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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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取分

今日は、キャラメル教室2回目の開催日だ。朝食後、皆で予定を話していた。


「ユリ、結局誰が来るの?」

「マリーゴールドちゃんが参加で、リラちゃんは、集中的にリナーリちゃんの指導をするそうよ」

「あと、4か月だしな。力を入れるよな」


「ユメとキボウはどうするんだ?」

「カンパニュラとプラタナスのところに遊びに行ってくるにゃ」

「キボーも、キボーも」


「ユメちゃん、持っていくのは、サファイアクリームソーダゼリーだけで良いの?」

「他に何かあるにゃ?」

「昨日の、アフォガードとか、話題に上がったりしない?」

「にゃー。あれ、キボウはシロップ味で食べていたにゃ」

「そうね。見たわ。だから、苦手な人用にコーヒーシロップを用意して、苦いの平気な人だけコーヒーをかけたら良いと思うのよ」

「コーヒーシロップにゃ?」

「うん。たぶん美味しいわよ」

「それ欲しいにゃ!」

「なら、用意するわね」


厨房へ行き、糖度の高いシロップに、インスタントコーヒーを濃いめに溶いたものを合わせてコーヒーシロップを作り、持ってきた。


ユリが戻ってくると、ユメが呆れた表情でソウを見ていた。


「ユリ、俺見学に行って良い?」

「私は構わないけど、今日の生徒は、国中の未婚のお嬢さんたち20名よ。他に、いつものメンバーが指導役で、1班に1人付くわ」


軽くソウの表情がひきつっていた。


「あ、うん、やっぱり、ユメとキボウに付いていこうかな」

「私たちに付いてきてどうするにゃ?」

「メイプルも戻ってきたし」

「メイプルと仲良しなのにゃ?」


ユメの純粋な疑問に、「仲良し」とは認めたくないソウは、黙ってしまった。


「ユメちゃん、ソウとメイプルさんは、同じ年なのよ」


ユリの言葉に、ユメが本気で驚いていた。


「ソウの方が、ずいぶん若く見えるにゃ」


記憶のないユメ的には、初めて見たメイプルが、今のメイプルなのだ。


「物理的に10歳離れたからな」


ソウが少し寂しそうに笑った。


「ソウ、お城に行くなら、アフォガードはお任せするわ」

「おう、任された」


ユリは必要なものを揃え、指輪を杖に変え、ポンポンと触り収納していった。


「ユリ、コーヒーサーバーごと持っていくの?」


コーヒーサーバーとは、コーヒーを抽出するときに使う、ガラス製などの容器のことだ。


「パープル邸に、コーヒーがあるか分からないじゃない」

「そういえば、提供された事はないかもな」


思い返しても思い当たらなかったらしい。


「コーヒー作らないのに、何でコーヒーサーバーはあるの?」

「取っ手があって、要領が大きくて、お茶以外にも、出汁を濾したりに使うのにも便利なのよ。コーヒー入れたら、本来の使い方かしらね。うふふ」

「コーヒーシロップは、どうするの?」

「ユメちゃんに渡したのと同じ、デキャンタに入れてあるわよ」


お店で、黒蜜を提供するときに使っている。パッと見は、黒蜜に見える。


「お店に残っているバニラアイスは、持っていって良いわよ。私は、向こうで作って貰うわ」


ユリは、大型アイス箱も杖で収納した。


「そろそろマリーゴールドちゃんが来ると思うから、外に行くわね」

「ずいぶん早くないか?」

「マリーゴールドちゃんが、向こうで着替えるからね」

「成る程な」


ユリは外で待とうと思い、階段を降りた。すると、お店にすでにマリーゴールドはワンピース姿で待っていた。


「あら、いつ来たの?」

「先ほどでございます。おはようございます。ユリ様」

「マリーゴールドちゃん、おはよう」


リラと違って、大声で呼んだりはしないらしい。


「マリーゴールドちゃんは、キャラメルを作るのと、アイスクリームを作るのだったらどっちが良い?」

「どちらでも構いませんが、アイスクリームを作られるのでございますか?」

「たぶん、アフォガードっていう、アイスクリームの食べ方が、話題になると思うのよ。だから、聞かれる前に提供しちゃおうと思ってね。それに、今日指導役で付く人には、新種以外キャラメルを分けないからね」

