がソウ兄上ですか?カエン姉上の弟のタキビです」

「なぜここにいる?」

「ツキミの家から逃げてきました」

「そうか。お前は『火』なんだな」

「え?」



俺は生まれた時「女でなければ継げぬのに、男児など要らぬ」と父親から言われたらしい。

せめて名前をつけるように言われて「民草に紛れて生きると良い、名前はソウだ。民草の(くさ)と書いてソウ、ははははは」って感じて名付けられたらしく、ずっと一族から嘲笑されてきた。

本家一族はみな「火」にまつわる名前なのに。


過去に、カレンとエンジュいう人が居て、とても力が強かったそうだ。

真名は『花蓮』と『槐』らしいが、魔力のほとんどない本家一族は真名を知らず『火連』と『炎呪』と解釈し、『火』の名付けが始まったらしい。


カレンとエンジュの真名は魔力がないと読めない本に書いてあり、その本に魔力の使い方も書いてあった。

魔力は10歳くらいにならないと発現しない。


10歳を過ぎて、たまたま本家に行ったとき、今まで見えなかったものが見えるようになっていて自分の力を知ったのだ。

この家にある本は魔力による書き込みがある本が多く、おとなしく普通の本を読んでいる子供にしか見えない俺を誰も咎めなかった。


俺は偶然というか、嫌がらせで名付けられたお陰で植物の名前だった。久しく能力者が出ない分の力が集中したんだろうと考えている。

これらはユリに魔力があることで、再度調べて知った。


「お前いくつだ?」

「6歳です。ソウ兄上」

「悪いが俺はお前の兄じゃない。呼ぶなら名前で呼べ」

「わかりました。ソウ様」


そこは、ホシミさんとか ソウさんとかじゃないのか?


「・・・まあ、いいか。それでカエンはどこ行った?」

「カエン姉上はここに居ることを知りません。一人で来ました」

「ツキミの家から ホシミ家は未就学児が一人で来られるのか?」


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!

けたたましくインターフォンが鳴る。


窓から顔を出し、大声を出した。


「何回押してんだ!!」

「お兄様、弟が、弟が!」

「お前の弟なら居るぞ」


カエンは泣きながら家での事を語った。

自分に力がないばかりに、弟を守れなく、

弟は下男のような扱いらしい。

弟と離れたくないと言えば、長の役目を果たせと言われ、力がないために皆が満足いく結果が出せず、最終的には俺を呼び戻せないなら長の座を引けと言われたらしい。


いくらかかわり合いたくないとはいえ、俺がいるからいつまでも揉める、と言うことなら何とかするべきだろう。

そもそも俺が戻ったところで、一族に役立つ能力はない。


「カエン、お前、真名を俺に言えるか?」

「はい。お兄様になら。カエンの真名は火と炎の『火炎(カエン)』です」

「真名を変えることはできるか?」

「一族の長ならば恐らく。ただし力は5~8割位に落ちるらしいです」

「それでも今よりはマシだろう?」

「どなたの5~8割を想定されていますか?」

「俺」

「え・・・」

「タキビ外せ」

「はい」



「カエン、お前の真名を変えるために一時(いっとき)だけ長になってやる。お前に力があればすぐにでも真の長になれるのだろう?遅い発現だったとでも言って即変われ!」

「はい、して、私は何という名に?」

「読みはそのままだ。真名は花園(はなぞの)と書いて花園(かえん)。これでお前は力が使えるはずだ。やれるか?」

「お兄様の命とあれば」

「本家に乗り込むぞ」


廊下に出したタキビを呼んでカエンの部屋へ転移する。


「タキビはここにいろ」

「はい」


不安そうにこちらを見るタキビを、部屋においていく。


何度来ても嫌な場所だ。

豪華なだけの休まるところのない空間。


長の間へ向かう途中、親族に出くわした。


「おおー、ソウ・ツキミ様」

「俺はソウ・ホシミだ!下がれ!」

「あなたたち、さがりなさい」

「カエン様」


わらわらと寄ってくる親族を押し退け、無理矢理通り抜けた。


「能力もないくせに直系だからと・・・」

「ソウ様が継いでくだされば・・・」

「ソウ様が女児であったならば安泰であったものを・・・」


後ろから、ヒソヒソと親族の声が聞こえる。


「いつもこうなのか?」

「大体こんな感じです」

「そうか。知らなかったとはいえ、今まで悪かったな」

「お兄様が謝るようなことは1つもありません!」


カエンは長を継いでからの5年間、毎日こんな中に居たのかもしれないな。


長の間に入り、やっと静かになった。


「長にはどうやってなるんだ?」

「継承の指輪を受けとれば、です。認められれば指に合い、認められなければ大きさが変わりません。女児が他に居なかった為、対外的に10歳から私が長ではありますが、指輪に認められていません」

「では、俺に指輪を」


大きな指輪がスルッと指にはまり、ぴったりになる。


「指輪の記憶が流れ込んでくるな」

「そんなことが」

「少し待ってろ」

「はい」


指輪の記憶にしたがい、歴代の長の真名を記した場所の扉を開ける。

そこは鍾乳洞に、一族全ての札が並んでいる場所だった。

カエンの名前の札を探すと、小さな札に『月見火炎』と名前があった。

横に、俺の名前『月見草』の大きな札がある。

魔力を使い、カエンの真名を『月見花園』に書き換えた。

札のサイズが少しずつ大きくなっていく。


元の部屋に戻り、指輪を渡そうとしたら、カエンは魔力過多の症状を起こし倒れた。


落ち着くまで2~3日かかるだろう。

体がついていけないだけで頭ははっきりしているらしいので、俺は例の魔力がないと読めない本を渡し、読んでおくように言った。

これで勝手に学習するだろう。


実はこの本に、自分の子や孫には植物名をつけてはいけないと書いてある。

カエンは俺の子でも孫でもなく、異母兄妹だ。掟には触れんだろう。



3日後、再びカエンを訪ねるとすっかり元気になっていて、力も正しく使えるというので指輪を渡した。

はずすと大きくなった指輪が、カエンの指にはめるとぴったりになった。

これで、名実ともにカエンは長だ。


「あ、指輪の記憶が流れ込んでくる!」


カエンは嬉しそうに微笑んだ。


「じゃ!頑張れよ!」

「あ!お兄様!」


俺はさっさと転移した。

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