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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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胡瓜

昨夜ソウが、牛肉5kgを調達してきてくれたので、無事80人前の追加を仕込むことができそうで、安心して朝を迎えた。


早朝からリンゴジュースでゼリーを作り、予定数のパウンドケーキを仕込み、オーブンに入れてからリビングへ戻り、揃って朝ご飯を食べた。


朝食後ユリは、オーブンからパウンドケーキを出したあと、玉葱と人参を切り、一口大に切った牛肉を炒め、寸胴鍋2つに分け、水を入れ沸騰させた。


「おはようございます」

「おはよう。リラちゃん、早いわね」

「ちょっと気になったことが有りまして」

「何が気になったの?」

「大根、いえ、蘿蔔(すずしろ)を見かけていない気がしたので、確認に早く来ました」


リラ的には大根は、近隣で採れる皮が黒いタイプで、皮まで真っ白なのは、群青領からの取り寄せで、蘿蔔と呼び分けているらしい。


「あら? 冷蔵庫に無かったかしら?」

「福神漬の時、全部切っていたと思います」


ユリは慌てて冷蔵庫を確認した。確かに在庫がない。良く思い出し、原因を理解した。ユリが外している間に指示書を見て野菜を切って貰ったので、大根は皮を厚く剥かれ使用されたらしい。本来綺麗に洗い皮ごと使うのだ。そういえば、厚い皮が避けてあって、きんぴらにでも使おうと考えていた。指示書には重さで書いていたので、剥いた皮の分、足りなくなったものと思われる。


「どのくらいあれば良いんですか?」

「1本あれば充分よ」

「お父さんに連絡します」


リラは以心伝心を使い、マーレイに追加で大根1本を頼んでくれた。


「助かったわ。冷蔵庫に半分以上あるつもりだったのよ」

「昨日は、私だけ暇でしたので、試作するのに使って良さそうな在庫を見て回りました」


そのため、在庫を把握していたらしい。


「でも、良く大根が必要ってわかったわね」

「以前、和風ハンバーグを出したときに、大根のすり下ろしをのせていましたし、なめ茸はソースとおっしゃいましたので、上にのせるのではないかと思いました」

「そういえば、あのときは皮が真っ黒な大根が(から)くて大変だったわね。うふふ」


ユリは、ふと思い出した昔話をリラにすることにした。


「昔ね、白い大根が計算違いで足りなくなった時にね、紫大根ですり下ろしを作ったのよ。紫色のすり下ろしが面白くて、ポン酢をかけるとそのすり下ろしが赤くなって、更に楽しかったんだけど、私以外には不評だったのよねぇ」

「えー! 面白そう! 紫大根は、高価なのですか?」

「白い大根よりは多少高いけど、高くてもせいぜい倍くらいよ」

「なら、昨日ユリ様が何か頼んで良いと言った分で、紫大根下さい」

「そんなので良いの?」

「だって、楽しそうじゃないですか」


いろいろ実験するなら、参考に少し教えておこうと、ユリは考えた。


「酢を使った漬け物にすると、全体がピンク色になって綺麗よ。サラダに使うと、酢の入ったドレッシングのところだけ色が変わるから、楽しいわよ。ただし、煮物とかに使うと、不気味な煮物が出来上がるわ。辛みもないから生で食べる使い方が向いているわね」


そこへソウがやってきた。


「ユリ、向こうに行ってくるけど、不足分はもう無い?」

「不足じゃないんだけど、紫大根があったら買ってきてほしいの」

「どのくらい?」

「リラちゃんへの報酬だから、2~3本かしら」

「報酬?」

「昨日、休みなのに緊急で炊飯手伝って貰ったじゃない」

「あーあれか。わかった。適当に、選んでくるよ」


実をいうと、リラが手伝ったのは、炊飯だけではないのだが、ユリが把握しているのが炊飯だけで、ソウは他にも手伝っていたことを知っていたので、適当に選んでくると返事をしたのだった。


