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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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薄荷

「なーにー?」

「これは、冷やし中華と言う名前の、冷たい麺料理よ」

「つめたいー?」

「温かいスープもあるわよ」


初めて見る料理に、キボウから質問された。


「何のスープにゃ?」

「中華風コーンスープよ」


ユメはカトラリーの用意のために聞いたらしく、中華風と聞いてレンゲを持ってきた。

あれ? 何か覚えているの? とユリが不思議に思っていると、ユメが説明してくれた。蓮を見に行ったあと、リラから教えられたらしい。


イリスも来て、5人で冷やし中華を食べ始めると、ソウ以外は、食べながら凄く驚いていた。


「つめたいー!」

「さっぱりして食べやすいにゃ」

「夏はこれだよな」

「なんだかサラダのような不思議な食べ物ですね」


「冷たい麺料理って、他に無いの?」


ユリは、イリスに聞いてみた。


「私は初めていただきました。七夕の時の冷たい麺も美味しかったですが、ユリ様のお店以外では、最初から冷たい麺料理は、存じ上げません」

「あら、そうなのね。もし苦手なものだったら教えてくださいね」

「はい。ですが、こちらは食べやすくてとても美味しいです」

「それなら良かったわ」


ユリが話している間に、ユメがコーンスープを飲んだらしい。


「知ってるコーンスープと違うにゃ!」

「うふふ」

「あはは。同じ反応だな」

「何にゃ?」

「なーにー?」

「以前もユメが、知ってるコーンスープと違うって言ったんだよ」

「キボー、しらなーい」

「ユメちゃんのお誕生日の時のスープと味が違うって言う意味よ」

「わかったー」


コバヤシのラーメン屋で中華風コーンスープを飲んだときと同じ反応だったので、ユリとソウは思い出して笑っていたのだ。


食べ終わったユリに、リラが話しかけてきた。


「ユリ様、午後から こちらの冷たい麺を出されるのですよね?」

「その予定よ。軽めの1人前、お1人様1回限りね」

「茹でるの大丈夫ですか?」

「既に茹でてあるわ。ユメちゃんのリュックサックに、店売りの1人前量に分けて100人前、お椀に入れてあるわよ。何か作業を進めるなら、薄焼き卵を焼いて細切りにしてくれると助かるわ」

「はい。お任せください」


リラが話し終わると、ユメが待っていたかのように話しかけてきた。


「ユリ、キボウから聞かれたにゃ。外のペパーミントは、使わないのにゃ?」

「いっぱい生えてる?」

「大きいプランターに、いっぱいにゃ」

「なら、ほとんど刈り取ってきましょう。根っこが残っていれば再生するわ」

「そうなのにゃ!?」


ユメとキボウが食べ終わるのを待ち、畑に有るプランターを見に行った。

最後にユリが確認したときの10倍くらい、ペパーミントは繁っていた。半日陰のその場所が、合っているのだろう。


ユリは、ハサミと籠を取り出し、根本の方から切って見せた。


「もっと残さなくて大丈夫なのにゃ?」

「下の方の葉だけ残しても、その茎は、結局枯れちゃうのよ。物凄く上の方だけ摘み取るなら、多分分岐して伸びると思うんだけど、お茶に使うなら、このくらい下から切り取るわ」

「わかったにゃ。私に切らせてにゃ」

「はい。お願いします」


ユリは、ハサミと籠をユメに渡し、刈り取りを頼んだ。


「良い匂いがするにゃー」

「いいにおいー、いいにおいー」

「ミントって香りが強いわよね。それ摘んだら、ミントティー飲んでみる?」

「飲んでみるにゃ!」

「のむー、のむー」


「お湯を注いでそのままでも良いけど、酸味を足すならレモンを入れたり、甘味を足すなら蜂蜜や砂糖を加えたり、好きにアレンジすると良いわ」

「バタフライピー入れても良いにゃ?」

「良いわよ。生の花を入れると華やぐけど、色を出したいなら、ドライをいれた方が良く色が出るわよ」

「両方入れるにゃ!」


ユメが頑張って刈り取っているが、ワッサワッサに生えているため、なかなか進まない。


「私も手伝うわ」

「頼むにゃ」


光合成のためにまばらに残し、ユリとユメでペパーミントをほとんど刈り取った。


籠と(ザル)いっぱいにペパーミントを厨房に持ち帰ると、リラがよってきた。


「それはなんですか?」

「ミントよ」

「ミントティーを作るのにゃ!」

「つくるー、つくるー!」


リラがガラスポットを出してきてくれた。4つ有る。

ユリは、しっかり自分の分の想定をしているリラに少し笑い、ポットに入れたいものを選ばせ、ミントを渡した。


ユメはミントとバタフライピー。キボウはミントと蜂蜜。ユリはミントとスライスレモン。リラはミントのみを入れ、とりあえず味を見るらしい。


沸かした湯を注ぎ、少し時間を置いた。

ガラス製のティーカップに注ぎ入れ、全員が飲んでみた。


「スッキリしてるにゃ!」

「さっぱりして良いですね!」

「久しぶりに飲んだわ」

「あまーい!」

「え?」「にゃ?」「うふふ」


キボウのお茶は、蜂蜜を入れすぎだと思われる。


「これも出すんですか?」

「出しても良いけど、面倒じゃない?」


ユリは、リラと話しながら、ミントを手の上にのせ、パンと叩き、グラスに入れ、炭酸水と蜂蜜とスライスレモンを加え、軽く混ぜたあと、氷を加えた。


「モヒート風よ。私、カクテルは詳しくないんだけど、これにラム酒を加えるとモヒートって言うカクテルだったような。いえ、レモンじゃなくてライムだったかも?」

「それどうするんですか?」

「マーレイさん、良かったらどうぞ」

「ありがとうございます」


リラは、マーレイからひと口貰っていた。


「ユリ様ー!この、もひーとふう?って言うの出しましょう!」

「ユリ、私も飲んで見たいにゃ」

「キボーも、キボーも!」


ユリは全員分を作り、今居ない人の分は、指輪を杖にかえ、しまった。


リラに何か言われたキボウが、グラスを持ったままお店に行き、メリッサとイポミアが飛んできた。


「あ、ユリ様、キボウ様が持ってきたのは何ですか?」

「モヒート風の冷たいドリンクね」

「それ、15人前、お願いします」

「はいはい。あなたたちのも有るから、今飲んでみる?」

「ありがとうございます!」「ありがとうございます」


15人前は、リラが責任をもって作るらしい。


「いくらにしますか?」

「材料が有限だし手間もかかるから、700(スター)くらい貰ったら?」

「ユリ様、レモンはまだありますか?」

「出しておくわ」


ユリは鞄からレモンをたくさん出し、1個分だけスライスしておいた。


「ユリー、たりない?」


いつの間にか戻ってきたキボウに聞かれた。何の事だろう?


「キボウ君、なあに?」

「これー」


キボウは、飲んでいるグラスを掲げていた。


「あー、材料の話ね。ペパーミントが当分生え揃わないからね。レモンは買ってこられるけど、ペパーミントは買うとかなり高いのよ」

「わかったー」


まだ少しだけ残っている休み時間のために、ユリは少し休もうと階段を上がるのだった。

薄荷=ハッカ(ミント)

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