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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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青苺

自由時間に、ユリは森を見たいと言い、キボウを誘って森に行った。リラが鰻を釣りたいと言うので、ソウはエサの付け方と、釣り針の外し方と、釣れるポイントを教え、ユリを追いかけた。ユメは翡翠(ひすい)を探したいと言い、川原にいる。


「あら、転移能力者が全員こっちに来たら、何かあったときに困るわね。みんなで戻りましょう」

「いや、俺はすぐ戻るよ。ユリ、キボウに何を聞く予定だったの?」

「食べられる物が、何か()っていないかなぁって」

「8月に取れる山菜って、殆ど無くない?」

「何でも良いのよ。木の実とか、木苺みたいなものでもね」

「あ、それなら、野生種のブルーベリーが、ちょっと先にあるよ」

「それ、貰って良いの?」

「酸っぱいから要らないって。王国兵は、ジャムは作らないから」


ソウは、キボウにおよその場所をおしえ、帰っていった。


「キボウ君、私は道が全くわからないから、案内お願いします」

「わかったー」


手を繋いで少し歩くと、森を抜け、開けた場所に、木苺と思われるトゲだらけの枝があり、それを避けて進むと、小粒のブルーベリーの木が沢山あった。木自体は大きく、ユリの身長の倍くらいある。


「うわー! 凄い!」

「ユリー、いるー?」

「帰ってから美味しいジャムにしたいから、欲しいわ」

「わかったー。ブルーベリィー!」


ユリは慌てて籠を取り出すと、上から一筋になって落ちてくるブルーベリーを残さず受け取った。ずっしり5kgくらいありそうだ。


「キボウ君凄いわね! どうもありがとう!」

「よかったねー」


粒はかなり小さいが、完熟の実のみなのだ。潰しても中まで色が濃い。ジャムやアイスクリームにもってこいだ。ユリは籠ごと杖でしまった。


「キボウ君、私は道が全くわからないけど、歩いて帰る? 転移で帰る?」

「あるくー」

「では、道案内お願いします」

「わかったー」


テコテコ歩いて行くキボウを、ユリは見失わないように頑張ってついていった。


「ユリー」

「キボウ君、何かあったのー?」

「たべる?」


そこには、育ちすぎた少し茶色い茸と、育った真っ赤な茸と、白い卵から生まれたような赤い茸が生えていた。


「ん?、これ、もしかして、タマゴタケ?」

「あたりー!」

「うわー。凄いわね。摘んで行こうかしら」

「スレンダー・シーザー!」


キボウの掛け声と共に、20個くらいのタマゴタケが宙に浮いていた。ユリは慌てて、入れ物は何か無いかと探し、空いているお皿を取り出した。するとそこにパラパラと浮いていた茸が降ってきた。


「ユリ、?、おかあさま、おいしー」


キボウは、ユリと呼び掛けて、ユリの顔を見てから、おかあさまと言い直した。


「えーと、リスさんが、美味しい茸って教えてくれたの?」

「あたりー!」

「なら、美味しく料理しましょうね」

「キボー、たべるー!」


キボウは、そもそもこれを教えてくれる予定だったらしい。昨日、(たきぎ)を集めに来たときに、見つけていたのかもしれない。


ユリとキボウは、みんなのいるキャンプ地に転移で戻り、ブルーベリーとタマゴタケを見せた。リラもユメと一緒にいたので、釣果(ちょうか)を聞くと、5匹釣れ、6匹目で糸を切ってしまい、釣り針を無くしてしまったらしく、釣りは終了させ、ユメと一緒に翡翠を探していたらしい。ソウは、片付けをしていたが、ユリとキボウの姿を見て駆けつけてきていた。


「小粒のブルーベリーですか? この(きのこ)って、毒キノコではないんですか?」

「毒キノコにゃ?」

「これ、食えるのか?」


赤すぎる色に、みんなが毒キノコ認定していた。


「キボウ君が、リスさんおすすめのタマゴタケって、教えてくれたわ。ソテーにする予定よ。美味しいのよ」

「あ、これ、タマゴタケなのか!生えてるのを見ても、似ている毒キノコと見分けがつかないから、採って来たことはないけど、タマゴタケなら、美味しいらしいよな」


キボウのおすすめで、ソウも知っているとなると、納得したらしい。キノコ問題が片付くと、ブルーベリーが注目された。


「ブルーベリーなら、このまま食べられるのにゃ?」

「食べてみていないけれど、酸っぱいらしいわ」

「では、私が食べてみます」


リラが、ひょいと一粒口にいれた。


「お店のよりは酸っぱいですけど、知ってるブルーベリーの味です。かなり美味しいです」

「だったら、少しセミドライでも作ってみましょう」

「セミドライ?」

「ドライフルーツよ。乾かしすぎないタイプね」

「どうやって作るんですか?」


ユリは、ブルーベリーを少し小分けにした。


「ウオスナク」


乾燥の呪文を唱えて、ユリは少し食べてみた。


「思ったものが出来たわ」


縮み、更に小粒になったブルーベリーを、全員が味見し、作りたいと言い出した。ほどよく水分が抜け、甘味が増している。


「乾燥させ過ぎると、カラカラになっちゃうから、ほどほどにね」


ユリは、全員分の皿を用意し、ブルーベリーを分けて渡した。


予想通りではあるが、3人とも、カラカラに乾燥させていた。


「うわ、硬い」

「乾かしすぎたにゃ」

「加減が難しいな」

「お店に戻ってから粉にするから失敗しても大丈夫よ」


キボウは、ユリが作ったセミドライのブルーベリーを美味しそうに食べていた。


「あまりにも難しかったら、3日くらい天日干しすれば良いわ」


ユリは見せていたタマゴタケをしまい、ブルーベリーを1kgほど分けて、残りをしまった。


乾燥に失敗したらしいブルーベリーを集め、完全に乾燥させ、おやつに食べているキボウ用に、追加も作った。ユリは一人で片付けを始め、食べ終わったキボウも手伝い始めた。


しばらく挑戦していた皆が、納得したのか、諦めたのか、ブルーベリーのセミドライ作りは終了し、ソウも片付けを再開した。


「ユメちゃんとリラちゃんは、翡翠を探していて良いわよ。キボウ君、2人と一緒に探してくれる?」

「わかったー」


いつものリラなら「私も片付けを手伝います」と言うところ、変に気を利かせたらしく、笑顔でユメとキボウの手を繋ぎ、川原に行ってしまった。


「ソウ、鰻はいつ取りに行くの?」

「家に戻ってから行くよ。約束は13時にしてあるからな」

「楽しみねー。鰻なんて、久しぶりに食べるわ」


集合時間の5分前には、ユメとキボウとリラは戻ってきた。

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