休憩
ユリがお昼休みから戻ると、厨房に全員が揃っていた。早速ソウとイリスにモヒート風のドリンクを渡し、休憩メンバーを交代した。
「イリスさん、配膳一人で大丈夫ですか?」
「ご心配には及びません」
「ユメちゃん、配膳や注文はしなくて良いから、黒猫クッキーだけ、頼まれたら売って貰える?」
「わかったにゃ!」
「キボー、てつだう!」
「キボウ君、お願いします」
キボウにも籠入りのクッキーを渡し、販売を頼んだ。
「ユリ、俺は何をすれば良い?」
「注文が入ったら、モヒート風と、15分後の13時から、冷やし中華とスープの販売をするから、その助手をお願いします」
「了解」
ユリは話しながらも、冷やし中華を仕上げていた。リラは手伝いながら、仕上げを覚えていた。メリッサとイポミアは、自分で温かいスープを注いで来たらしく、冷やし中華の出来上がりを待っているようだった。マーレイが、リラの分のスープも持ってきて、ちょうど出来上がった冷やし中華をユリから受け取り、作業台のひとつに置き、椅子を持ってきていた。
「さっき見て、早く食べたかったです!」
「冷たい麺って、夏にぴったりですね」
「難しい工程無かったから、ベルフルールでも出したいなぁ」
「出すなら、タレの配合教えるわよ?」
「ありがとうございます!」
ユリは、冷やし中華用に皿を15枚並べ、具もトレーに並べ、すぐに出せるように用意した。
「ユリ様、注文は何時から受け付ければよろしいでしょうか?」
「先に聞いてきても良いわよ。品物は13時から出すけど」
「では、入れ替りの事もございますので、5分前に戻ってこられるように聞いて参ります」
「お願いします」
そして5分前に、イリスは厨房に注文を通してきた。
「冷やし中華9、コーンスープ12お願いします」
「冷やし中華9、コーンスープ12了解です」
厨房にいた全員が驚いた。
注文が全員じゃない!?
来客に、子供や既に食べ終わっている女性がいて、少なめとはいえ、今から一人前は食べられないらしい。入れ替わればほとんどの人が注文するのだろう。
急いで9人前仕上げ、ソウがスープを12カップ用意してくれた。ユメとキボウがカトラリーを揃え、1人前ずつ運び、4人前ほど手伝ってくれた。残りの5人前は、イリスが2度に分けて運んでいた。なお、スープは全てイリスが運んだ。
「ユメちゃん、キボウ君、配膳ありがとう」
「よかったねー」
「少しだけにゃ」
「ユメちゃん、キボウ君、どうもありがとうございます。大変助かりました」
戻ってきたイリスも、ニコニコしながらお礼を言っていた。
「ユリ様、休憩は分けて取っても良いでしょうか?」
食べ終わったらしいメリッサが、ユリに質問してきた。
「食休みをしないで、配膳に加わると言う意味?」
「後10分ほど食休みをしたら、配膳に加わり、イポミアが戻ったら、残りの時間分を休みたいと思います」
「お店としてはとてもありがたいけど、メリッサさんが大変じゃない?」
「いえ、手を出したくてうずうずしてしまって落ち着かないので、いっそ正式に許可を貰って手伝ってしまおうかと思いまして」
「どうもありがとう。よろしくお願いします」
メリッサは、ユリがわかりやすいようになのか、13時15分から仕事を開始していた。
客が入れ替わり始め、空いた食器を下げてきたイリスが、配膳の用意をしているメリッサに驚き、説明され、お礼を言っていた。
メリッサが加わってから少し経った頃、冷やし中華を持ち帰りたいと言い出す人がいたらしい。メリッサが、ユリに相談に来た。
「ユリ様、足を怪我したらしい知り合いに、冷やし中華を持ち帰りたいと言っているのですが」
「何処の人? 近所の人?」
「聞きに来た人は知り合いです」
「んー、なら、器代がかかるけど良いか、聞いてきて貰える?」
「ありがとうございます!」
メリッサは、すぐに戻ってきた。
「ユリ様、食べる人も、よく聞いたら近所の知り合いでした」
ユリは、大きいココット3つに、具と麺とタレを分けて入れ、器代を含んだ料金を請求するように伝えた。器は返しに来れば良いので、かなりのサービスだ。
少し困ったようなイリスが、質問に来た。
「ユリ様、今メリッサが売ったのは、他の方にも可能でしょうか?」
「受け取ってから10分以内に食べ始められる環境なら、良いわよ」
「かしこまりました」
明日も明後日も売る予定なので、無理ならしょうがないと、すぐに諦めて貰えたらしい。
「ユリ、お茶は売っても良いにゃ?」
「ユメちゃん、どのお茶?」
「私が飲んだミントティーにゃ」
「さっき飲んだ どのバージョンも、ハーブティーとして売って構わないわよ」
「ありがとにゃ」
ユメはお客と話し込んで、結果的に勧めて来たようだ。空の茶器とミントとレモンスライスと蜂蜜を持って行った。バタフライピーは要らないらしい。
お湯はどうするんだろう?と思い、ユリが心配して見ていると、ソウにヤカンで頼んでいた。
「ユメー?」
「キボウ君、ユメちゃんなら、お店にいるわよ」
「わかったー」
キボウはユメに頼まれ、バタフライピーの生の花を取ってきたらしい。キボウなら高さに関係なく収穫できるので、頼んだのだろう。
お湯が沸いた頃、リラとマーレイとイポミアが戻ってきた。
「イポミアさん、メリッサさんに休憩に入るように声をかけてくれる?」
「はい」
戻ってきたメリッサに対しユリは、希望のデザートを聞いた。見たことがないものが良いと言うので、明日から予定の梅ジュースゼリーと、ユリの鞄に入れたままになっているいくつかのデザートを提供すると、とても喜んでいた。
流石に梅酒ゼリーは、夕食時まで待って出すつもりだ。
全員揃ってからも特に問題もなく、第三回の女性と未成年者優遇デーは無事終了した。ちなみに、今日はラベンダーは来なかった。
冷やし中華
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