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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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菊花

「あとは絞り出しクッキーね」


ユリは手早く絞り出しクッキーを仕込んだ。計量はリラが済ませてくれていたので、あっという間に生地を作り、天板を持ってきた。


絞り袋に星口金を付け、ローズバッドを少し潰したように絞り、中心に、出来たばかりの菊花ジャムをのせた。


「これを焼けば、ジャムの表面も乾いて扱いやすくなるわ」

「はい、クッキー絞ります!」

「ジャムのせるにゃ!」

「2人とも、お願いします」


マーレイと共にアイスクリームを作り続けていたソウが、覗きに来た。


「紫の菊、ジャムになると発色が綺麗だな」

「赤紫と言うか、綺麗な色よね」

「これ、黄色い菊だと、どうなるの?」

「作ったことはないけど、鮮やかな黄色になると思うわよ? 興味があるなら、作ってみる?」

「実は、少しだけ黄色い菊も持ってるんだ」


ソウは、小さめのパッケージに入った黄色い菊を取り出した。


「うふふ。実験で作るには、ちょうど良い量ね」

「キボー、てつだう!」

「花弁を毟ってくれるの? キボウ君、お願いします」

「わかったー」


ユリが手早く酢水を作ると、ペクチンなどを量っている間に、キボウは洗うところまで終らせてくれた。


ユリは手早く黄色い菊のジャムを作り、あら熱を取った。


「ユメちゃん、この黄色い菊のジャムは、従業員用のクッキーとして一緒に作ってくれる?」

「わかったにゃ!」


ユリはリラとクッキーを交代し、リラは店からの注文で、チョコソースをかけに行くのだった。


「ユリ様、今日はお昼ご飯どうしますか?」

「リラちゃん、先入る? あとにする?」

「どちらでも構わないのですが、ユリ様もどちらでも良いのでしたら、先に入ります」

「では、リラちゃん、マーレイさん、イリスさん、先に休憩に入るつもりでいてください」

「はーい」「かしこまりました」


「あとの組が、ユリ様とホシミ様と、メリ姉とミア姉ですか?」

「えーとね、私と一緒は、メリッサさんです。イポミアさんは、イリスさんとメリッサさんに30分ずつ重なる感じで、一人で休憩に入るそうです」


30分間お店に一人になるか、休憩を一人になるかで、配膳の3人で選んだらしい。先月メリッサから言われたのだ。


「成る程!これならお母さんだけ一人で1時間がなくなるんですね!」

「そうなのよ。イリスさんばかり大変なのは、おかしいわよね」

「では、もう少ししたら休憩入ります」


リラは、やりかけの仕事を終らせて、片付けに入った。


「ユリ、私とキボウは、何時から休憩に入れば良いにゃ?」

「誰かに合わせるなら、11:30、12:00、12:30のどれかで、合わせないなら、好きな時間からで良いわよ」


ユメは少し考えているようだった。


「ユリ、アイスは明後日の見込み分まで作ったけど、午後は何するの?」

「この、絞り出しクッキーを量産します。あと、ミルクコーヒーゼリーね」

「なら黄色い菊、もう少し用意する?」

「2色の方が良いかしら?」

「どういう風に売るの?」

「何個かセットで、袋に入れて売るつもりでいるわ」

「袋に1つくらい黄色いのがあったら、面白いんじゃないか?」

「成る程ね。そうしましょう」


ソウは菊を買いに行った。


「ユリ、黄色い菊のクッキーも同じ色にゃ?」

「そのつもりだけど」

「クッキーの色を変えたりしないのにゃ?」

「変えても良いわよ。そもそも予定になかったから、なにも決まっていないからね」


昼ご飯を用意していたリラが、ユリとユメの話を聞きながら、尋ねてきた。


「あの、ユリ様、黄色い菊のクッキーの生地を変えるなら、赤っぽい色が良いと思います。うっすら赤っぽいところに黄色いジャムが映えると思います」

「リラちゃんが言うなら、そうしましょう」

「良いんですか?」

「色彩感覚とか、デザインは、あなたが一番優秀だもの」

「ありがとうございます!」


リラは、ユリに褒められて喜んでいた。


「ユリ、(なに)で色を変えるのにゃ?」

「赤で価格にひびかないのが良いわね。ローゼル粉末を混ぜて作りましょうか」


苺粉末で赤くなるほど加えるとクッキーが苺味になり、かなり高価になってしまう。菊のジャムは香りは強いが、味が明確にあるわけではないので、菊の風味を損なわない色付けが良いとユリは考えた。


「ユリ様、どのくらい加えますか?」

「真っ赤にしたい訳じゃないからね。粉の2~3%くらいかしらね」

「休憩終ったら、量りますね」

「ありがとう。お願いします」


イリスが来て、リラたちは休憩に入った。


「ユリ様、アイスクリームがチョコソースの注文なんですが、私が行っても良いですか?」

「お願いします。あ、先にこっちで練習する?」

「はい。ちょっと練習します」


メリッサが確認に来た。リラが休憩に入ったので、代わりに行ってくれるらしい。

メリッサは、少しだけ練習すると自信がついたらしく、ソースの容器を持って店に行った。


「あ、リラちゃん、マーレイさん、イリスさん。アイスクリームのどれかか、水玉サイダーか、サファイアクリームソーダゼリーの中から選んでおやつにどうぞ」

「ありがとうございます!水玉サイダーいただきます!」

「ありがとうございます。私も水玉サイダーをいただきます」

「ありがとうございます。チョコソースをかけてみたいので、アイスクリームをいただきます」


リラとイリスは水玉サイダーで、リラが手早く作っていた。マーレイはアイスクリーム希望らしい。なんと、渦巻きではなく、楕円形が中心に戻ってくる花弁のように、細くチョコソースをかけていた。


「お父さん、お花みたいでそれ綺麗ね!」


リラが褒めているので、ユリも覗きに行き、器用さに感心した。


「うわ、菊みたいな花になってる。器用ですねぇ」

「マーレイ器用にゃ」

「すごーい、すごーい」


ユメとキボウも感心していて、マーレイはニコニコしてお礼を言っていた。


「ただいまー。菊買ってきたよ」


ソウが、黄色い菊を買って戻ってきた。今度は袋入りのタイプで、たっぷり入っている。


「手伝うにゃ!」

「てつだう、てつだうー!」

「ユメちゃん、キボウ君、お願いします」


菊の下処理をユメとキボウに任せ、ユリは計量を始めた。


そっと近づいてきたリラが、おずおずと確認してきた。


「ユリ様、本は、取りに行っても良いですか?」

「階段上がれるままなら、そのまま行けば良いわ。無理ならソウに頼むわよ」

「階段が見えているので、たぶん通れると思います」

「なら、どうぞ」

「えっと、1人で入ってもよろしいのですか?」

「構わないけど、あなたが気になるなら、」

「私がついていくにゃ」


ユメが気を遣って、名乗り出てくれた。


「ユメちゃんお願いします」


ユメが行ってしまうと、キボウは呪文を唱えていた。すると、キボウの指示通り、菊から花弁が外れ、(がく)と花弁に分かれて違うボールに収まっていく。


「いつもながら、キボウ君凄いわね!」


こどもの日に、(ちまき)を魔法だけで作っていたのを思い出す。

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