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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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苺型

「おはようございまーす!」

「リラちゃんおはよう。早速ケーキ食べる?」

「はーい」


ユリが用意していると、キボウが来た。


「キボーも、キボーも!」

「あ、キボウ君、アップルパイでも良い?」

「アップル、パイ! たべるー!」


あれ?キボウ君の言葉が、はっきり「アップルパイ」になっているわ!と、ユリは少し感心した。実はユメが、林檎のパイだと説明し、意味を理解して名前を把握したのだった。


「あ、最後に焼いた四角いアップルパイだ」

「リラちゃんも、食べられるなら食べて良いわよ」


「キボウ君、どのくらい食べられる?」

「どのくらい?」

「えーと、ここの端からどこまでが良い? 好きな場所を切るわよ」

「キボー、いっぱい!」


キボウは、30cmくらいある長方形のパイの、半分辺りを指差した。


ユリはキボウが指し示した辺りをカットし、先に残りをいくつかに分けてから、キボウに聞いた。


「こっちのはキボウ君の分ね。食べやすいように細く切る?」

「きらなーい!」


なんとそのまま(かじ)りつきたいらしい。

ユリが少し笑い、リラはだいぶ笑っていた。


「うわ、キボウ何やってんの?」


大きいまま齧りつこうと持上げようとしているところにソウが来た。


「あ、ソウもアップルパイ食べる? 普通の大きさだけど」

「俺は、食べやすい大きさで」


リラが、持上げやすいようにと小皿をキボウに渡し、キボウは本当にそのまま食べていた。


「ユリー、キボウ知らないにゃ?」

「キボウ君なら、ここにいるわよ」


ユメが、キボウを探しに来た。

キボウは口いっぱいにアップルパイを頬張っていて、返事が出来ない。ユメが少しあきれていた。


「ユメちゃんもアップルパイ食べる?」

「今はお腹いっぱいにゃ」

「なら、あとで作るから、これは食べちゃうわね」

「わかったにゃ。 あ、ユリ、花のアップルパイは、もう作らないのにゃ?」

「もしかして、シィスルちゃんに聞かれたの?」

「作りたいって言っていたのにゃ」

「たぶんあとで作ると思うわ。一緒に作るなら、10時頃に来てね」

「わかったにゃ」

「わかったー」


いつのまにか食べ終わったキボウも返事をしていた。2人はそのまま外に出ていった。畑を見るのだろう。



9時前になると、メリッサとイポミアも出勤してきて、今日も12時開店で頑張ろうと、皆気合いをいれた。


「リラちゃん、ブッシュ・ド・ノエルの仕上げ、お願いします」

「はーい」


ユリは売り出すケーキの仕上げをし、ユメとキボウは、お店の方で箱を組み立てるのを手伝っていた。


9時半頃、イリスとマーレイが出勤してきて、少しするとシィスル、マリーゴールド、リナーリが、アップルパイを作りに来た。


「花のアップルパイだけで良いの?」

「はい」

「少しだけ待ってて貰える?」


ユリは少し手が離せずにいた。もちろんリラも忙しい。

いつのまにか厨房に戻ってきたユメとキボウがニコニコとしている。


「私が教えるにゃ!」

「ユメちゃん、お願いします。パイは伸しておくわ」


花タイプのアップルパイなら、ユメでも教えられる。


少し手が空いたユリがパイを伸し、ユメに渡した。


ユリは、マーレイが林檎を剥いて刻んでおいてくれたものを煮て、フィリングを作ったが、林檎はまだ残っている。


「リラちゃん、手が空いたら、アップルパイお願い」

「はーい。これ片付けたらこっち終わります」


ロールケーキを箱に入れるのを、マーレイに代わり、リラはユリの手伝いに来た。


「今日は、丸皿ではなく、四角いアップルパイの方で作ります」

「こっちの方が、パイ生地に無駄が出なくて良いですね」

「端の方は、少し多めにフィリングを入れれば、美味しく食べられると思うのよ。それでも、外おやつに出すけどね」

