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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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和装

朝ご飯のあと、ユリとソウは月見家の屋敷に急いだ。

今日は9月10日(土)カエンの結婚式だ。


ソウは洋装だが、ユリは黒留め袖を着るので、着付けを見て貰う約束だからだ。1人でも着られるが、やはりプロの目から見て、着せて貰った方が、美しく仕上がる。


到着すると、ユリは屋敷の美容部隊に連れていかれた。

あぁ、なんだか、どこかでも同じような状況にと考え、城やパープル侯爵邸で正装に着替えるときと同じなのか。と、1人納得し、されるがままにマッサージを受け、髪を仮で結い上げられた。


「ユリさん、好みやご希望はございますか?」

「あ、この(かんざし)、あちらの国の(初代)女王陛下から頂いたの。フォーマル用ではないんだけど、使えないかしら?」


ユリは、ユメから貰った、夢の瞳の石がついた(かんざし)を鞄から取り出し、差し出した。


「あら、見たことの無い宝石がついているわ。何の石ですか?」

「『夢の瞳』という名前の宝石です」

「あら、本当に知らない石だった!」


貰ったときは、サファイアがついていたのだが、後日ユメが石を取り替えてきたのだ。石の加工が間に合わなかったと言っていた。


「それは、絶対に取り入れたいですね。何とかします!」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


後れ毛ひとつ無く、丁寧に美しく髪をセットして貰った。勿論上手に夢の瞳の簪も使われている。


ささっと、黒留袖を着付けられ、ビシッと美しく整った。正絹(しょうけん)羽二重(はぶたえ)は1人で着ると30分くらいかかるが、15分もしないうちに出来上がった。


「どうもありがとうございました」


ソウが待っているはずの部屋に案内され、中へ通された。

洋装と聞いていたが、ソウは和装をしていた。ホシミ夫妻も居て、やはりご夫婦とも和装なのだ。


「ご無沙汰しております」

「ユリちゃん、黒留袖も似合うわね」

「若いのに、着物に着られた感がないのはさすがだな」


ホシミ夫妻がユリを褒める。


「ありがとうございます。今日は、全員和装なのですか?」

「そうよ。本家の式だからね」


ソウは着物に着られた感がある。慣れないからか、本人も落ち着かないらしい。


「失礼します」


誰が来たのかと思ったら、(よう)だった。


「ソウ兄上、ユリ姉上様、ホシミのおじ様、ホシミのおば様、ご一緒させていただけますか?」

「俺は構わないぞ」


ソウが一番最初に了承した。


「勿論だ。(よう)君、ここに居たら良い」


ソウの養父、司が言った。


(よう)君、大きくなったわね。一緒に待っていましょう」


ソウの養母、遥が言った。


「大歓迎です。カエンちゃんの結婚式、楽しみね」


ユリも了承すると、(よう)はホッとした顔をした。(よう)の両親である蕪木(かぶらぎ)夫妻は、未だに息子をタキビと呼び続けている上に、魔法の国の女王陛下(ユリ)に働いた無礼で、本家への出入りを制限されている。さすがに今日は出席するが、本家跡継ぎの婚姻のため、蕪木夫妻よりも、姉弟である(よう)の方が立場が上になり、(よう)は一番近しい親族席に座ることになる。ユリは、ソウの伴侶(はんりょ)という立場で出席なので、やはり一番近しい親族席に座ることになる。


ソウから、不意にスナップ写真を撮られても顔がはっきり写らないようにと、軽い結界をかけられた。本人が認識したもの以外、光の屈折で、姿がはっきり写らなくなるらしい。学生時代に編み出したそうだ。


係の人が呼びに来て、神前式のような様相の結婚式が始まった。親兄弟が一番近い場所なので、最前列にツキミ夫妻、ソウ、ユリ、(よう)、ホシミ夫妻が並び、中央より反対側に、新郎の親兄弟と思われる家族が並んでいた。


