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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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怪我

昨日、遅くまで活動していたユメは、朝ご飯の時間には起きてこなかった。ユリは少し心配になり、そっと部屋を覗いてみた。規則正しい呼吸に伴う寝息が聞こえ、安心してそっと扉を閉めた。


「ユリ、ユメは寝かせておくのか?」

「昨日遅くまで大変だったでしょ? ソウもお疲れ様」

「ユリは、疲れていないか?」

「大丈夫よ」


ユリは、テーブルに朝ご飯を並べた。


「ご飯先に食べましょう」

「キボー、まだー」

「ユメちゃんを待つの?」

「あたりー」

「キボウ君ありがとう」

「よかったねー」


キボウに食事を2人分預け、ユリとソウは手早く食べた。


「今日は手伝うぞ!」

「どうもありがとう」


昨日の城の様子は、ユメが眠った後に少し聞いたが、ユリが帰った後も人は増え続けたらしく、かなり大変だったと、ソウが話していた。



「あの、ユリ様、リラさんからお話があるようでございます」


厨房に行くと、まだ8時前なのに、マリーゴールドが待っていた。


「マリーゴールドちゃん、何かあったの?」

「リラさんが、階段から落ちたようでして、」

「ええー! それは大変だわ。ソウ、ちょっと見に行ってくるわ」

「ユリ、気を付けてなー」


ユリは、マリーゴールドを連れ、ベルフルールの前に転移した。店から入り、奥の応接室のような所についていくと、リラは寝かされていた。そばには心配そうに見つめるレギュムとクララがいた。


「リラちゃん、大丈夫なの!?」

「あ、ユリ様、ご心配をお掛けしてすみません。ちょっと足を捻ったようでして、あはは」


痛いだろうに、リラはヘラヘラしていた。


「見るわよ」

「あ、はい」


ユリはかけてある薄い布団のようなものをどかし、リラの足を見た。

まるで象の足のように、足首がぶっとく腫れている。


「これ、相当痛いわよね? 折れてると思うんだけど、ちょっと触るわよ?」

「はい」


ユリが、そっと触れた。


「うぎゃぁぁー!」


少し触れただけで、リラは悲鳴を上げた。


「よく泣かずに我慢できるわね」

「泣いても治りませんし」


正論だけど、笑いながらそれを言える忍耐力は凄すぎる。


「ちょっとソウを呼ぶから、待って貰える?」


『ソウ、リラちゃんが複雑骨折的な腫れ具合です。骨を整えた方が良い気がするので、見に来てください』

『すぐ行く』


ユリが以心伝心で呼ぶと、ソウはすぐに来てくれた。


「おはようございます」


ソウの声が聞こえ、すぐにクララが案内して連れてきてくれた。


「リラ、大丈夫か? こりゃ酷いな。痛みが有った後、全力で走りでもしたのか?」

「えーと、寝る前に階段を踏み外して少し痛めたんですが、どうも寝ながらどこか壁でも蹴ったみたいで、痛くて目が覚めました。仕事はなんとか出来るかと思って厨房に来たんですが、歩き方がおかしいと、マリーに見つかりました」

「マリーゴールド、お手柄だな」

「ありがとう存じます」


歩いたら、だんだん腫れてきたらしい。


「ユリ、複雑に折れてはいないけど、ヒビは入っているかもしれないから、レントゲン撮っておくか?」

「なら、私が治してからでも大丈夫そう?」

「大まかな傷みは取ってやってくれ」

「はーい」


ユリが魔力を流し、傷ついた箇所の治癒と、腫れが引くように願った。


「うわ!痛みがなくなった!」


ゆっくりしぼむように、足が普通の太さに戻っていく。


「ユリ、前回の病院、行ける?」

「病室に直接ね? 大丈夫よ」


ユリはサーチで、ベッドらしき静物のそばに、動くものと熱の有るものがないことを確認し、リラが寝たままの姿勢で転移した。じっとして待っているユリのそばに、ソウも転移してきた。


「ウカユノフ」

「ユリ様、なんですか?」

「翻訳の呪文よ。これ唱えないと、あなたの言葉を誰もわからないわ」

「ユリ、後はやっておくよ」

「ソウ、お願いします」


ユリはソウに任せ、1人でベルフルールに戻ってきた。


「リラちゃんは、専門医に任せてきたから、安心してください」

「ハナノ様、どうもありがとうございます。お手数をお掛けしまして、申し訳ございません」

「ユリ様、どうもありがとうございます」


レギュムとクララからお礼を言われた。


「ユリ様、ありがとう存じます」

「マリーゴールドちゃん、今日、リラちゃんが居ないなら、こっちにいて良いわよ」


ユリはベルフルールを気遣って言ったのだが、ユリが言ったとたん、今までその場にいなかったシィスルが現れた。


「ユリ様、こちらは問題ございません。リナーリと2人で充分回せますので、何なら今日以降、リラさんとマリーは、ユリ様のお手伝いでも。特に、今週はお忙しいことと思いますし、リラさんに無理させないためにも良い考えかと思います」

「シィスルちゃんは、無理していないのね?」

「はい。リナーリはかなり頑張りました。グランさんも手伝ってくれますし、大丈夫です」


「マリーゴールドちゃん、シィスルちゃんの話は本当?」

「リナーリちゃんは、本当にとても頑張って、色々覚えていました。シィスルさんが回せると言うのは、本当だと思います」

「わかったわ。でもシィスルちゃん、無理しないで、手が足りないときは声かけるのよ?」

「はい。ありがとうございます」


正式には来年からだが、今月に入り、店の実権は完全に譲渡されたそうで、引き続きオーナーはレギュムだが、店の現在の店長はシィスルなのだそうだ。


ユリが歩いて自分の店に戻るとき、マリーゴールドもついてきた。


「まだ、仕事するには、早いわよ?」

「リラさんが戻ってきたときに、少しお時間をいただきたいので、早めに入らせていただけますでしょうか?」

「それなら、構わないわよ」


店に戻ると、準備をしているユメが待っていた。

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