「昨日の丸いお皿のアップルパイは、もう残っていないんですか?」

「2皿残っているわよ。30皿作って、販売したのは約25皿分(151カット)で、味見で食べたのが約3皿分(17カット)だからね」

「これは、いくつ作るんですか?」

「天板に3つ並べて、30台分ね」

「オーブン2段ですね」


ユリがリラと作っていると、シィスルたちが見学に来た。網になるパイ生地カッターが面白かったらしい。


「ユリ様、少し手伝っても良いですか?」

「私はありがたいけど、これは仕事分よ?」

「やってみたいだけなので、少し触ったら気が済みます」

「なら、気の済むまでどうぞ」


5人がかりで作ったので、あっという間にアップルパイは仕上がった。


「これ(パイ生地カッター)面白いですね」

「パイの仕上げくらいにしか使わないけどね」

「まあ、確かに。クッキー生地では、ちぎれてしまいますね」


シィスルたちが作ったアップルパイを焼き、少しして販売用のアップルパイも全て焼きはじめた。


「あなたたち、お昼ご飯はどうするの?」

「ピザトーストを食べて帰ろうかと考えています」

「なら、お昼ご飯作るの手伝って、こっちで食べたら良いわ」

「ありがとうございます!」


シィスルたちがお昼ごはんを作ってくれるので、ユリとリラは、午後の予定の仕事を開始した。


「シートスポンジ、ココアシートスポンジ仕込みます」

「はい」


「ユリー、何かすることあるにゃ?」

「ユメちゃん、黒猫クッキー作る?」

「まだ残ってるにゃ」

「キボーは? キボーは?」

「なら、パイ生地が少し残っているから、好きな形でリーフパイ作る?」

「それが良いにゃ!」

「キボーも、キボーも!」


マリーゴールドが面倒を見てくれるというので任せた。リナーリも参加して、リーフパイやお化けパイを作っているようだった。


結局、シィスルが1人で作ったお昼ご飯が出来上がり、各自仕事にきりを付け、皆でお昼ごはんを食べることになった。


「シィスルちゃん、全部作って貰っちゃって、どうもありがとう」

「いえいえ、私がマリーとリナーリに、大丈夫と言ったので、お気になさらないでください」


「マリーゴールドちゃん、リナーリちゃん、ユメちゃんとキボウ君と一緒にパイを作ってくれてありがとう」

「マリーゴールド、リナーリ、ありがとにゃ」

「ありがと、ありがとー」

「お仕事ではございませんが、自由なパイは楽しく思います」

「リーフパイを教わって、楽しかったです!」


「ユリ様、キボウ君に頼まれたのでございますが、苺型のリーフパイを作るには、どうしたらよろしいでしょうか?」

「クッキー型に、イチゴっぽいのが有るから、伸してから型抜きしたら良いと思うわ」

「その場合、どうやって、グラニュー糖を付けたらよろしいのでしようか?」

「焼く前に、振りかければ良いと思うわよ。大量に苺型にするなら、パルミエを作ったら良いんじゃないかしら?」

「パルミエでございますか?」

「薄く四角く伸したあと、中心線を1度折って開いて、刷毛で水を塗って、グラニュー糖をたっぷり振りかけた後、端から畳むように中心に向かって緩めに丸めていくのよ最後両側を折ったら向きを寝かせて、5mmくらいの厚さにカットして、その生地を倒して焼くと、この国の形(ハート型)みたいになるのよ。巻き込む時にイチゴパウダーで色付けするか、イチゴジャムを巻き込んで、上部に抹茶色の星形でも置けば、苺みたいに見えると思うわ」

「この後作ってもよろしいでしようか?」

「構わないわよ」


全員休憩に入り、ユリも一旦部屋に戻った。


アップルパイをオーブンから出さないと、とユリが厨房へ行くために階段を下りていると、リラの声が聞こえてきた。


「えー、シィスずるーい」

「えへへ。私は仕事ではないのです」

「えー、マリーまでー!?」

「えーと、リラさん、申し訳ございません」

「あ、あの、私はどうしたら良いですか?」


最後、リナーリが困った声で話しているのが聞こえる。

ユリは慌てて階段を下り、厨房へ急いだ。すると目にしたのは、リラは椅子に座っていて、シィスルとマリーゴールドがパイを伸していて、リナーリがおろおろしている光景だった。


