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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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把握

あれは9月の終わり頃、新婚旅行から戻ったカエンから、連絡があった。


◇ーーーーー◇ 

お兄様へ

11月23日(水)に、遊びに行きたいと考えております。

ご都合はいかがでございますでしょうか?

               ツキミ・G・カエン

◇ーーーーー◇


ソウの向こうの自宅に、手紙があったらしい。その時に、ユメとキボウにも、カエンが遊びに来ることを伝えた。



11月23日(Wの日(みずのひ))、朝からユメとキボウは城に行っていた。プラタナスとカンパニュラから招待を受けたのだ。


ユリとソウは、向こうの国にカエンを迎えに行った。そこには、深森と(よう)も居た。


「御姉様、お兄様、ご足労いただきまして、誠にありがとうございます。こちらの荷物をお願いいたします」


カエンは、ソウに荷物を預けていた。


(よう)と深森も来るのか?」

「ソウ様、ご一緒してもよろしいでしょうか?」


ソウは、ユリのほうを見た。


「カエンちゃん、深森さんの名前はどうなってるの?」

「ハジメ・深森・ツキミと、改名させていただきました」

「なら、一緒に来られるわね」


ユリが許可を出したので、深森が来られることになった。


「ユリ姉上様、僕も良いですか?」


(よう)が、確認してきた。


(よう)君は、(よう)君の都合が良くて、運ぶ人がいるときなら、いつでも来て良いのよ。実質私かソウが居ないと運ぶ人が居ないけど、早々断ることはないと思うわ」

「ありがとうございます」


そうして、ユリがカエンと深森を連れ、ソウが(よう)を連れ、転移した。


「カエンちゃん、今日はお仕事大丈夫なの?」

「御姉様、本日は、勤労感謝の日でございます」

「あ!祭日! すっかり忘れていたわぁ」


「忘れていたと言うことは、概念はあったんだ」


ソウが小声で呟き、カエンが吹き出した。


「ちょ、お兄様、何てことを」


「え?何? ソウが何か面白いことでも言ったの?」


ユリにはソウの呟きは聞こえなかった。ソウはさっさと話題を変えるらしい。


「で、カエン、何か用があるのか?」

「ユメちゃんとキボウ君にご挨拶に参りました」

「ユメとキボウに?」

「ユメちゃんとキボウ君、それぞれ別の理由ではございますが、用件は、ご挨拶でございます」


「ユメちゃんとキボウ君は、所用でお城に行っているのよ。急ぎなら、お城に行く?」

「いえ、お帰り迄お待ちしております」


昼ご飯には帰ってくる予定なので、それまで待っているらしい。


新婚のカエンたちの様子や、(よう)の普段の生活などを聞き、ユメとキボウが帰ってくるのを待っていた。


(よう)は、引き続きホシミ家にいるらしく、ホシミ夫妻が、このままここにいたら良いと言ってくれたと、嬉しそうに話していた。


「もうそろそろ帰ってくると思うから、ご飯を作りましょう」

「御姉様、お手伝いさせてくださいませ」

「ユリ姉上様、僕もお手伝いします!」

「ユリ、俺も何か手伝うよ」

「あ、あの、花野様、何か手伝わせてください」

「うふふ。皆さんありがとう」


ユリは、皆が手伝えるものをと考え、ピザを作ることにした。ピザ生地は、市販品をソウが買ってきてくれたものがあり、以前からキボウにリクエストされていたのだ。ソウの手伝いをしたときに、食べたらしい。


「ピザソースは作ってあるので、好きなものを好きなようにのせてください」

「ユメとキボウの分はどうするんだ?」

「基礎だけ作っておいて、戻ったら好きなものをのせて貰うわ」


そんな話をしていると、ユメとキボウが帰ってきた。


「ただいまにゃ」

「ただいま、ただいまー」

「ユメちゃん、キボウ君、お帰りなさい」

「ユメ、キボウ、おかえり」


ソウの後に、カエンが少し不思議な挨拶をした。


「ソウお兄様の妹、わたくしカエンの、弟の(よう)と、夫のハジメ・深森・ツキミを連れて参りました」

「ソウの妹と、弟と、夫にゃ?」

「はい」


カエンの挨拶とユメの反応を見て、ユリとソウは、昔カエンに言われたことを思い出した。

『ユメちゃん本人には言いませんでしたが、記憶がいきなり無くなる訳ではないようでございます』

『そうなの!?』

『少しずつ忘れていくようでございます』

『そうなんだ』

『最後まで覚えているのはユリ御姉様と、お兄様のことだけでして、わたくしは最後の頃には認識されないようでございます』


ユリとソウは、カエンのした挨拶の意味を悟った。全員が固まる中、深森が挨拶をはじめた。


「初めまして、ユメ様、キボウ様。(わたくし)は、カエンの夫の深森(はじめ)と申します」

「初めましてなのにゃ?」

「はい」


ユメがホッとするのが見えた。


「ゆっくりしていくと良いにゃ」

「どうもありがとうございます」


ユメが落ち着いたところで、カエンはキボウに何か渡しながら話しかけていた。


「キボウ君、お誕生を祝しまして、お祝いをお持ちいたしました」

「なーにー?」

「こちらでございます」


カエンが持ち込んだのは、和菓子の上生菓子だった。あんこなどを綺麗に細工した、見た目も素晴らしく、味も絶品の高級品だ。


「白インゲンではなく、希少な白小豆の白餡をふんだんに使用し、人間国宝の職人の手による逸品でございます」


キボウは、説明が難しかったのか、ユリに助けを求めてきた。


「なーにー?」

「カエンちゃんが、キボウ君のお誕生祝いに、物凄く美味しいお菓子を持ってきたそうよ」

「わかったー。カエン、ありがとー」


キボウはそれがお菓子だと理解し、喜んで受け取っていた。和菓子の知識がなければ、上生菓子は置物や何かの飾りに見えるのだろう。


「もちろん皆さんの分もございますので、お茶の時にお召し上がりくださいませ」


途中まで用意してあったピザを仕上げ、みんなで食べた後、秋の薔薇とコスモスが咲いている庭を見学に行き、庭園内のガゼボで休憩したところで、お茶にすることになった。


ユリもソウも、夏板や簡単な調理器具は持ち歩いているので、どこでもお茶には困らない。


期待の上生菓子は、キボウは個人的に受け取った分があるためか、ユメに先に選ばせていた。


ユメが選び、キボウが選び、ユリが選び、ソウが選び、残り3つは、カエンが(よう)と深森に配っていた。


なんとカエンは、茶器も持参してきており、抹茶(お薄茶)をいれてくれた。ソウが預かった荷物がそれだったらしい。


「甘味が無いのに、なんだか美味しいお茶にゃ」

「美味しい。お菓子にぴったりね」

「おいしー、おいしー」

「茶道は久しぶりだ。ははは」

「姉上のお茶はいつも美味しいです」

「みかちゃんのお茶はいつも美味しい」

「皆さん、ありがとうございます」


もちろん上生菓子もいただき、少し話した後、カエンたちは帰っていった。


本当に、ユメとキボウに挨拶に来たようだった。

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