ユリたちの後ろには、ユリが会ったことの無い、本家親族と呼ばれている人たちが続いている。蕪木夫妻は、ユリから見えないほど後ろにいるらしい。


白無垢に綿帽子のような被り物をしたカエンたちは立っているが、参加者は椅子に座って、見守っている。


大きさの違う、三段に重なった朱色の(さかずき)が登場した。

巫女(みこ)のような女性が御神酒(おみき)を、上に重なっていた一番小さな盃に注ぎ、新郎、新婦、新郎の順で口をつけた。次の盃は、新婦、新郎、新婦の順で口をつけ、最後の大きな盃は、新郎、新婦、新郎の順で口をつけ、かなり本格的な三三九度(さんさんくど)だなぁと思いながら、ユリは見ていた。


祝詞のようなものを読み上げたあと、誓いの言葉を新郎のフカモリが読み上げ、結婚式はお開きになった。この後は、衣装替えをして、披露宴だ。


新郎新婦が退席したあと、参加者が披露宴会場に移動する。

敷地内ではあるが、あまりに広いため、ユリは迷子にならないように、しっかりソウと手を繋いで歩いた。


披露宴会場に入ってユリは驚いた。何か、見知った有名人だらけなのだ。少し呆気に取られながらソウについて行き、主役席から一番遠い、親族席に座った。このテーブルは、ツキミ夫妻、ソウ、ユリ、(よう)、ホシミ夫妻の7人だけだ。


どこかの会社概要で写真を見たことがある、大会社の社長や会長や、政治家がたくさんいる。テレビでしか見たことがない歌手や俳優が多数いる。


「凄い参加者ね」

「まあ、カエンだからな」

「あ、あれ、ソウビさん?」


ユリがソウの元上司を発見すると、ソウが慌てて確認した。


「うわ、本当だ。俺、聞いてない」

「職務上の案件なのかしら?」

「ちょっと挨拶してくるよ」

「はーい、行ってらっしゃい」


ソウを見送った後、ユリは(よう)と話していた。


(よう)君、調子はどう?」

「転移は思ったように使えるようになりました。結界は、強さを変えるというのが、良くわかりません」

「単に強さを変えるだけなら、込める魔力の量だけど、金色の増幅結界は、ソウも、カエンちゃんも出来ないらしいから、もし出来たら凄いわよ?」

「カエン姉上も、ソウ兄上も出来ないのですか?」

「そう聞いているわ」

「なら、なおさら頑張ろうと思います」

「応援しているわね」


ソウが戻ってきた。


「何か、spの統括として参加しているらしいよ」

「確かに、要人ばかりよね」

「まあ、一番の要人は、ユリだけどな」


言われてみれば、そうなのかもしれない。ユリは改めることにした。


「増幅しない程度に、結界を張っておくことにします」

「ユリ姉上様、結界張っていなかったんですか!?」


(よう)にまで、驚かれてしまった。


「ソウ、ユリちゃん、(よう)君、披露宴の後の予定はあるかい?」

「夕飯までには帰るけど、予定はないよ」

「同じです」

「僕も予定はありません」


ホシミ夫妻が、にこやかに話し始めた。


「提案なんだけど、(よう)君、カエン様が戻られるまで、うちに来ないか?」

「え?」

本家(ここ)にいても、面倒が多いだろう?」

「そうよ。うちに泊まりに来てちょうだいね」

「お、それが良いぞ(よう)

「私もおすすめします」


ユリにまですすめられて、(よう)は悩んだ。カエンは本日夕方から新婚旅行に行く予定なのだ。転移の出来る(よう)なら通学に困らないので、どこに泊まっても問題ない。


「ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」

「そんなに固くならなくて大丈夫よ」

「自分の家のつもりでゆっくりすると良い」


ホシミ夫妻が(よう)を歓迎した。


「カエンがいない間も、これで安心だ」

(つかさ)さん、(はるか)さん、(よう)君をお願いします」


ツキミ夫妻が、ホシミ夫妻に頭を下げていた。

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