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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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榎茸

パープル侯爵夫妻を見送って戻ってきたユリに、メリッサが声をかけてきた。


「ユリ様、予定表に有った野菜、カットしました」

「ありがとう」

「これ、何作るんですか?」

「漬け物よ」

「こんなに細かく切ってから漬けるんですか?」

「明日には食べられる漬け物だからね」


切ってもらった野菜は、大根400g 蓮根100g 茄子1個 胡瓜1個の割合。一口サイズで、4~5mmの薄切りだ。生姜1かけは針生姜なので、ユリが切った。蓮根は下茹でしてある。


切った野菜を塩で揉み、しばらく置く。上白糖、濃口醤油、酢を加熱後冷ましてからジッパーバッグに入れ、汁気をしっかり絞った野菜と針生姜と小さめの昆布を加え、軽く揉み込み、明日まで置いておく。昆布も針生姜同様にカットしておけば、そのまま漬け込める。


「ユリ様、これはなんですか?」

福神漬(ふくじんづけ)と言う、カレーライスに良く合う漬け物よ」

「詳しく教えてください」

「大根がメインで蓮根と生姜が入っていれば、他の野菜は無くても変えても良いわ。総量だけ合わせてね」


「この昆布、どうやって細く切ったのですか?」

「昆布を軽く蒸気に当てて、少し置いて柔らかくなってからハサミで細く切ると良いわ。保存は良く乾燥させてからね」


詳しくリラに説明していると、ソウが覗きに来た。


「あれ? 赤くしないの?」


「こっちに赤芯大根売ってないからね」

「買ってくる?」

「ちゃんと赤芯大根ならね、うふふ」


以前、紫大根で作ったら、ファンシーな色味の福神漬になり、「目から入ってくる印象と、味が違う」とソウに言われたのだ。ピンク色ぽい大根漬けといえば桜大根のイメージで、甘酸っぱいと思い込んで口にすると、福神漬の甘じょっぱい味に、あれ?と思うらしい。


「ユリ様、ビーツは入れたら駄目ですか?」

「大根の代わりに入れたことがあるんだけど、毒々しい赤黒すぎる漬け物が出来上がったわ。少しなら良いと思うけど、大根の代わりに入れるのは駄目だわね。味もいまいちだったし」

「ローゼルはどうですか?」

「試したことはないけど、酸っぱくならないかしら?」


「この漬け物は赤く作るものなのですか?」

「普通に作れば、薄い醤油色なんだけどね。福神漬を最初に売り出したお店が赤く染めて売り出したから、年配の人のイメージは、福神漬と言えば赤い漬け物らしくてね。お店に買いに行けば、どちらも売っているのよ」

「そういう事情なのですね」

「色をつけるつもりの時は、薄口醤油を使ってね」

「はい」


この他にオレンジゼリーも仕込み、明日の予定分は目処がついたので、ユリは意見を募った。


「何か作りたい物とか有りませんか?」

「ユリ、時間があるなら、なめ茸教えてよ」

「私も知りたいです!」


ソウの意見にリラが賛同した。


榎茸(エノキタケ) 100gに対し、醤油 大さじ1 味醂 大さじ1 酒 大さじ1くらいを基本に、好みで加減してください。榎茸を2cmくらいに切って、全て鍋に入れて、沸騰後3~5分煮たら出来上がりよ」

