猫耳
シィスルとマリーゴールドがホワイトチョコを刻み、イチゴ生チョコを作っていた。
「マリーゴールドちゃんは、何か自作の物を持ち帰らなくて良いの?」
「はい、あの、私も、ポテロンをお手伝いさせていただてもよろしいでしょうか?」
「かまわないわよ。リラちゃんが仕切っているから、手伝うと良いわ」
「ありがとう存じます」
「マリーゴールドちゃん、ポテロンは、どちらのお土産にするの? 両家に持って行きたいなら、2日目に迎えに行くときにも、持参するわよ」
「よろしいのですか? ありがとう存じます」
「ユリ様、私も買っていって良いですか?」
「シィスルちゃん、何個必要? 元々30個くらいは、お土産で持たせようと考えていたんだけど、足りない?」
「30個!? 足ります!足ります! 私が3つくらい食べられます!」
「ユリ様、何を何個渡す予定か、伝えておいた方が良いと思います」
リラから突っ込み、もとい、助言された。
「当日渡して驚かすのは、確かに迷惑だわね。うふふ」
やっぱりかと笑うリラ以外は、リラの予測に驚いていた。
「細工寿司10人前、袋サンドイッチ5人前、鶏丼15人前、ポテロン30人前を予定しているわ」
「ユリ様、何で袋サンドイッチは、5人前なんですか?」
「シィスルちゃんが、5人前欲しいと言ったからよ」
リラの問いにユリは答えた。すると、少し考えたようなシィスルが、おずおずと言い出した。
「ユリ様、大変申し訳ないのですが、ポテロン以外は、5人前にしてください。マリーなら配る相手も居ると思いますが、実家は商売なので、食べた人から、取り寄せてくれと言い出されると、対応できません」
「あら、ごめんなさい。なら、ポテロン増やす?」
「知り合いに配っても良いのですか?」
「シィスルちゃんの判断でかまわないわよ」
「では、食事物は5人前ずつ、ポテロンは40個良いですか?」
「良いわよ。あちらに冬箱有るわよね?」
「はい。商売用の大型冬箱があります」
「なら、番重で置いていくから、帰ってくるとき空で返してね」
「はい。ありがとうございます」
「ユリ様! マリーには、料理10人前ずつと、ポテロン30個を2回分でお願いしまーす」
「それだと、細工寿司は余るから足りるけど、袋サンドイッチが少し足りないわね。リラちゃん、まだ計量してないでしょ? 15人前増やして計算してちょうだい。予定より余るものはそのままで良いわ」
「はーい」
ユリとリラで、マリーゴールドの持ち物が決まっていく。
「え、え、そんなにたくさん、よろしいのですか?」
「足りなければ、増やすわよ?」
「ユリ様、ありがとう存じます」
忙しそうに動いていたメリッサが、確認に来た。
「ユリ様、お手伝いの人に、次は何をして貰えば良いでしょうか?」
「パウンドケーキの型紙たくさん作って、型に120セットしてもらってください」
「はい。型紙教えたら、私も計量手伝います」
「お願いします」
10時前には、ユメとキボウが戻ってきた。ソウが顔を出しに来て、明日の手続きや挨拶まわりが終わったと報告してきた。10時頃イリスとマーレイが出勤してきて全員が揃い、午前中に、細工寿司と袋サンドイッチとポテロンの半分と、休みの間のパウンドケーキの予定分の一部を焼き上げた。貴族家からの注文分で100個ほど有り、レギュムから頼まれている。
話だけで、現物を見たことがなかったイポミアが、細工寿司をとても喜んでいた。楽しそうに全ての種類を巻いてみていて、割りと器用なことに、ユリが驚いた。
11時30分頃には、生姜焼の昼食を全員で食べ、お手伝いの2人には、お店で出したことがない袋サンドイッチと、出来立てのポテロンをお土産に渡すと、役得だと喜んでいた。他に早くから並んだ人は居らず、せいぜい1時間前の12時頃からだった。
少しだけ早く、12時30分から開店し、午後からは残りのパウンドケーキとポテロンと、鶏丼を作った。
営業が終わる頃、リナーリが訪ねてきた。
「ユリ様、姉が作ってくれた背負い鞄は、私でも作れますか?」
「リナーリちゃん、折りバラ上手だったわよね? 器用そうだし、覚えればすぐ作れるんじゃないかしら?」
ユリが、リナーリの分として教えたナップザックは、耳がついた黒猫型なのだ。どうやら、知り合いから欲しいと言われたらしい。ちなみに、シーミオの分として教えたのは、ヘタがついたイチゴ型だ。物凄く喜んでいるそうだ。
「明後日以降で良かったら、ここで教えるわよ? 欲しい人を連れて来たら良いわ」
「ありがとうございます!」
マーレイやレギュムには、普通の形のナップザックを作ったが、お任せと頼んできたリラとイリスとクララとセリとカンナに、猫耳をつけて作ったら、シィスルとマリーゴールドとメリッサとイポミアが、教わりに来たのだ。尚、グランの分は、シィスルがユリから習って、片掛の魚型を作っていた。




