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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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形状

その日、あり得ないほど早くリラは来た。


「ユリ様-! 1月全部休むって、本当ですかー!?」


まだ皆で朝ご飯を食べる直前で、時刻は7時にもなっていない。


「きっと、マリーゴールドが伝えたのにゃ」

「そうだろうな」

「ちょっと行ってくるわ」

「キボーも、キボーも」


キボウと一緒に階段を下りると、興奮した様子のリラが待ち構えていた。


「リラさん、お待ち、ください、ませ、」


息を切らしたマリーゴールドが追いかけてきていた。


「ユリ様、クリスマスの後から、1月いっぱい休みなんですか?」

「決定した訳じゃないけどね。その予定よ」

「ちゃんと、帰ってきますか?」

「確実に、翌月の2月1日に帰ってくると約束するわ」


一瞬、リラが悩んだ様子が伺えた。


「だいじょぶ、だいじょぶ」


キボウが肯定したのを聞き、納得したようだ。


「それなら、留守を引き受けます。お正月の祝い紙を受け取れば良いんですよね。配るお菓子は、年末に一緒に作りましょう」

「ありがとう。わかってくれてよかったわ」


皆の予想より、リラはあっさり帰っていった。追いかけてきたマリーゴールドも、少しビックリしたみたいな顔で、リラと帰っていった。


ユリはキボウを連れてリビングに戻り、朝ご飯を食べた。朝ご飯の準備は、ソウとユメが終わらせてくれていたのだ。


「リラは、納得したのにゃ?」

「たぶん」

「他にも誰か来てたのにゃ?」

「マリーゴールドちゃんが、リラちゃんを追って来ていたわ」

「マリーゴールドは、あちらの朝ご飯の時に、話したのかもな」

「成る程。だから今来たのね」


食べ終わり食器を片付けていると、ユメから確認された。


「ユリ、何時からアップルパイを作るのにゃ?」

「この後掃除をして、今日の集合は、10時の予定よ」

「わかったにゃ。ご飯食べたから、すぐに掃除するにゃ」

「ユメちゃん、少しでも良いから、食休みをしてね」

「わかったにゃ」


ユメが部屋へ帰ってから、キボウが質問に来た。


「ユリ-、あっぷうぱい、なにー?」

「アップルパイのこと?」

「それー」

「キボウ君の好きなリーフパイあるわよね、あの生地でリンゴを挟んで焼いた物が、アップルパイよ。一緒に作りましょうね」

「わかったー」


キボウはニコニコして、洗った皿を拭いてくれた。


少しゆっくりお茶を飲んでから、ユリは掃除を始めた。


「ユリ、掃除機持って行って良い?」

「大丈夫よ」


ソウが掃除機を持って行ったので、ユリは先に洗濯物を回収し、洗濯機を回し、お風呂を掃除してきた。リビングに戻ってくると、自室とリビングの掃除を終わらせたソウが、階段を掃除すると言っていた。今掃除機は、ユメが持っていっているらしい。ユリは自分の部屋を拭き掃除し、洗濯物を干そうと浴室に行くと、すでにユメが干していてくれた。


