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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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宿泊

8月1日Mの日(つきのひ)の朝。

昨晩休憩室に泊まっていったリラは、ユリが朝の準備に起きたときには起きていて、ユリにお礼を言って早朝に帰っていったため、ユメには会わなかった。


朝食の時、メイプルの話題が上がった。


「あと1か月ね」

「メイプルたちか。ユメとキボウも、毎日ご苦労様だな」

「キボー、がんばるー」

「あと1か月頑張ってくれ」

「わかったー」


ユメは何も言わなかった。今日の差し入れを受けとり、キボウと出掛けていった。



その日の夜、ユメから質問された。


「ユリ、どうして私とキボウは、毎日世界樹の森に行くのにゃ?」

「メイプルさんとアネモネさんとプラタナス君に、カンパニュラちゃんと同じ差し入れを届けるためだと思うわよ?」

「メイプルって、誰にゃ?」

「メイプルさんとアネモネさんは、カンパニュラちゃんのご両親で、プラタナス君は、カンパニュラちゃんのお兄さんよ」

「カンパニュラの家族は、何であんなところに住んでいるのにゃ?」

「プラタナス君の治療のために、離れて暮らしているのよ」

「そうだったのにゃ。ありがとにゃ」


3月1日に出発したメイプルたちのことは、記憶に無いらしい。

どうやら、一月(ひとつき)に二か月分記憶を失っていくようで、2月に(おこな)ったイベントの、猫の日の話などをしても、一切記憶に無いようだった。8月中には、3月と4月の記憶が失われるのだろう。



8月2日Fの日(かえんのひ)

ベルフルールのメンバーを呼んで、シィスルとグランの結婚のお祝いの食事を振る舞った。メリッサは、一度戻りシーミオを連れてきた。ベルフルールの配膳の2人も呼んだので、総勢18人になり、椅子を増やした。


4人席4人 ユリ ソウ ユメ キボウ 

4人席5人 リラ グラン シィスル マリー リナーリ 

3人席3人 マーレイ イリス レギュム

2人席3人 メリッサ シーミオ イポミア 

2人席3人 カンナ セリ クララ


細工のテリーヌに皆が感心し、是非教わりたいと、お祝いのはずなのに、仕事と勉強の話ばかりしていた。


食事会が終わってから、リラが泊まりに来た。

そのまま泊まるのかと思ったら、一度家に帰り、寝巻きや着替えを持って戻ってきた。


階段下で、ソウが結界通過を許可し、リラも階段を上がれるようにしてくれた。


「うわー。触れる壁だったところが通れるようになると、何か面白いですね」

「え? リラちゃん、ソウの結界に触れたの?」

「この階段の入り口ですか?」

「そうね」

「はい。階段が透けて見えるうっすら白い壁でしたよ。触った感じは、他の壁と同じ感じです」


リラの感想にユリは慌てた。


「ソウ、厨房の入口の結界と、階段の入り口の結界は、何か違うの?」

「なんで?」

「スマックさんが来たとき、結界に触れず、押し返されるような見えない壁って言っていたのよ」

「んー、多分リラの方が、スマックより魔力が多いんじゃないか? もしくは、リラ、結界張れるかもしれないぞ?」

「そうなんですか!?」


そんな話をしながらリビングに案内した。


「何の話にゃ?」

「リラちゃんがね、結界が見えるみたい。そういえば、イリスさんも見えていたわね」

「シッスルも見えていたにゃ」

「結構いるのかもな」

「リラちゃん、結界覚えてみる? 出来る確証はないけど、教えるだけなら教えるわよ?」

「ユリ様のお時間があるときにお願いします」

「では、今度どこかに出掛けたときにでも試してみましょう」

「ありがとうございます」


「そういえば、さっき思ったんだけど、俺、キボウには許可出してなかった。今更だけど、キボウ、ちょっと来てくれる?」

「なーにー?」


ソウは改めてキボウに結界通過の許可を出しに行ったのだった。必要の無い行為とも思えるが、万が一キボウの魔力が足りない時に入れないのでは可哀想である。


「うふふ、だからキボウ君は、リビングに直接来られるのね」

「にゃるほどにゃー」

「皆さん本当にすごいですよね」

「私は、貴女の絵の才能やデザインセンスの方が凄いと思うわよ?」

「ありがとうございます」


ソウとキボウが戻ってきた。


「そう言えば、全員で出掛ける話は、どうなったのにゃ?」

「それ、リラちゃんに聞こうと思っていたのよ。シィスルちゃんやマリーゴールドちゃんの休暇は、いつにするの? 帰る前に皆で出掛ければ、お店を休まないで済むと思うのよね。そして、前回みたいに途中まで送れば良いと思うのよね。うふふ」

