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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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外出

「ユリ、クリスマスにシャツありがとう」

「うふふ昨日も聞いたわよ。ソウも髪留めありがとう。昨日は汚れるからか誰も着なかったわね」


ソウがユリにお礼を言うと、ユメが驚いていた。


「あのシャツはクリスマスプレゼントにゃ!?」

「お揃いで作ったのよ」

「作ったのにゃ!? もしかして、一緒に置いてあったマフラーはソウからにゃ?」

「俺からは、ユメとキボウにマフラーを用意したよ」


ユメは部屋に、取りに行った。


「なーにー?」

「クリスマスプレセントだよ。去年、ユリから帽子とカーディガン貰っただろ?」

「キボーの?」


キボウは、どこにあるかわからない様子だった。


「リビングの端にあるミニタンスに、キボウ君の物はしまってあるわよ」


ユリが説明すると、キボウはミニタンスを見に行き、カーディガンを引っ張り出していた。キボウが作っていた折り紙やプラバンなどもそこにしまってある。


シャツとマフラーを持ってきたユメは、改めてユリとソウにお礼を言っていた。


キボウが衣類を頭上に投げ、シャツとカーディガンと以前渡したオーバーオールに着替えた。それを見たユメも、部屋に戻り、着替えてきた。


「あとで、みんなで何処か出掛けるか?」

「出かけるにゃ!」

「でかける、でかけるー!」

「なら、そうしましょう」


ユリとソウが部屋に行き、取り合えず仕事で出かける準備をして戻ってきた。ユリは髪を結いあげ、聖女の正装だ。


「早めに帰ってくるからな」

「ちょっと待っていてね」

「わかったにゃ」

「わかったー」


ユリとソウは、ソウの部屋から転移陣まで転移した。


「ハナノ様、ホシミ様、お待ちしておりました」

「ご苦労様です」

「毎度任せちゃって、悪いな」


パープル侯爵が待っていた。


「ソウ、来たか」

「カナデ、結局何人だ?」

「ソウが言った通り伝えたけど、どうしても帰りたいと言ったのは、3人だ」

「了解。カナデ、ありがとう」


事前に通達したのは、今回の戻りは、1月7日(土)に迎えの予定だが、恐らく2月1日(水)になる可能性が高い。それでも行きたい人だけにして貰ったのだ。


◇ーーーーー◇ 

ダイゴ・サカキバラ(ピザ・ジェラート)

ススム・タケシタ(お好み焼き・焼そば)

タイキ・マツモト(漢方薬師・看護師)

◇ーーーーー◇ 


「この3人だ。理由は、仕入れらしい」


カナデ・サエキから、メモを渡された。


「私はソウ君を待っているよ」

「あー、はいはい」


見送りに来ているリツ・イトウに対し、ソウの態度は今日も冷たい。ユリは苦笑し、カナデ・サエキはいつもの事に呆れていた。


理由も伝えてはあるが、ユリの口から予定をしっかり伝えることになった。


「今回、戻りの迎えが1月中に出来ない恐れがあります。それでも、1月7日土曜日に、向こうの集合場所には一旦集まって貰います。その日に迎えが来なかった場合、2月1日水曜日に、再度集まってください。この日は確実に私が迎えに行きます」


希望者が舞台に上がり、揃ったところでユリが最後に舞台に上がり、呪文を唱えた。


「イタアシアヘク・イルバヰアッケキ・オデイナクヌュス」


景色が変わり、ソウビたちが待っているのが見える。


ソウがソウビに再度予定を確認し、ユリが迎え分まで先払いしてパウンドケーキを支払った。


「ハナノ様、無事なお帰りをお待ちしております」

「え?」


今日は、女王として挨拶されたらしい。前回5年かかったことをソウビは心配しているのだ。


「無理難題を頼みに行く訳じゃないから、遅くとも1か月後には帰ってきます」

「はい」


「ソウビさん、今回もよろしく頼みます」

「ソウビさん、よろしくお願いします」

「お任せください」


ソウビに挨拶したあと、ユリとソウは、国内の転移陣に戻ってきた。


「パープル侯爵、馬車で帰る? 転移して帰る?」

「テントの片付けがございますので、馬車で戻る予定でございます」

「毎度ありがとう。次回もよろしくな」

「かしこまりました」


ユリとソウは、家まで転移で戻ってきた。1度リビングに顔を出す。


「ただいまー。着替えてくるわ」

「ただいま。俺も着替えてくる」

「お帰りにゃー」

「おかえり、おかえりー」


ユリとソウは、ユリが作ったシャツとカーディガンを着て、リビングに集合した。


「みんなお揃いにゃ!」

「おそろい、おそろいー!」

「みんな良く似合ってるぞ」

「喜んでくれて、良かったわ」


ユリは珍しく髪を下ろし、ハーフアップにして、ソウから貰った髪飾りをつけている。


「北に氷像を見に行くか、スケートかスキーをしに行くか、南に泳ぎに行くか、花を見に行くか、西に工芸品の冬の市を見に行くか、東に冬山ピクニックに行くか、何処か行きたいところはあるか?」

