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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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黒蜜

週末になり今日は葛切りの実習日だ。

知らない人がどのくらいいるかわからないけど、頑張ろう。


出来上がっている黒蜜と、小分けにした葛粉150gを10袋と500gを1袋、前回貰った割烹着を持って準備する。


いつもの時間にマーレイが迎えに来た。


「ユメちゃん、疲れてない?大丈夫?」

「大丈夫にゃ」

「そのままでも黒猫姿でもどちらでも良いのよ?」

「会った人が慌てるにゃ」


そう言って黒猫になったユメはクーファンに入った。


外で待っていたマーレイに荷物を持ってもらいクーファンのユメちゃんと馬車に乗り込んだ。



パープル侯爵邸は、今日もお出迎えが総勢だった。


「ようこそいらっしゃいませ、ユリ様!!」


2度目だけど、ちょっと驚く。


「お待ちしておりました、ユリ先生!」


うん、知らない人は2人だった。

よかった。いきなり総入れ換えじゃなくて。


「ユリ先生、紹介させてください。

こちらレッド公爵令嬢、フリージア様、

こちらブラウン侯爵夫人、チューリップ様です」

「フリージア・レッドです。ようやっと参加が叶いました。よろしくお願いいたします」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。あ、ユリ・ハナノです」


「チューリップ・ブラウンでございます。とても楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。ユリ・ハナノです」


アルストロメリア会専用厨房に移動し、持ってきた黒蜜を冬箱にしまい、説明を開始する。


「今回の材料の葛粉ですが、ソウに取り寄せて貰ったものなので非常に高価です。こちらはお配りしますが、追加購入の場合、これと同じ150gで4000☆だそうです。国内生産できるようになれば1000☆以下になると思います。150gで約6人分の葛切りができます」


「まずは葛粉を水につけます。この辺は見ていてください。持ち帰れないお菓子なので、食べきれないほどは作りません。

溶けたら裏漉しますが、先に黒蜜を作ります。


はい、皆さんもご一緒に、鍋に砕いた黒糖をいれ、分量の水を加えます」


「ユリ先生!大きな塊のままですが、大丈夫でしょうか?」


「水に浸かるそのくらいなら大丈夫です。しばらく置きます。


こちらも見ていてください。

ミカンの外皮を剥き、房の状態にします。別鍋に湯を沸かし、重曹を入れ、ミカンを入れ、重ならないように弱めの火力で静かに茹でます。

2~3分で少し皮が溶けてきたら丁寧に網ですくい、きれいな水にとります。優しくしっかり洗って手で皮を取り除きます。水を変えしっかり洗います。重曹の味が残ると苦いです。好みですが、この後、砂糖を加えた水で煮ても良いです。冬箱で冷やしておきます。


黒蜜に戻ります。ご一緒にお願いします。

黒糖が溶けたら鍋を火にかけます。焦がすと苦いので焦がさないように煮詰めます。

冷えるととろみが増すのでこのくらいで大丈夫です。できたらあら熱をとってから冬箱で保存します。


では、しっかり葛粉が溶けたので、裏漉します。葛粉は作る行程の関係で藁が混じる場合があるそうなので、必ず裏漉ししてください。


ここからは実習してもらいます。

葛粉の溶けた液ができたので、これを良く混ぜ14×14cmくらいの耐熱トレーに5mmほど入れ、湯に浮かべます。半透明になり固まってきたら、トング等でそのまま湯に沈め、取り出して冷水で良く冷やします。

食べやすい幅に切って、黒蜜を添えて出来上がりです。順番にどうぞ」


「では、私から」


ローズマリーが名乗り出た。

トレーに100mlレードル1杯分注ぎ、おっかなびっくり湯にトレーを浮かべた。

半透明になってきたのでトングで沈め、再び取り出し、冷水に、落とした!

