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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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配布

「さあ、お昼ごはんを食べましょう。どこにする?」


活け締めした鮭も片付けてあり、移動するだけになっていた。ビニール袋に入れて、ソウの鞄に入れたらしい。良く聞くと、キボウが背負うリュックサックにも入っているそうだ。


「私は濡れていないけどにゃ、少し温かい場所が良いにゃ」

「なら、温室植物園にでも行くか。あそこならテーブルもあるし」

「そこにしましょう」


温室に到着し、少し植物を見学した。

キボウとリラが大喜びだ。ユメも物珍しそうに見学している。


「うわー! 熱帯スイレンが咲いているわ!」


2月頃に来たときは、花がなく残念に思っていたのだ。


「ものすごく鮮やかなお花ですね」

「さかなー、さかなー」


スイレンの下には、メダカのような小魚が泳いでいた。


「この魚は何かしら?」

「これは、グッピーじゃないか? メダカよりヒレが大きくてカラフルだろ?」

「本当だわ。リオのカーニバルみたいな魚ね」

「なんですか?」

「今度画像を見せて説明するわ」

「はーい」


「さあ、お弁当を食べましょう。好きなのを取ってね」


お弁当を広げると、リラは中身も聞かずにおにぎりを選択した。


「リラ、中身を確認しなくて良いのにゃ?」

「新生姜の佃煮ですよね? ユリ様の作った新生姜の佃煮は久しぶりです」


少し見えていたらしい。


「お店でも作ってるの?」

「はい。必ず誰かに頼まれます。場合によっては、新生姜持参で来ます。今年もそろそろ来るかも」


赤紫蘇で作ったゆかりふりかけは、どの様な状態で提供しているか等を聞きながらお弁当を食べていた。


「ホシミ様、後で、魚の血抜きとか教えて貰えますか?」

「良いぞ。そうか、この国に血抜き出来るのが居ないのか」

「群青領の方は出来るのかもしれませんが、教わる機会がありませんでした」

「そりゃそうだな。血抜きしていない魚を持ってきて教えるわけにもいかないもんな」


「リラちゃん、お魚は、さばいた後は使うまで預かるわね」

「お、それなら鮮度も落ちないな」

「あと、これは注意だけど、鮭は、生食できないからね。お寿司に使う鮭は種類が違うのよ」

「そうなんですか!? 教えてくださりありがとうございます。ちょっと食べてみようかと考えていました」

「どうしても食べてみたいなら、確実に48時間冷凍してから解凍したものを薄切りにしたなら、食べても良いわよ」

「1度凍らせると食べられるようになるんですか?」

「んー、後でさばく時説明するわ」

「はーい」


ユリは、ユメやキボウがまだ食べているので、寄生虫の話を遠慮した。


「キボウが食べ終わったら、帰るぞ」

「だいじょぶ、だいじょぶ」


キボウとしては、難しい話をしているから、むしろ、暇で食べていたらしい。


空のお弁当箱を片付け、全員で店に戻ってきた。


「ユリ様、さばき方、昔習いましたが、もう一度教えてください」

「そうよね。6年も前では、忘れちゃうわよね」


ユリが準備している間、リラはソウから血抜きと絞め方を習っているようだった。


「ユリ、手伝うこと有るにゃ?」

「いくら用の瓶の消毒に、シリコンシートを敷いた鍋でお湯を沸かして、15瓶を軽く煮てもらえる? 後は、固茹で玉子をお願いします。無理そうなら、ソウに頼むわ」

「重くないものなら大丈夫にゃ。任せるのにゃ!」

「まかせる、まかせる!」


ユリはキッチンバサミを持ってきて、リラに腹の開き方から教えるのだった。


「魚のプロの人なら、包丁で腹も開くんだと思うけど、失敗したくないから、ハサミで開きます」

「ユリ様、安全な方法の方が、望ましいです」


大きめの雌2匹以外の鮭の腹を開け、中身を取り出した。


「魚の内蔵は、食べられるところもあるんだけど、お店では使えないので、卵以外処分します」

「ユリ様、この顔の怖いのは雄ですよね? 何か、白っぽいのが入ってます」

「それは、白子です。新鮮なものは、茹でてポン酢で食べると、美味しいわよ。でも、魚に慣れていない人には、生臭くて無理かもしれないわ」

「なら、私だけで食べてみます」


イリスやマーレイや弟子たちには出さないようで、少し安心した。


鮭を半身状態にし、一旦鞄にしまった。次は、ボールに集めておいた筋子(すじこ)をイクラにする作業だ。


「50℃のお湯に入れて、膜を外していきます」


ユリとリラでイクラを処理し、量ってみると約5.4kg有った。予定より軽めだが、9瓶作っても充分余りそうだ。


調味料を足し、ユメが煮沸消毒してくれた瓶に注ぎ込んだ。

500ml瓶に、13瓶出来た。