「あ、ユリ様、マリーは実家に帰ると思いますので、シィスと方向が違うと思います」

「そう言えば、ハニーイエロー男爵家は北東方向って聞いたわね」


「そう言えば、コバルトブルー伯爵家は、どこにあるの?」

「ブルー公爵家のそばにあるぞ、馬車だけで行くより、転移陣を使った方が、移動は早いだろうな」


転移陣は、王城、公爵家、侯爵家、一部伯爵家の他、野原や森の中等や他国にもある。転移組の転移に使用している転移陣は、野原にある転移陣だ。


「ベルフルールの休みはいつにゃ?」

「今年は、少し長くとろうと考えています。シィスはお兄ちゃんを連れて挨拶に回るみたいだし、マリーも色々準備が有ると思いますので」

「そうよね」

「ユリ様の予定はどうなっていますか?」

「8月の後半に1週間(実質9日)くらい休もうかなって考えているわ。また、夏バテしたら困るからね」

「それなら、シィスとマリーに少し相談しますけど、おおよそ合わせて休むことにします。そうすれば、シィスもマリーも気にせず休めると思います」

「では、詳しい日程は任せるわ」

「ありがとうございます」


「ユメちゃんは、どこか行きたいところはある?」

「少し涼しいところに行きたいにゃ」

「滝と、渓谷(けいこく)と、鍾乳洞(しょうにゅうどう)の見学とか行くか?」

「どこにあるのにゃ?」

「王城と世界樹の森の間くらいの辺りだな」

「滝なんてあったのにゃ」

「方角的に、世界樹の森にあるらしい湖の水源じゃないかと思うよ」

「そこに行きたいにゃ」


「リラちゃんも良い?」

「私も行ってみたいです」

「動きやすい服と履き物で、背負える鞄だな」

「ユリ様、お弁当は前日に、()()()作りましょう!」

「ありがとう」


お出掛け先が決まったので、ユメがお風呂に入るまで、トランプなどで皆で遊んだ。


先にユメが入り、寝てしまったので、リラにお風呂を案内した。


「厨房にもあるから水道はわかるわよね。簡単に説明すると、お湯と水が同時に出ます。ここを回すと温度が変わるけど、手だけで温度を確かめてから使うようにしてね。このレバーで、カランとシャワーが切り替わるわ」


混合水栓の説明をした。リラは「お湯!?」と、かなり不思議そうに聞いていたが、特に質問はされなかった。


「これが液体石鹸(ボディーソープ)、これが洗髪剤(シャンプー)、これが洗髪修復剤(トリートメント)、どれもここを押して手にのせて、使うと良いわ」

「はい」

「湯舟にお湯をためるなら、このボタンを押してね」

「はい」

「ボディーブラシはこれ、ヘアブラシはこれ、タオルとバスタオル(大きいタオル)はここにあるから好きに使ってね。昔聞かれた、洗濯してくれる箱は、これ。これに洗濯するものを入れて機械に指示を出すと、水洗いをします。洗いたいものがあったら、横のかごに入れておいてね。朝までに乾くわ。私はリビングにいるから、わからないことがあったら、以心伝心で聞くと良いわよ」

「はい」


「ユリー、俺、向こうで風呂に入ってくる」

「はーい、行ってらっしゃーい」


ユリは新しいバスマットを出して、リラを置いてお風呂場を出た。


「誰も開けないけど、この外扉の鍵をかけておくと良いわよ」

「はーい」


ユリは明日の用意をしながら、リラが出るのを待った。

既に寝ているユメの部屋ではなく、作業部屋にリラの布団を敷いた。

特に質問もなく、30分くらいで、リラは濡れた髪を拭きながら出てきた。


「あーごめん。ドライヤーの説明を忘れていたわ」

「ドライヤー?」

「鏡の前に戻ってくれる?」

「はい」


リラの方が背が高いので、椅子に座らせた。


「少しうるさくするわよ」


ブオーとドライヤーの風を当て、リラの髪を乾かした。

3分もしないうちに乾かし終わり、リラは大層感激していた。


「す、凄いです」

「さあ、キボウ君に替わりましょう」


キボウにお風呂に入ってもらい、戻ってきたソウにリラを任せ、ユリも、ソウの家に転移しお風呂に入って来た。


ユリが戻ってくると、リラはリビングに置きっぱなしになっていた本を読んでいた。


「ただいま。リラちゃん、本を見たいなら、今日寝る部屋にたくさんあるからどれを読んでも良いわよ」

「そうなんですか?」


作業部屋に案内すると、大量にある料理の本や手芸の本や図鑑に、リラは大興奮で喜んでいた。


「遅くまで起きていても良いけど、7時30分には起きてね。喉が渇いたら、この冬箱のお茶を飲んだら良いわ」

「はい!」


7時30分は、朝ご飯の時刻である。

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