「ユリ様のご都合でお決めになられた作業を頑張りますので、なんなりとお申し付けくださいませ」


「ありがとう。そろそろ移動するわね」

「お願い致します」


2人で外に出て、パープル邸のユリの部屋に転移した。


「お待ちしておりました」

「マリーゴールド様、こちらへどうぞ」


マリーゴールドは、別の部屋に案内されていった。

先に来て用意を済ませていたらしいラベンダーも、一緒にユリを迎えに来ていた。挨拶を済ませたあと、いきなり質問されたのだ。


「あの、ユリ様、お噂を耳にしたのですが、ユリ様から直截指導を受けた商人が、変わったアイスクリームを提供して、大成功を納めたとか。このお話は本当でございますか?」

「あなた、本当に耳が早いわね! それ、昨日の午後の話なのよ? そのアイスクリームは、今日、皆さんにも提供する予定だから、楽しみにしていてね」

「ありがとうございます」


「今日の予定は、先週と同じく、キャラメル数種類を作るのと、バニラアイスクリームを作ります。確かあなたはコーヒーを飲んだことがあるのよね?」

「はい、ございます」

「コーヒーは、気軽に手に入れられるものなの?」

「そうでございますね、貴族や商人などは可能でございますが、平民は、コーヒーそのものをしらないかもしれません」

「なら、今日振る舞っても構わないわね」


ユリが持ち込むのは、インスタントコーヒーをお湯に溶いたものだ。


ユリも白衣と割烹着に着替え、今回は持参したシンプルなブラウスを使うのだった。


今日は、火を使い、煮詰める工程があるため、参加には調理経験があることを条件にあげてある。その上、アルストロメリア会の方で、未婚限定としたためか、初参加の者は少ないらしく、マリーゴールドの知り合いもいるようだった。


前回と同じく、全班が基本と好きな種類2種類を作り、分け合うと言うことで決まった。ユリがキャラメル基本味の指導をしている頃、ラベンダーとマリーゴールドには、バニラアイスクリームを大型アイス箱で作ってもらっていた。


基本味をカットし、包み終ったところで、ユリは皆に声をかけた。


「キャラメルの途中ですが、恐らく話題になると思われる、アフォガードを試食していただきます。バニラアイスクリームに、深入り豆を使ったコーヒーをかけていただくと言うものですが、苦味が苦手な方は、甘いシロップも用意しているので、声をかけてください」


サリーやメイドたちが中デッシャーを使い、アイスクリームを分けていく。大型アイス箱で作り、中デッシャーで分けているので、43人分出来上がった。屋敷にある小さめのカップにコーヒーを注ぎ、全員に配った。最初から苦味は苦手と申し出たのは5人で、ユリとしては、各班に1人くらいいるのねと思っていたが、双方食べるために、名乗り出ただけだったらしい。コーヒーカップに少しずつ分けていた。


「ユリ様、こちらのデザートは、どなたまでご存じなのでございますか?」

「昨日の14時くらいにお店にいたお客さんにしか話していませんが、今日お城にユメちゃんが持ち込むので、バニラアイスクリームを作れるなら、いくらでも広めてくださって結構です」


ラベンダーによると、アルストロメリア会の会員は、全員バニラアイスクリームを作れるらしい。入会時にアイス箱を渡されるので、この会場に来たことがなかったとしても、アイス箱は持っているそうだ。


アフォガードの試食が終り、選んだ種類を皆が作っている間、ユリは新種のキウイフルーツ味を400個作り、参加者20人×4粒、指導補助7人×4粒、ユリの取り分22粒として、合計130個を除き、基本味80個とキウイフルーツ味の残り270個を、屋敷の分として置いていった。


着替え、食事を提供され、今日の会は解散した。


帰りがけ、マリーゴールドから質問された。


「ユリ様、キウイフルーツ味22個は、どうされるのでございますか?」

「双方のお店の皆に、味見として分けようと思ってね」


1人に1個としても半端な数なので、マリーゴールドは気になったらしい。


「いくつか余るようでございますが」

「あ、ユメちゃんとキボウ君に、多めにね」

「それでございましたら、(わたくし)が受けとりました4粒のうち3粒をお返しいたしますので、ユメちゃんとキボウ君に、5粒ずつにされてはいかがでございますか?」


奇数を返すと言われ、ユリは不思議に思った。


「あれ? あ、そうか。マリーゴールドちゃんの数をいれて18人と数えていたわ。マリーゴールドちゃんは参加したのに、1粒で良いの?」

「お店に戻ってからいただきますので、むしろ皆さんと同じ数の方が」


マリーゴールドが微笑んだ。


「そうすると、マリーゴールドちゃんに5粒(合計9粒)渡したら良いのかしらね」

「はい。皆さんにお渡ししておきます」


帰りはベルフルールの前に転移し、マリーゴールドを送ってからユリは帰ってきた。

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