「リラちゃん、2瓶で良い?」

「瓶2本分もいただけるんですか!?」


「ユリー、キボー、てつだう?」

「キボウ君、なあに?」

「ときおくりー!」

「あー。いくらの醤油漬けを時送りするのね」


キボウに冬箱に入れての時送りを頼み、ユリとリラは、フライの用意を始めた。


「ユリ、何か手伝うこと有るにゃ?」

「酢飯用炊飯のほか、茹で玉子とピクルスと玉葱をみじん切りにして、マヨネーズと混ぜます。どれかお願いします」

「ご飯炊いて、茹で玉子とピクルス切るにゃ!」

「俺がマヨネーズの計量と玉葱切るよ」


雄の鮭2匹を使い、40切れに衣がつき、ユリが揚げている間に、リラがマヨネーズを作り、タルタルソースを完成させた。


「頭やカマが要らないか聞きたいから、私が生鮭を希望した人を担当するわ」

「なら、私が残りを配るにゃ」


カナデ・サエキ 生鮭2切れ

リツ・イトウ 生鮭半身、

マコト・コバヤシ 生鮭半身、

イチロウ・モリ 生鮭1匹、

ヒサシ・ハナダ 生鮭1匹、


ジン・ハヤシ

ダイゴ・サカキバラ

ススム・タケシタ

カイト・サトウ

タイキ・マツモト

この5名は、いくら醤油漬け、酢飯、鮭フライ、タルタルソースだ。


なぜかソウが慌てていたが、ユメに何か言われ、ユリと一緒に行くと言っていた。


「では、私が厨房を片付けておきますので、行ってらっしゃいませ」

「戻ったら、一緒に夕飯食べましょうね」

「はい」


ユリは、カナデ・サエキに、頼まれたものの他、フライなどは2人前渡した。


「奥さんと仲良く食べてね」

「ハナノさん、ありがとうございます」



マコト・コバヤシのところは営業時間内で、来店客に見つかってしまい、鮭フライを見られてしまった。


「は、ハナノ様!! それは、もしや、伝説の、鮭フライ!?」

「今週のEの日(だいちのひ)からMの日(つきのひ)の3日間に、ベルフルールで売る予定ですよ。そちらでお召し上がりくださいね」

「は、はい!!」


「あはは」

「コバヤシさん、営業妨害になっちゃって、ごめんなさい」

「いえいえ、もし誘導がなかったら、これ、取られるところでした」



イチロウ・モリは、川魚料理もしているはずだ。


「モリさん、鮭のアラとか要りませんか?」

「何があるんですか?」

「頼まれたものの他、頭とかカマとか18匹分くらい有ります」

「14個くらいカマください」


ユリは、ビニールに分けてあったカマを取り出した。

渡されたボールに入れ、頼まれたものと一緒に引き渡した。


「ありがとうございます。もしよろしければ、今度お食事にいらしてください」



「次は王都に、」

「ソウ、イトウさんを飛ばしてるわ」

「リツのところも行かないとダメか?」

「ソウは、近くに居たら良いわよ」


そうじゃない、そういう事じゃないんだよなと、ブツブツ言いながら、ソウが転移してくれた。


「おーい、リツ」

「ソウ君、やっと来てくれたんだ!」


リツ・イトウが、ニコニコで出てきた。


「うふふふふ。イトウさん、頼まれたものを届けに来ましたよ。それでね、生鮭を希望した人に、アラは要らないか聞いているんだけど、どうかしら?」

「何がありますか?」

「頭とカマがあります」

「でしたら、頭1つと、カマ1つください。器持ってきます」


ステンレスのボールをもってきた。


「頼まれたものと、頭とカマ、確かに渡しました」

「ハナノさん、ありがとうございます」


「次があるから、じゃあな」

「ソウ君、今度はゆっくり来ても良いんだよ」

「うふふふふふ」

「気が向いたらな」



最後に、王都のヒサシ・ハナダの串焼き屋に来た。


「ハナダさん、頼まれたものを届けに来ました。ついでに、アラ要りませんか?」

「わざわざありがとうございます。アラって、何があるんですか?」

「えーと、カマが20個と頭が19個かな?」

「ハナノさんが要らないなら、全部引き取りますよ。頭も汁物の出汁に使ったりするからありがたいよ」

「助かりました。うち、基本が洋食で、今は軽食とお菓子しか出していないもので、どうしようかと」

「そりゃ、使い道無いねぇ」

「これ、頼まれた自家製ポン酢です」

「おお、ありがとう。柚子っぽいものと昆布っぽいものは手に入れたんだけど、見本に欲しかったんだよ」

「それではまたー」

「はい。ありがとうございます」



「ソウ、パープル邸の厨房の場所わかる?」

「わかるよ。俺の部屋に転移して待っててくれる?」

「はーい」


ユリが先に転移し、後から転移してきたソウに、厨房まで案内してもらい、鮭を5匹分引き渡し、さっさと帰ってきた。


店に戻り、リラをいれた5人で、美味しく鮭フライのタルタルソース添えと、いくらの醤油漬けを、酢飯にのせていただいた。


皆、大絶賛だった。

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