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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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生姜

朝の掃除が終わったあと、ユリは厨房を片付けていた。


「おすしー、しろー、なにー?」

「なあに、キボウ君」

「ユリ、キボウがさっきから何言ってるかわからないにゃ」


どうやら、ユメに言っても伝わらずに、ユリに言いに来たらしい。


「お寿司に入っていた白いもの?」

「それー」

「んー、ご飯じゃないわよね。烏賊(いか)?」  

「それは私も聞いたにゃ。違うらしいにゃ」


ユメは、ソウに借りているタブレットで、寿司の画像を出し、聞いてみたけど、ダメだったらしい。


「んー、もしかして、ガリ? 甘くて辛くてしゃきしゃきしてた?」

「あたりー!」

「ガリがどうしたの?」

「たべるー」

「ガリを食べたいの?」

「おいしー!」

「じゃあ、作りましょう」

「あれ、作れるのにゃ!?」


昨日食べた寿司のガリを気に入ったらしい。


「お手伝いしてね」

「わかったー!」

「私も手伝うにゃ」


ユリは畑に行き、生姜(しょうが)を1株抜いてきた。


「これは新生姜です。葉を落とし、良く洗って、切り分けます」


ハウスものは初夏から出回るが、露地物の新生姜は、9月頃から出回る。畑に植えた生姜は、まさに今が旬なのだ。

ユリが葉を切り落とすと、ユメとキボウが、洗ってくれた。


「汚れの他に、枯れた茎の残りも綺麗に取り除きます。爪やスプーンなどで掻くようにすると取りやすいですよ」

「洗ったにゃ!」「あらった、あらったー!」

「綺麗に洗えたら、しっかり水気を拭き取り、繊維にそって、包丁で薄切りにするか、スライサーで薄切りにします。薄切りは私がしましょう。ユメちゃんとキボウ君は、甘酢を量ってください」


ユリがスライサーで生姜の薄切りを作る間に、甘酢の計量を頼んだ。


「量ったにゃ。他にすること有るにゃ?」

「お湯を沸かしておいてください」

「わかったにゃ」


お湯が沸く頃、ユリのスライスも終わった。


「沸いたお湯に、スライスした新生姜を入れ、少し茹でます。ごく薄切りなら1~2分、少し厚切りなら3~5分くらいかしらね」


これはスライサーでスライスしたごく薄切りなので、2分ほど茹でた。ザルに取り、水気を切り、軽く塩を振った。


「お塩を振ったら少し置いて、しっかり絞って水気を切ります」


ユリが生姜を絞ると、面白がって、ユメとキボウも手伝ってくれた。結構しっかり絞る必要がある。


「絞った生姜は、瓶に入れます。そこに、量ってもらった甘酢を入れて、軽く(ほぐ)して明日まで待てば出来上がりです」

「凄いにゃ!」「できたー、できたー!」

「生姜の切り落とした赤いところを入れると、うっすらピンクになる筈なんだけど、なぜかいつもならないから、ほんの少し、赤梅酢を加えて色付けしても綺麗です。生姜の色のままでも美味しそうだけどね」


珍しく、時送りをしないで、明日まで待つらしい。


生姜を茹でたお湯を、捨てずに火にかけ始めた。


「ユリ、それはどうするのにゃ?」

「うふふ、あるものを作ります」


鷹の爪(たかのつめ)(とうがらし)とシナモンスティックとローリエと粒黒胡椒を少量加え、1/3くらいになるまで煮詰めていく。


「なんか、顔がピリピリするにゃ」

「ピリピリ、ピリピリ!」

「あー、顔洗った方が良いわよ。そばで見てると全身生姜臭くなるわ」


ソウが階段を下りてきた。


「何やってるの? 上まで凄い匂いするけど、生姜?」

「ガリを作ったから、茹で汁を煮詰めているわ」

「あー、成る程」


それ以上聞かないソウを不思議に思ったらしい。


「ソウは、何が出来るのかわかるのにゃ?」

「ユメとキボウも知っているものが出来るぞ?」


話しているうちに煮詰まり、網で濾してから、三温糖を混ぜ良く溶かした。


「冷えたら、炭酸で割って飲むと良いわよ」

「もしかして、ジンジャーエールにゃ?」

「正解」


三温糖を使ったことでわかったらしい。三温糖は、ジンジャーエールにしか使っていないからだ。


「ユリ、新生姜があるなら、佃煮も作ってよ」

「良いわよ。切るの手伝ってね」


ユメとキボウが、畑から新生姜を抜いてきた。


「下処理は、同じよ」


しっかり洗ったあと、今度は厚切りのスライサーでスライスし、包丁で細切りにした。もちろん最初から包丁で細切りにしても、好きな方で良い。


細切りになった新生姜を、10~15分くらいしっかり茹でる。時期を逃しひねに近い生姜の時は、もう少し長く茹でると良い。

茹で終わったらザルに上げ、水気を切り、別の鍋に入れて調味料を加えて火にかける。


結構水分が出てくるので、根気よく強すぎない火で鍋を混ぜ続ける。


出来上がったら皿に取り、白(いり)胡麻をふりかけ、出来上がり。


「調味料入れた後の煮詰めるのが大変なのか」

「いつまでも水分が出るのよね。でも強火だと焦げるし」


「さっそく食べよう!」

「急いでご飯を作りましょう。午後からは、栗剥き隊が来るからね」

「今年も来るんだ」


以前も、たくさん手伝いに来てもらった。


「もちろん、リラちゃんも来るらしいわ」

「リラは、いつが休みなんだ?」

「本来は、水土らしいけど、うち手伝っているし、ちゃんと休んでいるのかはちょっと謎ね」

「ユリが店とかアルストロメリア会とかの時手伝うだけなら、ユリよりは休めてるんじゃないか?」

「私もそう思っていたんだけど、シィスルちゃんやマリーゴールドちゃんに聞くと、なんだかんだお店に居て、仕事しているらしいのよね。だから、ここに来ている方が、むしろ休めていると思いますって言われちゃったわ」

「ははは。なら、秋鮭でも褒美にやるか」

「それは良いわね。欲しがっていたものね」


キボウは厨房をフラフラしていたのに、ユリとソウの話が聞こえていたらしい。


「しゃけ?」

「キボウ君、ソウが、鮭捕まえてきてくれるって」


すぐさまソウに駆け寄っていった。


「いつー、いつー?」

「リラに予定を聞いてからな」

「リラ、きく?」


このままだとリラを召喚しかねないので、ユリが声をかけた。


「とりあえず、ご飯食べましょう」


炊き立てご飯に新生姜の佃煮を出すと、皆大喜びで食べた。


「ピリッと辛いのに、甘くて美味しいにゃ!」

「去年(6年前)もそう言っていたな」

「おいしー、おいしー!」

「キボウも気に入ったか。新生姜の佃煮、本当に旨いよな」

「みんなが喜んでくれると、作った甲斐が有るわぁ」


ガリは今日はまだ食べられないが、新生姜の佃煮を食べて、特にキボウが喜んでいた。ユリは小さなおにぎりを作り、キボウに渡した。


「キボウ君、新生姜の佃煮を入れたおにぎりよ。リュックサックに入れておけば、いつでも食べられるわよ」

「ユリ! ありがとー!」


予想はしていたが、やはりリビングから転移で消えた。


「世界樹の森に行ったんだろうな」

「世界樹様のところにゃ」

「そうかもしれないわね」


後片付けをしていると、リラが呼ぶ声が聞こえた。


「ユリ様ー!」


栗剥き隊が来たのだろう。

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