予定よりだいぶ早く掃除が終わったので、白衣に着替えて厨房へ行くと、リラがすでに来ていて待機していた。


「ユリ様、おはようございます」

「え、あ、おはよう」


そういえば、早朝に来たときは、おはようと言わなかったわね。とユリは思い出した。


「お店で出しているアップルパイじゃなくて、色々なタイプを作りましょうか」

「楽しみです!」

「ではまず、スポンジを焼きます」

「え?」


実際には焼かないが、手順として説明を始めた。


「はい。ここに冷えたスポンジがあります。他に、丸くくりぬいた残りのスポンジもたくさんあります」

「これ、何処に使うんですか?」

「アップルパイに使うわよ。一番目の荒いふるいか、金属製の網などを用意して、スポンジを削って、ケーキクラムを作ります」


リラもユリの真似をして、ケーキクラムを量産した。


「出来たら、オーブンの上にでも置いて乾燥させるか、残ったら冷凍保存します」

「はあ」


「昨日までに作っておいた折りパイの仕上げ折りをして、冷蔵します」

「はい」


伸せば使えるまで、パイを折った。


「林檎を剥いて、使用するタイプにカットします。今回は、しっかり目に煮込んだ林檎を用意しましょう。縦4等分を4~5mmの薄切りにします」


リラとひたすら林檎を剥いてカットした。


「グラニュー糖とレモン果汁を加え、リンゴを煮ます。あまり長く置いておくとリンゴが茶色くなってしまうので、切ったらすぐにグラニュー糖とレモンをかけると良いでしょう」


リンゴを鍋にいれ、グラニュー糖とレモン果汁をまぶした。


「これを煮て、水分が出て、その水分が減ってきたら火を止め、好みでシナモンを加えます。フィリングの出来上がりです」


煮たリンゴはパイがだれないように、冷ます必要がある。


「ユメちゃんとキボウ君を呼びましょう」

「はい」


『ユメちゃん、アップルパイ始めますよ』

『キボウ君、アップルパイ始めますよ』

『すぐ行くにゃ!』


ユリが以心伝心で呼び掛けると、ユメからは返事があったが、キボウは直接来た。


「キボー、きたー!」


遅れて、ユメが階段を慌てて下りてきた。


「もう始めるのにゃ?」

「ユメちゃん、まだ無理そう?」

「大丈夫にゃ」


「アップルパイを何種類か作ろうと思います。皮付きのまま4等分して芯と種を取った林檎を薄切りにします。鍋にいれ、グラニュー糖とレモン果汁と水を少しいれ、さっと煮ます」


リラとユメが林檎2つを薄切りにした。


「皮付きなんですね」

「皮付きなのよ。煮えたら冷えるまで置いておきます」


ユリはパイを伸し、使える厚さにした。


「リラちゃんと中身を作っておいたので、アップルパイを作りましょう。10cmくらいの正方形のパイ生地を、二等辺三角形になるように斜めに折り、輪の側の端から1cm幅に、頂点のみがくっついた形状に切り込みをいれます。これを開き、端にたまごを塗って、切り離れている部分を、左右交互に重ねます。はい。真ん中にのせられる形になりましたね。煮たリンゴでも、生の薄切りでも、好きなものをのせてください。生林檎には、グラニュー糖をまぶし、煮たリンゴには、下にケーキクラムを少し敷くと、良いですよ」


「スポンジを細かくしたものを敷くのはなぜですか?」

「このくらいの量ならなくても良いんだけどね。たっぷり中身をいれたアップルパイの場合は、出来上がりに差が出ます」


キボウも参加して、4人で2種類ずつ作った。


「パイの上側にだけ卵を塗ります」

「さっき、一緒に塗ってはダメなんですか?」

「構わないけど、たぶん作業性が悪くなるわよ」


10時になると、シーミオを連れたメリッサと、イポミアがやって来た。


「こんにちは」

「うわー、もう始まってる-!」

「シーちゃんきたよー」


ユリがパイを伸している間に、ユメとリラが、メリッサたちに指導してくれ、やはり1人2つずつ作った。


「ユリ様、実験にもうひとつ作っても良いですか?」

「ケーキクラムを入れないのを作るの? 良いわよ」


リラは、ケーキクラムを入れないアップルパイを1つ作って、ニヤニヤしていた。


「今度は、林檎の皮を剥いて、縦4等分、さらに横に切って、8等分した林檎を作ります」


ユリがひとつ見本を見せ、1人2個くらいずつと言うことで、もうひとつの林檎はリラがカットした。


「種と芯を切るときに、平らになるように切ります。少しだけ尖っている角を落とします」


シーミオの分は、メリッサが加工した。


「プレッツェルか、揚げたパスタを用意しておきます。伸したパイは、12~13cm角の正方形にカットし、パイ生地の回りにたまごを塗り、グラニュー糖をまぶした林檎を包みます。真ん中に竹串などで穴を空け、葉っぱ型にカットしたパイ生地をはりつけ、しっかり卵を全体的に塗り、穴にプレッツェルなどを差し込みます」

