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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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滝裏

少し進むと、急激に気温が下がったように感じた。


「うわ、寒いわね。皆さんも寒かったら上着を羽織(はお)ってくださいね」


少し立ち止まり、全員が上着を着て、また歩き始めた。


「まーま、あれなあにー?」


シーミオの声に、指差す方を見ると、垂れ下がる鍾乳石が見えた。


「うわ!氷柱つらら!」「(きば)!?」「(とげ)だらけ!」

「あれは、鍾乳石。上から垂れ下がるのが、『氷柱石つららいし』、下に落ちて山になっているのが『石筍(せきじゅん)』、そして繋がったのが、『石柱せきちゅう』だ。この鍾乳石が有るのが、鍾乳洞だ」


ソウが説明をしていた。なぜかこの後の説明は、英語混じりで、ユリにはむしろ意味が分からなかったが、聞いていたメンバーは、分かりやすかったらしい。


「石が生まれるんですか?」

「その大きさが1cm伸びるのに、50年から200年、もしくは500年くらいかかるらしいよ」

「えー、じゃあ、毎日見に来ても大きくならないんですね」

「目で見て分かる成長は無いだろうな。だからこそ大切にして、傷付けたり壊したりしないようにしような」

「はい!」


質問していたリナーリが、良い返事を返していた。


「触るのは良いですか?」

「そっと触れるくらいなら構わないぞ」


すると、氷柱石は何となく落ちてきそうで怖いのか、太めの石柱や石筍を触ってみて、その感触を皆が楽しんでいた。


「ちゅめたーい」


シーミオも触ったのか、その冷たさに驚いているようだった。


「ホシミ様、この足元は、なぜ整えられているのでしょうか?」


レギュムがソウに質問していた。そうなのだ。鍾乳洞内は、緩い下り坂ではあるが、かなり歩きやすく道が整えられている。観光地というわけでも無いのに確かに不思議だ。


「この先に、氷穴(ひょうけつ)があってな、未だに現役の氷室として利用しているらしいぞ」


氷室として氷を保存している場所までの通路として、道が整えられているらしい。それを聞いて、ユリも納得した。


「ユリ様、ヒムロって何ですか?」

「シィスルちゃん、氷を保存しておくための設備よ」

「だから、こんなにも寒いんですね」

「そのようね」


少し進むと、この先立ち入り禁止の看板がある分かれ道があり、立ち入り禁止の方向に氷穴があるとソウが説明していた。


進める方向に進み、歩いていくと、ザザザッとものすごく大きな水音が聞こえてきた。


「この先に何があるんですか?」

「滝の裏側が見えるぞ」

「滝の裏?」


回りが一気に明るくなっていき、聞こえる音もさらに大きくなってきた。すると、ぽっかり空いた窓のような場所から、流れ落ちる大量の水が見える。


「そこの横道に入ると、何とか水に触れる距離まで近づけるぞ」


数人が楽しそうに見に行った。


「何のために触れるようにしたのかな?」

「リナーリちゃん、多分水を汲むためだと思うわよ」


行かすに残っていたリナーリの疑問にユリが答えた。ソウは案内のため、滝に近づく道の方へ行ってしまった為だ。


少しして皆戻ってきたので、歩き始めた。また道が暗くなり、消していた灯火(ともしび)を再び灯し、鍾乳洞を抜けるまで歩いた。


鳥の声が聞こえてきて、道が広く明るくなり、完全な外に出ることが出来た。全員が上着をナップザック等にしまい、ソウの案内で、先ほど裏から見た滝が綺麗に見える場所迄来た。


「この辺でお昼ごはんにしたいと思います」


ユリとソウは、椅子付き折り畳みテーブルを2台出し、料理等を並べた。


「細工寿司、袋サンドイッチ、鶏丼、ポテロン、モカムース、お茶、冷茶があります。食べきれないものは持ち帰って構いませんが、運ぶのはこちらでしますので、今預けるか、残してから預けるかしてください」


皆が選んでいる間に、敷物やミニテーブルをいくつか出し、椅子で食事をしたい人にはそのまま椅子付き折り畳みテーブルを使ってもらい、各人が好きな場所で好きなように食べた。敷物に座らずに、その辺の岩に座っている人もいる。


「ユリ様ー、細工寿司美味しいです!」

「イポミアさん、良かったわね」 

「ユリ様、全部美味しいです!」

「リナーリちゃんも、よかったわね」


チラッと見ると、キボウは、ゼリーを食べていた。どんだけゼリーが好きなんだろう。


「あの、ポテロン2個目食べても良いですか?」

「2個でも3個でもどうぞ。午前中のゼリーもまだあるはずよ」


セリとカンナは、ポテロンを取りに走っていった。


「ユリー、ゼリーは残さなくて良いのにゃ?」

「誰にも頼まれていないから、残ったらキボウ君が全部食べても大丈夫と言ってあるわよ」

「わかったにゃ」


ユメは心配して聞きに来てくれたらしい。ユメはポテロンを取り、座っていた場所に戻っていった。


「ソウは、もう良いの?」

「俺はしっかり食べたよ。ユリこそみんなに気を遣ってばかりいて、ちゃんと食べてる?」

「大丈夫よ。ちゃんと食べているわ」


ユメとキボウが、リラがいるところで一緒に食べているので、珍しくユリとソウは2人で食事をしている。


「そう言えば、鍾乳洞の説明の時、多言語が混ざったように聞こえて一部分からなかったんだけど、何の説明をしたの?」

「あー、この国の文字にした時に、氷柱石と石筍を分かりやすく解説したんだよ。日本語は文字を見るとすぐ意味が分かるけど、知らない単語見ても見分けられないからね」

「へえ! ソウって、本当に凄いわね」

「ありがとう」


2人は別に、いちゃついているつもりは毛頭無いのだが、回りは静かに見守っていた。


食事が終わり大分時間がたち、休憩を終え、再出発をすることになった。


「この後は、渓谷を歩いて帰るだけなので問題もないとは思いますが、引き続き、怪我や体調不良は早めに申し出てください」


全員の返事の後、歩き出した。川の流れがそばに有るので大分涼しいが、鍾乳洞に比べると外はかなり暑い。


「汗を(ぬぐ)うのにタオルが必要な人は、声をかけてくださいね」


ユリの声かけに、殆んどの人がタオルを欲して声をかけてきた。ユリは、普通のタオルより長めのスポーツタオルを渡し、差し上げますが、要らなければ返却してくださいと添えた。


「長くて首にかけやすい!?」


温泉の時もタオルを貰ったメンバーが、驚いていた。


「まーま!」


シーミオの声に、皆がそちらを見た。何か、大きな物を拾ったらしい。軽々持ち上げているので、軽いものなのだろう。興味を持った人が集まっていた。

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