「そんなに簡単なのか!?」


ソウは肩掛けカバンから、榎茸の袋を取り出した。10袋くらい持っている。


「大量に作るときは、先に調味料を沸騰させてね」

「早速作ってみたいです!」

「夕飯は生姜焼きだから、作って一緒に食べましょうか」


「あー」


一連の流れを見ていたメリッサが、残念そうに声をあげた。


「ご飯と一緒に持ち帰る? それとも明日食べる?」

「ご飯も少しいただいて良いですか? 持ち帰りたいです」

「ご飯炊けたら、持ち帰ると良いわ」


そこに、ユメが覗きに来た。


「ユリ、ご飯無いと食べられないにゃ?」

「和風ハンバーグのソースとかでも美味しいわよ」

「ユリ様、明日は和風ハンバーグにしましょう!」

「その場合いは、食べる時にポン酢をかけるか、少し濃いめの味付けにすると良いわよ」


明日の夕飯まで決まってしまった。本来はビーフカレーの予定だったのだ。


「ユリ様、キノコ切りました!」

「調味料量りました!」


リラとイポミアが着々と準備を整えていた。


「多めに作るから、先に調味料に火を通します。沸騰したら、キノコを全て加え、吹き零れない程度の火加減にして、5分ほど加熱します。少しとろみがついて、水分がなくなってきたら出来上がりです」

「うわー、本当に簡単」

「これなら、リツから材料でも良いと言われるわけだ」


「あ、17時45分になったわね。マリーゴールドちゃんを迎えに行ってくるから、リラちゃん、夕飯の用意お願いね」

「はい。あ、ユリ様、クッキーお願いします」


リラからクッキーを受け取り、ユリは簡単に着替えて、約束した18時に、ソウと一緒にマリーゴールドを迎えに行った。


マリーゴールドは、平民にしては豪華な、貴族にしては大分質素なワンピースを着て待っていた。服に合わせ髪も下ろしている。ユリも手持ちのワンピースなので、釣り合いが取れている。屋敷の者たちも、外出しない時の服装で、服が前回と同じなのは、メイドたちだけだ。平服なのは、忙しいユリに合わせたのだ。


コバルトブルー伯爵が挨拶に来たので、軽く挨拶し、ユリはクッキーを取り出した。


「このクッキーは、ベルフルールのリラからです」

「マリーちゃんの師匠さんからですか!」


とても嬉しそうに受け取り、後ろに控える婦人に渡していた。「明日のお茶に早速」と、メイドたちと話しているのが聞こえる。


婚約者のオリーブと少し話したあと、マリーゴールドを連れて、店の外に戻ってきた。


「マリーゴールドちゃん、着替えてくる? そのまま夕ご飯食べる?」

「皆さんがいらっしゃるうちに、伺いたいです」


店に入ると、皆がマリーゴールドのそばに集まり、帰ってきたことを歓迎していた。ユリとソウが出ている間に、キボウも帰ってきたらしい。


メリッサが、ユリに挨拶をしてから、ご飯となめ茸を持って帰っていった。


生姜焼きは、リラとマーレイが焼いたらしい。皆で食べ始めると、ご飯となめ茸を食べた感想を言い合っていた。


「ホシミ様!ベルフルールにも、是非お願いします!」

「お、おう。榎茸、どのくらい欲しいんだ?」

「おいくらになりますか?」

「期日を指定しないなら、さっきの包み1個あたり200(スター)で良いよ」


ほぼ原価だ。


「ありがとうございます!取り敢えず10個おねがいします!」


「ソウ、榎茸の前に、電気式の炊飯器をベルフルールにね」

「それもう手配した。明日には持ってくるよ」


マーレイとイリスとイポミアが帰り、リラとマリーゴールドは残っていた。


「帰らないの?」

「朝、クッキー作っていましたので、1時間くらいは残ります」

「それは気にしなくて良いわよ」


あのクッキーは今日作られたのでございますね。と感心しているマリーゴールドとの会話が聞こえていた。


「あ、それより、マリーゴールドちゃん、これ居ない間にみんなで作ったキャラメルよ。種類の説明は、リラちゃんが持っているわ」


リラがスケッチブックを持ってきて、マリーゴールドに説明していた。

どれを選んで食べるだろうと見ていると、マリーゴールドが選んだキャラメルもイチゴ味だった。


「美味しいです」

「イチゴ味、一番人気ね」

「この中から選ぶとイチゴが選ばれるのは、色が原因ではないでしょうか?」


赤っぽいものは、目を引きやすいらしい。絵を描くリラからの考察だった。


その後、リラとマリーゴールドは、仲良く帰っていった。

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