「ホシミ様、ありがとうございます」

「お礼言うのはこちらだから」


ソウは笑いながら階段を上がっていった。ソウは自分が把握している分を含めて何か買ってこようと考えたようだ。


「ソウ、何が可笑しかったのかしら?」

「私の希望が紫大根だったことが可笑しかったんじゃないですか?」

「そうかしらね?」


お寿司食べたいですと言っても不思議ではないので、そうなのかな?とユリは納得した。


「私は昨日の続きを、仕事を始める前までしていて良いですか?」

「構わないわよ。大根のこと、気がついてくれてありがとうね」

「どういたしまして」


今度はユメとキボウが来た。


「今から出るにゃ」

「なら、世界樹様とメイプルさんたちの分のアイスクリームを持っていってね。お城の分は、ソウが持っていってくれたわ。空の真冬箱を回収して帰ってきてね」

「分かったにゃ」


ユメとキボウにアイスクリームを渡すと、リラがじっと待っていた。


「リラちゃん、どうかした?」

「あの、ユリ様、父から緊急の連絡で、大量のキュウリを引き取れるか確認されたのですが、ベルフルールは10kgが限界で、こちらではいかがでしょうか?」

「どのくらいあるの? 困ってるなら、50kgでも100kgでも引き取るわよ? 大体1本100gと計算して50kgは500本くらいだわね」

「全部で2000本くらい有るらしいので、200kgでしょうか」

「いくらでも良いわよ」

「伝えておきます」


しばらくリラは以心伝心を送り合っていたようだが、そのうち笑いだした。


「ユリ様、注文を間違った八百屋が、泣いて喜んでいるそうです。新人が200本の注文を200kgと聞き間違えたらしいです。こちらに110kgを直接持ってくるそうです。あ、10kgはベルフルールのです」

「どうにかなりそうなら良かったわね」


「ユリ様、キュウリ100kgって、何作るんですか?」

「まあ、鞄にいれてしまえば悩むこともないけどね。鞄がなくても、塩漬けにして保存して、塩抜きして味をつけ直せば、歯応えの良い美味しい漬け物が出来るわよ。他は、生を千切りにして、冷やし中華や、鶏肉と胡麻ダレを用意して、棒々鶏(バンバンジー)ね」

「あ! バンバンジー! うちで出そうかな」

「千切りスライサー有る?」

「はい。以前いただいたのが有ります」

「怪我にはくれぐれも気を付けて使ってね」

「はい」


ユリはホットサンドの中身を作り始め、リラは昨日の結果らしきものを、ノートにまとめていた。


9時近くになり、メリッサが出勤してきて仕事を始め、9時半近くになり、イポミアが出勤してきて、リラと一緒に仕事を始めた。


10時を過ぎた頃、マーレイと共に、キュウリを積んだ八百屋がやってきた。


「ハナノ様、八百屋を連れて参りました」

「あの、この度は、大変ありがとうございます」

「困ったときはお互い様だからね。100kgだけで大丈夫ですか?」

「は、はい。残りは、店でなんとか売り切れると思います」

「マーレイさん、普通に支払っておいてください」

「かしこまりました」


八百屋は、とても驚いた顔をしていた。押し付けたようなものなのだ。値切られると考えていたのだろう。


「あ、ありがとうございます!」

「あの、ベルフルールの10kgは、店に運んで貰えます?」

「勿論です! リラさんもありがとうございます」

「リラ、私が行って冬箱にしまって来るよ」

「お父さん、お願いします」


マーレイは八百屋を連れて、ベルフルールへ納品に行った。


ホットサンドは、リラ、メリッサ、イポミアが作っている。ユリは、ハンバーグを()ね、形を作って鉄板に並べた。一旦冷蔵し、マーレイが待ってきてくれた大根をすりおろしていった。


ユメとキボウが帰ってきて、手伝いを始めた。

イリスが出勤してきて、誰もしていない洗い物を片付けてくれた。

マーレイが戻ってきて、先ほど来たときに目についた洗い物が片付いていることに驚いていた。


「みんないるから、おやつにしましょう」

「おやつ、何ですか?」

「外おやつに使う、リンゴジュースのゼリーです」

「ぜーりー!」


キボウが喜んでいた。


「あれ? 何か入ってる?」

「リンゴのプレザーブよ。軽く煮たリンゴね」

「ユリ様、これ出したら、売ってくれって言われませんか?」

「もし頼まれたら、Tの日(じゅもくのひ)に対応しますと言ってください。一人でもいれば、作ります」


おやつ休憩を終わらせ、リラのホットサンド担当をマーレイに交代してもらい、昨日全く作れなかったクッキーなどを作り始めた。


すると、メリッサとイポミアが、クッキーの手伝いに来た。


「あれ? ホットサンドは大丈夫?」

「マーレイさん一人の方が手際が良いみたいなので、任せてきました」


見れば、ユメとキボウが手伝って、マーレイが3台面倒を見ているようだった。


ユリとリラは、クッキーの生地を作り、型抜きをメリッサとイポミアに任せた。すると、ユメとキボウに代わり、イリスがマーレイの助手をするらしく、ユメとキボウがクッキーを手伝いに来た。


「リラちゃん、在庫分のパウンドケーキ仕込むわよ」

「なんか久しぶりです」


パウンドケーキは、ユリが早朝に作ってしまうことが多いため、リラが作るのは久しぶりなのだ。


オーブン3段分仕込み、残りの時間は、手焼きのホットサンドの器具で、ホットサンドを量産した。

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