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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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揚麺

リラに作業の流れを説明し、厨房で赤紫蘇を洗っていると、休みのお店に訪ねてくる人がいた。


「私が見てきまーす」


リラが外を見に行くと、パープル侯爵家の執事が、手紙を持ってきたようで、リラに渡すとそのまま帰ったらしい。手紙はいつも薄い色の付いた封筒に入っていることが多いのに、珍しく白い封筒に入っていた。


「ユリ様にお渡しするようにと言われました」


封を開けてみると、なんと、サンフラワー・パールホワイト伯爵夫人からの、代理質問状だった。

一体なんだろうと読み進めると、どうやら、渓谷で採取した赤紫蘇の件で、その領地の侯爵が、ユリと直接関わりがあるサンフラワーに頼んだらしく、要約すれば、赤紫蘇と言うあの草は、一体何に使うのか、食べられるなら、どう調理すれば良いのか等を知りたいらしい。


「んー。リラちゃん、伯爵家に行って紫蘇ジュース実践する気有る?」

「伯爵家ですか?」

「あなたも会った事がある、サンフラワーさんよ」

「領主様が侯爵様なので、伯爵様のところに行くのはまあ良いのですが、伯爵家の厨房にユリ様が行っても問題ないんですか?」

「紫蘇はここで全部洗っていって、夏板持参すれば良いじゃない?」

「それなら、お付き合いします。いつ行きますか?」

「私は場所分かんないから、ソウが帰ってきてからね」

「なら、ご飯食べて着替えてきます」

「ご飯はここで食べたら良いわ」

「なら、ホシミ様が戻られてから着替えに行きます。ご飯何作りますか?」

「食べたことがない衝撃的なものが良いのよね?」

「はい!」


◇ーーーーー◇

素麺(そうめん)

豚バラ薄切り

にんじん

キャベツ

木耳(キクラゲ)

もやし

絹さや

コーン

蒲鉾(かまぼこ)

◇ーーーーー◇


「主な材料よ。まずは、素麺を茹でて冷水で締めたあと、ユルユルな感じのいくつかの塊にして、水気をしっかり切ります」


トレーに無造作な感じに並べているので、量が分かりにくい。


「何人前ですか?」

「鞄に入れておくから、取り敢えず10人前ね」


ユリとリラで手分けして、5人前ずつ作っていく。


「野菜あんかけを作るつもりで、程々に薄切りです」


キャベツは芯をそぎ切りにし、戻してある木耳は、大きいものだけ切った。絹さやは斜めに半分程度に切り、にんじんは半月型の薄切り、豚バラも一口サイズに切り、蒲鉾は銀杏切りにして準備完了。


「油を用意して、先程の素麺を揚げます」

「え!?」


加熱調理の後に更に加熱するとは思わなかったらしく、リラがかなり驚いていた。


「ユリ、何作ってるのにゃ?」

「あ、ユメちゃん。皿うどんよ」


ユメは「うどん?」と呟きながら見渡していた。まあ、視界にうどんは無い。そして揚げ物をしているユリの手元を見て聞いてきた。


「それなんにゃ?」

「出来上がりをお楽しみにね」

「わかったにゃ」


キボウは、ユメに詳細を聞いていたようだが、分からないと言われたのか、キボウが驚いている声が聞こえた。


「うどん? ユリ様、これ素麺なのでは?」

「そういう料理名なのよ」


茹でた素麺を全て揚げ終わり、油をしっかり切るために、網からキッチンペーパーに移した。


「ユメちゃんとキボウ君、もしお手伝いしてくれるなら、お皿5枚、紙皿5枚を用意して、この揚げた麺を均等に分けてもらえる?」

「わかったにゃ」

「わかったー」


麺を任せ、あんかけ作りに入った。


「豚バラ、ニンジン、キャベツは、しっかり炒めて、上から順に加えていって、多めのあんかけを作ります。チキンスープか、中華だしを調味したあと、片栗粉でとろみを付けて、あんかけの出来上がり」