少し水がはねたが、被害はなかった。


恐る恐る水に手を入れトレーを掴むと揚々と取り出し、トレーからはがし頑張って切っていた。

器に盛り付け完成した。


「完璧でしたね」

「おほほ」


次々と皆が挑戦し、余った分は、調理補助に来ていた料理長に譲った。

私が作った黒蜜も冷えたら使って。と言っておいた。


「先程のミカンをかざり、黒蜜をかけるかつけるかしてお召し上がりください」


お茶のテーブルへは運んでもらえるらしい。


「作った黒蜜はまだ冷えていないので、こちらの持ってきた黒蜜で食べましょう。お好みで きな粉を使ってください」


紅茶ではないお茶が出された。

なんだろう?と少し飲んでみたら、温かい麦茶だった。

高そうなティーカップに麦茶って斬新。


「ユリ先生がおっしゃる『和菓子』ですので合うお茶を用意させましたのよ」

「なるほど!」


試食は大変好評で、全員がもう少し食べたかったらしい。


次回の予定を決めようとしたら少女姿のユメが歩いてきた。


「ユメちゃん、どうしたの?」


「ユメちゃん???」


ローズマリーがつぶやき、不思議そうにこちらを見る。


「葛切り食べたかったにゃ」

「あーごめん。おうちに帰ったら作るので良い?」

「わかったにゃ」


「あのー、ユリ先生、そちらのお嬢様は、いついらしたのでしょうか?」

「あ、この子はユメちゃんです」

「ユメ様と同じお名前なのですね」

「そうじゃなくて、黒猫のユメちゃんです」

「え???」


ユメが変身して黒猫になる。


「ええええ!!!」


ローズマリーが気絶した。


「お母様!お母様!・・・サリーお父様を!」

「かしこまりました」


ラベンダーに言われ、サリーがさっといなくなった。

ラベンダーとマーガレットがローズマリーに寄り添う。


パープル侯爵と執事が慌てた様子でサリーと一緒に来た。


「ローズマリー!? 大丈夫か? ローズマリー!」

「は!わたくしは?  い、今、ユメ様が、女の子が、ユメ様に!」

「なんのことだ?」


「パープル侯爵、すみません。ユメちゃんが少し驚かせてしまったみたいです」

「そうなのか?」


パープル侯爵はラベンダーとマーガレットを見てたずねた。


「ええ、まあ・・・」


ラベンダーは少し言いにくそうに答えていた。


「ユリ・ハナノ様、ローズマリーは少し休ませます」

「あ、はい」

「ラベンダー、会をしきりなさい」

「は、はい。僭越ながら私が進行をさせていただきます」

「はい、お願いします」


ユリが同意したため特に不満もでなかった。


次回は予想通り、クレームブリュレ希望だった。


◇ーーーーー◇

生クリーム

卵黄

牛乳

グラニュー糖

バニラビーンズ(または、バニラエッセンス)

洋梨のシロップ煮

ウィリアムズ(酒)


ボール

漉し網

ホイッパー

焼きを入れても良い要らないスプーン

金属製のばんじゅうか、切り目のない一枚加工の鉄板


ココット型(持ち込みます)

◇ーーーーー◇


「ラベンダーさん、お騒がせしてごめんなさい」

「いえいえ、母に柔軟性が足りなかっただけです。ふふふ、次回、はずされる予定でしたが、これで次回も参加できます」

「それは何よりで、ふふ」


お主も悪よのう。って感じのが脳内で再生された。


ローズマリーが抜けてしまったので、食事をせず帰ることになった。


「そういえば、料理長を集めての話はどうなりました?」

「ユリ先生さえ良ろしければ、アルストロメリア会の後はいかがでしょうか?」

「それは行き来がなくて楽ですね。そうしましょう」

「決定ではありませんが、次回からでよろしいですか?」

「構いませんが、何作るんでしょう?」

「初回はグラタンだと思います。ふふ」

「あー、まだ作ってるんですね・・・」

「ええ、そろそろ飽きてきました。ふふふ」

「では、そのつもりでいますね」

「お願いいたします」


◇ーーーーー◇

バター

小麦粉

牛乳

胡椒


パスタor炭水化物

玉ねぎ

中身の具(コーン、鶏肉、青物など)


粉チーズ(パルメザンチーズ)

もしくは、溶けるナチュラルチーズ


お好みでパン粉


グラタン皿

◇ーーーーー◇


「こんな感じでお願いします」

「まあ!ありがとうございます」

「お嬢様たちは参加しませんよね」

「はい」

「では、スパルタで」

「はい。ふふふ」


解散し、帰ることになった。

人形(ひとがた)のユメは、マーレイも驚いたようだったが、何事もなくやり過ごすスキルはすごいと思う。

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