「みんな、どうしたの?」

「ユリ様、聞いてください。私は昼休みで休んでいるのに、シィスとマリーは、パイ作ってるんです!」


リラは仕事中の休み時間なので、ちゃんと休まないといけない。がしかし、シィスルとマリーゴールドは、本来休みなので、自由に行動している。リナーリはどちらの意見に従えば良いかわからず、おろおろしていた。と言う訳らしい。


「あー、うーん。何とも言えないわね」


ユリは話を流して、オーブンの前に行き、焼けたアップルパイ2段分と、シートスポンジ5枚を取り出した。


「リラちゃん、疲れない程度なら、そちらに参加して構わないわよ。午後になったら、むしろ参加できないだろうからね」

「よっしゃー! ユリ様、ありがとうございます!」


リナーリがほっとした表情をして、作る方に参加していた。


「なんでもう作ってるのにゃー!」

「キボーも、キボーも!」


たまたま早く戻って来たユメとキボウも、作るのに参加するようだ。


「みんな、休まなくて、体力持つの?」

「問題有りません!」

「大丈夫にゃ」

「だいじょぶ、だいじょぶ」


「若さって、凄いわねぇ」

「ユリだって、充分若くて可愛いよ」


ニコニコしたソウが、ユリを見ていた。


「あ、え、えーと、ソウいつ来たの?」

「今。ユリが若さって凄いって話している時かな」

「あ、うん」


赤くなってユリが逃走した。



午後の開始時間になり、お店を開店させた。


「ユリ様、アップルパイは、いくつに切るのでしようか?」

「あ、ごめん。さっき切ろうと思ってたんだけど。端から2cmくらい切り落としてから、4cmの予定よ。端は、外おやつに追加してください」

「はーい」


リラが3台程急いでカットして、イリスたちが15個運んでいった。


「ユリ様、これ半分くらいのサイズで作って、そのまま売ったら良いんじゃないでしようか?」

「計画的に林檎を入手して、パイを折るなら、良いと思うわよ」

「なら、来年にでも! 林檎を持ち込んだ農家さんって、去年うち(ベルフルール)に林檎置いていった人ですよね?」

「そうなの?」

「見ていたお客さんが教えてくれました」

「なら、連絡できそう?」

「はい。可能です。伝えておきますね」

「お願いするわ」


昨年末ベルフルールに、麻袋で5袋分の林檎を寄付(?)していった人らしい。ユリも一袋貰い、赤いリンゴジャムを作ったのだ。


「そう言えば、パルミエはどうなった?」

「はい。オーブンの横のケーキクーラーにのっています。ちょっと持ってきます」


そのパイは、ユリの予想通りに出来上がっていた。


「イチゴっぽい見た目になったわね」

「キボウ君が、大喜びだったそうです」

「それで、みんなはどこ行ったの?」

「ちゃんと休憩するそうです」

「注文落ち着いたら、リラちゃんも少し休みなさい。どうせ明日も来るんでしょう?」

「はい!明日も来て良いんですね!」


リラは上機嫌で手早く残りの注文分を出すと、「15分休憩行ってきまーす」と、休憩室に行くのだった。


パルミエは全て焼いたわけではなく、キボウのためにとりあえず天板1枚分だけ先に焼いたらしい。休憩から戻ってきたシィスルとマリーゴールドが、リナーリに教えながら残りを仕上げてオーブンで焼いていた。



注文品を出しながらムース類を仕込み、持ち帰り用のケーキを、今日も予定通り仕込むことが出来た。


夕飯の後、ユリが皆に声をかけた。


「明日は、Tの日(じゅもくのひ)Gの日(きんのひ)に売り出すケーキの仕込みをします。出勤は強制ではなく、残業扱いにします。無理せず、来られる人が来られる時間だけ来てください。12時付近にいる人には昼食を、18時付近にいる人には夕食を提供します」


「ユリ様、質問があります!」

「はい。なんでしょう?」

「今年も唐揚げ出しますか?」

「その予定には、しているわよ。去年好評だったからね」

「骨付きの、チューリップ唐揚げも作りますか?」

「作ると思うわよ。ソウが好物だからね」

「楽しみです!」


明日のためにも、早めに解散した。

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