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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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不足

久しぶりに全員で城に行くため、ユリは数日前からたくさんのお菓子を用意した。お店で配るのと同じ黒猫(シャノワール)シリーズや、洋生菓子だ。


ユリもユメも、王家一家と、侍女やメイドたちと、せいぜい公爵夫妻くらいだろうと考えていたが、待っていたのは、ほとんどの侯爵、伯爵夫妻を含む、かなりの人数だった。

侯爵、伯爵夫妻をほとんどと言ったのは、アルストロメリア会の関係者が、この日の参加を遠慮したからだ。


病気や怪我で来られない領地からは、代理の息子夫妻や、幼い子息が参加していたり、とにかく人数が凄い。お店用に用意したお菓子を使っても足りなさそうである。


「ユメちゃん、お菓子セットを配るつもりだったけど、バラにして、何か1つでも良いかしら?」

「大丈夫にゃ。みんな貰うつもりで来ているわけじゃ無いにゃ」

「あ、そうね。配る予告をしたわけではなかったわね」


城に来るといつも見かける馴染みのメイドたちに頼み、籠を用意して貰い、せっかく袋詰めしたお菓子を半数ほど袋から出して貰った。

同じ種類を同じ籠に並べ、ユメの前に揃えた。


ユリはソウにその場を頼み、1人お店に戻ってきた。


「お待ちしてました!」

「うわ、リラちゃん。あなたどうしたの?」


ユリが着替えて厨房に来ると、リラが待ち構えていた。


「配るお菓子足りないかと思って、作りに来ました!」

「あなた、先読みの才能でもあるの?」

「え、お城とお店とアルストロメリア会でお別れ会をするなら、ほとんどの高位貴族の皆様は、お城に行くと思いまして」

「正解よ。私は読みきれなかったわぁ」


仕込みの準備をしていると、娘のシーミオを連れたメリッサや、イポミア、イリスとマーレイも駆けつけてきた。


「私が連絡しました」


ユリが、なぜ?と思っていると、聞くより前にリラが答えてくれた。


「皆さん忙しいところ呼んだの?」

「時間がある人だけと、呼びましたよ」

「わかったわ。皆さんありがとうございます。お菓子、全く足りそうにありません。よろしくお願いします」

「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」

「しーちゃんもてつだうー!」


シーミオは厨房に入れないので、お店のテーブルで手伝って貰うことにした。メリッサもいっしょだ。


黒猫クッキー、黒猫ラスク、黒猫サンド、クロ猫ッカン、肉球マシュマロ、猫型ラムネを作ることになる。


黒猫ラスク用に猫型パンをスライスし、低温のオーブンにまず入れた。その間に、黒猫クッキーの生地をリラが作り、メリッサとシーミオに任せた。クロ猫ッカンは、イポミアとイリスに任せ、マーレイは肉球マシュマロの型を用意。ユリとリラでマシュマロを仕込み、クッキーやクロ猫ッカンをマーレイが順次オーブンで焼いている間に、生チョコを仕込み、黒猫サンドのラングドシャを作りはじめた。


ラスクをオーブンから出して冷まし、ユリが手早く作ったアイシングをイポミアとイリスが塗り、乾かす場所に困っていると、キボウが来た。


「キボー、てつだう?」

「キボウ君、ラスク乾かしても、効果付かない?」

「だいじょぶー」

「では、お願いします」

「わかったー」


キボウは、時送りではなく、乾燥魔法を使って乾かしてくれたらしい。


メリッサとシーミオは、出来上がったお菓子を袋に入れ、番重に詰め込んでくれていた。お陰で厨房が広々使えている。


キボウが時送りしてくれたので、固まった肉球マシュマロの余分な粉を刷毛で払うのを頼もうと思い、イポミアとイリスを呼んだ。


「うわー!なんですかこれ!」

「イポミアさんは見たことなかったわね。肉球マシュマロよ。マシュマロ自体は、ハロウィンのお化けマシュマロで知っているわよね?」

「はい。でも、色が」

「お化けマシュマロは、色を付けなかったからね。1つ食べてみて良いわよ」

「わーい、ありがとうございます!」


「少し見通しも立ったので、お昼ごはんにしようと思いますが、お忙しい方は、お昼ご飯の後、お帰りいただいても構いません」

「私は大丈夫なので、最後まで手伝いまーす」

「リラちゃんありがとう。他の方は、無理のない程度でお願いします」


ユリとリラはオムライスを作り、サラダや盛り付けをリラに任せ、ユリは出来たお菓子を持って、再度城に行った。白衣のままなのでソウを呼び、お菓子は運んで貰うことになった。


「ユリ、1人で大丈夫か?」

「なんと、戻ったらリラちゃんが待ち構えていたわ」

「え、なんで?」

「お城とお店とアルストロメリア会があるなら、高位貴族は城に集合すると思ったんですって」

「リラ、良い勘してるなぁ」

「先読みかと思っちゃったわ」

「あはは」

「その後に、みんな大集合でね、本当にありがたいわぁ」

「そうか。キボウも役立ってる?」

「とても役立っているわよ」


キボウはソウに頼まれて、手伝いに来たらしい。


「ソウ、悪いけど、私はこのまま戻るから、頼んだわね」

「了解」


ユリはお店に戻り、リラたちとオムライスを食べた。


「ユリ様、猫型ラムネはどうされますか?」

「乾燥で乾かしても行けるかしら」

「それなら、私も手伝えます!」

「食休みが終わったら、ラムネを作るわ」


昼休みはしっかり休み、午後からはラムネを量産だ。

誰1人帰らず、引き続き手伝ってくれるらしい。


「ユリ様、配合だと、たぶん900g、いや、950gくらい粉糖が足りないかもしれません」

「なら、多めにグラニュー糖用意してください」

「はい。ん?」


開始早々リラから、粉糖が足りないと報告された。

リラは、グラニュー糖をどうするんだろうと思いながらも用意した。


ユリは、ミキサーやミルミキサーを厨房に持ってきた。

グラニュー糖をミキサーに入れ、しばらく回し、裏漉し網などの細かい網で振るって、より分けた。


「粉糖って、作れるんですか!?」

「普段は買ってくるわよ。最後の方はミルミキサーが必要なのよ。量がミキサーの刃にかからなくなってくるからね。でも最初からミルミキサーだと、時間がかかって、機械が熱持っちゃうからね。あと、たまになら良いけど、お砂糖は固いから、刃には良くはないわよ」


粉糖をより分けるために振るっているので、室内に甘い砂糖の匂いがする。


「いいにおーい」

「お砂糖が舞っちゃっているわね」


キボウが、匂いに釣られて厨房へ来た。


「リラちゃん、おうちに帰ったら、必ずお風呂に入ってね」

「はーい。あはは」


こうして、18時を過ぎてもお菓子を作り続け、慌てて夕食を用意して振るまい、皆20時半過ぎまで作り続けてくれた。シーミオが途中で眠ってしまい、ユリが抱き上げて結界を抜け、休憩室に寝かせてきた。


ユメとソウは、21時少し前に戻ってきた。他のメンバーは先に帰したので、ユリとリラで厨房で片付けをした。皆のお陰で明日のお店分をしっかり確保できたのだった。

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