「美味しそうな匂い!」

「これを、さっきの揚げた麺にかけます」

「お、おー!」

「なんか凄いにゃ」

「すごい、すごーい」


そこへ、ちょうどソウが帰ってきた。


「ただいまー。お、皿うどんか!」

「ソウ、お帰りなさい」


「出来立てで熱いから気をつけて食べてね」


ユリとソウが、少し麺を崩すようにしてから食べているのを見て、3人は真似をして食べた。


「うわー!麺がパリパリして面白い!」

「熱いけど、美味しいにゃ」

「ユリー、ちゃちゃんむし!」


何かと思ったら、蒲鉾の事らしい。 


「キボウ君良く覚えていたわね。茶碗蒸しにも入っていたわね。それは蒲鉾よ」


「ユリ、麺どうしたの?」

「作ったわよ?」

「え?」

「なんか、揚げていたにゃ」

「はーい、一緒に作りましたー」

「素麺を茹でてから油で揚げると、細麺の揚げ麺が出来るのよ。沢煮をかけると、和風になるわ」

「揚げ麺は買ってくるものかと思っていたよ」


ソウは、あんかけ海鮮かた焼きそばを作ってくれたことがある。本当は、皿うどんを出したかったらしい。


「ソウ、パールホワイト伯爵家の場所分かる?」

「分かるけど、何かあった?」

「赤紫蘇について、質問状が来たわ」


ユリは、サンフラワーから来た手紙をソウに見せた。


「あー、ホワイト侯爵から頼まれたのか。それでどうするの? パールホワイト伯爵家に行くの?」

「リラちゃんと行って、ちゃちゃっと教えて帰ってこようかと考えているわ」

「それでここで食べてるのか」


ソウは色々理解したらしく、笑っていた。


「パールホワイト伯爵家に直接行って、驚かれないなら、この後行くか」

「驚きはするかもしれないけど、怯えないでくれるとは思うわ」

「アルストロメリア会の初期メンバーか」

「サンフラワーさんも、断れない頼まれ事だろうから、さっさと解決した方が良いと思うのよね」

「まあ、そうだな」


洗い終わっていなかった赤紫蘇も全て洗い、そして5人でパールホワイト伯爵家に転移した。

門番はソウの事を知っていたらしく、ソウの顔を見た瞬間、慌てて知らせに走っていった。


すぐに執事と、パールホワイト伯爵が駆けつけてきた。


門を通され、上質な部屋に案内され、サンフラワーがやってきた。


呼びつけるかたちになってしまったことを、ものすごく謝られ、ユリが、私と貴女の仲じゃない。と、軽く言ったことで、丸く治め、リラに指示を出し、夏板を並べた。


「赤紫蘇は、茎からはずし、きれいに洗います。水を3回くらいは変えないと、汚れが落ちきれません。今日は洗って持参しています」


洗ってある赤紫蘇を見せた。


「ざるに1杯くらいを、沸騰した湯に入れ、良く茹でます」


だんだん湯が赤黒くなっていく。


「しっかり色が出たら、葉っぱを取り除きます。ざるで濾しても良いですし、網ですくっても良いです」


赤黒い湯だけになった。


「ここに、グラニュー糖と、クエン酸もしくは、酢を加えます」


クエン酸を加えると、さっと鮮やかな赤色に変わる。


「これを良く冷やして、氷水や、炭酸水で割って飲みます」


ユリは、氷を取りだし、少量を冷やし、その場に居る皆に、振る舞った。


「他にも使用法はありますが、これが一番簡単で有効な使用法だと思います」

「ユリ様、本当にありがとうございます」

「用件はこれだけなので、帰りますねー」

「え」

「ではまたー」


ユリは、リラとユメの手を取り、さっさと転移し帰ってきた。


唖然とする面々に、残ったソウが、ユリはサンフラワーが困っているから来たのであって、それ以外の理由はないと説明してから帰ってきた。

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