「うわ、思ったよりも難しい」

「えー、リラが難しいなら、皆出来ないよー」

「これ、昔出していたアップルパイですよね?」

「そうね。最初の頃、出していたわね」

「こうやって作るんですねぇ。小さい林檎が入っているんだと思っていました」

「姫りんごで作っても良いのよ。出来たら少し休ませてから、焼成します」


本当に難しかったらしく、かなり時間がかかっていた。


「ユリ様、ユメちゃんと作った薄切りはどうするんですか?」

「それは、パイ生地を細長く切って、上に薄切り林檎をずらして並べ、それを巻きます。出来たらプリンカップに入れて下さい」

「うわ、何か花になった!」


形が出来たものは、冷蔵庫に入れ休ませる。


「5号のパイ皿30枚を作業台に並べてください」


ユリは、伸してあるパイ生地を皿の上に被せた。


「パイ皿が重ならないように調整してから、片手に一杯のケーキクラムを、全てのお皿の上あたりにのせてください」


皆で手伝いケーキクラムをのせ、平らにならした。


「リラちゃん、フィリングを、お玉に1杯ずつ、のせてください」

「はい」

「ユメちゃん、りんごを、中心が少しだけ高い感じに、ならしてください」

「わかったにゃ」

「メリッサさん、刷毛で、パイの(ふち)にだけたまごを塗ってください」

「はい」

「イポミアさん、私が持ってくるパイの補助をお願いします」

「はい!」


たまごが塗り終わったところに、伸したパイ生地を被せた。


「たまごを塗った縁のあたりを張り付けるように、少し押さえます。そうしたら、ナイフで、大まかに切り分けます」


ユリが、パイ皿が別れるようにザクザクと切り分けた。


「もう一度、縁をしっかり押さえてから、パレットナイフか、ペティナイフなどで、余分なパイを切り落とします。パイ皿の縁とナイフを擦るようにして、切り落とします」


数が多いので、皆参加して挑戦した。


「うひゃ、切れなくてパイがのびたー!」


切りそびれてしまったらしい。


「慌てずに頑張ってちょうだい」


なかなか思うように出来ないらしい。


「出来たら、表面に斜め格子の模様をつけ、たまごを塗ります」


メリッサがユリにならって模様をつけると、イポミアはカットを諦めたのか、たまごを塗り始めた。


「中心に竹串で穴を空け、少し休ませます」


リラとユメが、穴を空けていった。出来たものから冷蔵庫へ入れていく。


「先に作ったものを焼きましょう」


ユリとリラで、オーブンに種類を分けて入れた。


「ユリ様、煮たリンゴの余ったのどうしますか?」

「仕上げ用のパイ生地も少しあるから、さっき切り落としたパイ生地を伸して、二番生地を作って底に使って、四角いのを作りましょうか」


天板に、長方形に底生地を置き、縦長に真ん中だけにケーキクラムとフィリングを置いた。パイ生地ローラーで網型に延びる生地を作り、それを被せ、切り分けるアップルパイを作った。


「七夕の飾りみたいですね!」

「そうね、模様がのびるのは同じ仕組みね。さあ、卵を塗ってください」

「はーい」


たまごを塗った後、言わなくても冷蔵庫にしまってくれた。


「リラちゃん、最初のアップルパイ焼けたわよ」

「はい!」


焼きたてを少しだけ冷まし、皆で食べてみた。


「ユリ様、よくわかりました! スポンジを細かくしたものを入れないと、パイがべちゃべちゃです!」

「食べても違和感ないでしょ?」

「そういえば、コクが出る感じて、あった方が美味しいですね!」


各個人が作ったものはそのまま持ち帰り、明日、パイ皿にのったアップルパイは、午前中に焼く予定だ。

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