「南の花って、以前行ったところ?」

「いや、何か背のデカイ花が今咲いているらしいよ」

「それ、見に行くにゃ!」

「はなみる!はなみる!」


ソウは何かを思い出したらしい。


「提案しておいて何だけど、この服装だと暑いかも」

「なら、目的の花を見たあとは、他に行きましょう」

「そうするにゃ!」

「そうする! そうするー!」


ソウはキボウを連れ、転移していった。すぐに戻ってきたキボウが、ユリとユメを連れ、転移した。


「うわ、初夏の陽気ね」

「だいたいこの時期でも15~20℃有るらしいからな」

「上着は脱ぐのにゃ」

「うわぎー」


ユリは、ユメとキボウから脱いだカーディガンを預かった。


「花はどこにあるのにゃ?」

「上にあるぞ」


皆で上を見た。いや、見上げた。節の有る太い茎、まるで竹のように高く伸びた植物。


「竹のごとく高いのね」

「みえなーい」


上の方にたくさん花がついているのは見えるが、遠すぎる。


「8~10mくらいになるらしいよ。日本だとせいぜい3~4mだよな」

「少し高い所から見渡せると良いわね」

「丘の上の展望台から見れば、高すぎず低すぎず、ちょうど良いかもな」


少し移動して、丘の上に有る東屋に来た。

ガゼボと言うより、東屋という表現がぴったりな感じのシックな建屋だった。


「なんて花なのにゃ?」

「皇帝ダリア」「木立ダリア」


ユリとソウが違うことを言った。


「何て言ったのにゃ?」

「ソウが言ったキダチダリアが日本での正式名称で、コダチダリアやコウテイダリアとも呼ぶのよ」


広げた手のひらよりも大きな花で、ピンク色に近い薄紫色の花びらで、一重の花と八重の花の種類がある。ここにはないが、違う花色も存在する。


「凄いのにゃ。大きな花なのにゃ」

「知ってる皇帝ダリアよりも、花がたくさん咲いているわね」

「どっさり咲いている感じだな」


ユメがキョロキョロしていた。


「キボウは、どこに行ったのにゃ?」

「え?」

「本当に居ないな」


みんなでキョロキョロ探してみたが見当たらない。


「キボウくーん」

「キボウー」

「キボウどこにゃー?」


パッとキボウが転移で現れた。


「なーにー?」

「どこに居たのにゃ?」

「はな、みるー」

「座らなくて良いのにゃ?」


東屋を見回すと、ニコッと笑って座っていた。


「まだ少し早いけど、お昼ごはん何か食べる?」

「次行く予定のところは、たぶん寒いから、花見ながらならここが良いぞ?」

「食べるにゃ!」

「たべる、たべるー!」


ユリはおにぎりとサンドイッチを取り出し、皆に選ばせた。

おにぎりは重箱に入っていて、くっつかないようにオーブンシートで仕切られた小振りなものが並んでいる。少しだけ上に具がのせてあり、中身がわかる。1帖を6切りした大きさの海苔を添えてあり、パリパリ海苔を巻きたい人に用意してあるのだ。


サンドイッチの入れ物と、おにぎりの重箱ごとユメとキボウの間に置き、ユリとソウが取りに行くかたちにした。


両手におにぎりとサンドイッチを持ち、交互に食べながらソウが何か悩んでいた。


「ユリ、おにぎりとサンドイッチのツナマヨって、何か違うの?」

「同じでも良いんだけど、おにぎりの方がマヨネーズが少なめで、ツナを良く潰してあるわね。サンドイッチの方は、少量のケチャップが入っているわ」

「へえ、やっぱり違うのか」


味の違いが不思議だったらしく、同時に食べることは少ないので、この機会にと聞いてみたようだ。


「そういえば、イチゴ練乳飴があと6本有るわよ」

「キボー、たべるー!」

「私も食べたいにゃ!」

「俺も1本貰って良い?」

「足りなければ、帰ってからいくらでも作るわよ」


キボウ3本、ユメ2本、ソウが1本食べていた。


「食べ終わったら、次行くか?」


次に来たのは、水仙が咲いている、かなり寒い場所だった。


「上品な良い香りがするわね」

「良い香りなのにゃ」

「いいにおーい、いいにおーい」

「もう少しあとだと、梅も咲いているらしいんだけどな」


蕾の大きくなった梅の木の根本に、たくさんの水仙が咲いていた。


「これ、全部水仙にゃ?」

「水仙の種類によって、咲く時期に大分開きがあるからね。まだ花がないのもあるわね。その小さな感じのは、水仙の原種だと思うわよ」


急に温度差の有る場所に来たので、ブルっと寒さに震えた。


「ユメちゃんとキボウ君、カーディガン着た方が良いわ」

「寒いにゃ。上着も着るにゃ」

「さむい、さむーい」


キボウは言うだけで、あまり寒くはないらしい。ユメとユリだけ慌ててカーディガンを着て、さらに上着を着込んだ。


「寒いから、花を見たら帰るか」

「そうね。風邪を引いたら困るわね」


少し歩き、違う種類をいくつか見てから、家に戻ってきた。


「ユリ、リビングに、炬燵(こたつ)モドキ置かないか?」

「それ何だったかしら?」

「あ、ユリ居なかったか。以前、店の明かりに、魔力ランタン取り付けたことがあるだろ? あれ、パープルに譲って貰ったんだけど、その時他の不用品も貰って、その中にどう見ても炬燵があってさ。それも貰ったんだよ。向こうの家に置いてあるけど、こっちに持ってくるからさ」

「なら、座布団も欲しいわね」

「ついでに持ってくるよ」


ソウが取りに行ってしまうと、キボウが騒ぎ始めた。どうやら、イチゴ飴を作って欲しいらしい。


ソウが戻るまで、イチゴ飴や、その他の果物も使い、キボウが食べたいだけ作ったのだった。

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