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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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女神

知っていることを最初から説明し、メイドには1週間ほど休みを貰った。明日の10時頃連れて戻る予定と説明し、安心させた。


メイドとマグノリアが部屋を退室し、パープル侯爵も退室した。残るローズマリーとマーガレットは、ユリに用があるらしい。


「ユリ様、紫陽花のゼリーは、簡単でございますか?」

「うわ、耳早いね」


ソウは、笑っていた。


「簡単です。ほぼゼリーなので、10歳くらいでも作れます」


ユリは作り方を説明し、二人を納得させた。作ってみたが、上手く行かなかったらしい。花の丸みのために半球型を使うと思い付かなかったようだ。それにしても、何処で情報を得たのだろう。


無事マグノリアを母親に渡し、ユリとソウは自宅に戻ってきた。


午後は、今日もたくさんキャラメルが売れた。



店の営業が終ってから、もう一度様子を見に行ったら、目が覚めたらしく、ユリとソウを見かけたとたん、上体を起こして、お礼やお詫びを言ってきた。


「あら、言葉大丈夫みたいね」

「はい。あの、答えられませんでしたが、黒猫様がいらしたことも含め、回りの話はずっと聞こえておりました」

「意識自体はあったのか」

「マグノリアちゃんは、お母さんに渡してきたから安心してね」

「本当に、何から何までありがとうございます」

「明日迎えに来るまで、しっかり休むようにな」

「かしこまりました」


帰ろうとしたところで、病院の関係者につかまった。


「ホシミさん、お願いがございます!」

「何? ユリなら貸さないよ?」


普段ユリには見せない冷たい態度で、ソウが対応する。


「え?」

「えー!? 私、貸し出されるお願いなの?」


うーんとうなり、話の方向を変えてきた。


「では、1つ質問させてください」

「何?」


ソウが鋭い視線で睨む。


「あのトゲは、大分中に入っており、外から黙視では確認できなかったと思われます。どのようにして判明したのでしょうか? 患者を連れていらしたとき、状況が不明とおっしゃっていましたし、本人から聞いたとは思えません」


治療が出来ない状況下で、詳しく診察をした人がいると、断定して聞いてきていた。


「それがわかったら、どうしたいのさ?」

「恥を忍んでお願いします。我が娘を見てください」


興味本位で知りたいのかと思ったら違うらしい。


「医者として、それで良いの?」


ソウは、大分呆れた様子で言っていた。


「この事で、医師を辞めろと言われれば辞めますし、払えない額の支払いを要求されれば、全ての財を処分して換金し、残金は生きている限り支払い続けます」


あまりの真剣さに、ユリもちゃんと説明しようと思った。


「あのね。私に医療知識はないのです。本人の治す力を借りているだけなので、私が認識できる病や怪我以外は、治せないかもしれないのです。老いも止められませんし、心の病気も無理だと思います。万能な訳ではありません」

「それでもどうか、お願い致します」


その場に土下座する勢いで頼み込んできた。


「じゃあ、お見舞いだけ、伺ってみます」


そして、閉鎖病棟を訪ねた。


窓に鉄の格子が入った病室に、多数の機械と、点滴の管が腕に繋がり、眠りながら暴れるガリガリに痩せた少女がいた。ユリは一目でわかった。この少女は呪われている。


「ソウ、あなたは入ってはダメ」


ユリは、ソウの安全のために黒の結界を展開し、治療を開始した。黒の結界の外に、4色結界も展開し、医師すら入れないようにした。


ユメが受けた呪いと違い、大分軽いものだが、少しずつ確実に命を削っていっている。


黒っぽく淀んで見える心臓と肺の辺りと、何かがまとわりついているように見えるひたいに手を置き、元凶が消えるように願いながら魔力を込めた。煙のような灰色に濁ったモヤが立ち上ぼり、ユリの頭上で光って消えていった。


ユリは離れて全体を見て、肌の色の正常を確認し、結界を全て消した。


少女が目覚める。


「女神様!」


ユリを見て、キラキラした目で見つめてくる。


結界を消したことで、医師が部屋に入ってきた。


「目が覚めたのか! 良かった。良かったぁぁぁ」

「お父様、なんですか、人前で泣くなんて恥ずかしい。それより、夢の中で、女神様に助けられたの! その女神様とそっくりな方が、今、目の前にいらっしゃるのよ!」

「確かに、彼女は女神様だ」

「やはりそうなのね!」


ユリは居たたまれなくなり、退室することにした。


「しっかり食べて体力を付けてくださいね」

「はい。女神様!」

「では、これで」


ユリが部屋を出ると、医師が追って来た。


「あの結局、どこが悪かったのでしょうか?」

「んー、信じられないかもしれないけど、彼女、呪われていました。原因や理由はわかりません」

「呪い!? そりゃ、医学じゃわからないわけだ」


信じてくれるらしい。


「今受けていた呪いは(めっ)しましたが、原因があるなら繰り返すかもしれません」


思い当たるものはないらしい。


「ありがとうございました。このお礼はどのようにしたらよろしいでしょうか」

「ソウ、どうしたら良い? 私は特に希望はないわ」


「なら、口外禁止と、今入院させてる男性の治療費ってことで」

「そんなに安くて良いのですか!?」

「10割負担だぞ? 安くもないだろ?」

「木片を取るために切開はしましたが、部分麻酔ですし、使った薬剤も、抗生物質くらいですからね。あとは検査費くらいです」

「それで良いよ。明日来るからよろしくな」

「よろしくお願いします」

「お待ちしております」


ユリとソウは、やっと自宅に帰ってきた。


「お帰りにゃ。どうだったにゃ?」

「ただいま。気が付いていてね。明日帰ってこられそうよ」

「良かったにゃ」

「よかった、よかったー」


「さあ、明日も頑張りましょう!」

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