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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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蓮華

大きな池や沼があるところに、美しい花が咲いているとの情報を得て、見に行くことになった。


「お弁当は、昨日のうちに全て作ったから、今日はお茶を用意するだけなのよ」

「お茶は今日用意するんだ」

「あ」


何となく、直前の方が冷たさが違うような感覚だったけど、魔道具の鞄の中に入れたものは、外で1年経っても、中は5分程度しか過ぎないとユリは思い出した。そのため、お弁当は昨日のうちに作ったのだ。


二人で朝食を作りながら、今日の予定の確認をしていた。


「結局、誰が出席するの?」

「リラちゃんが来たかったらしいんだけど、リナーリちゃんの指導をするから無理かなぁって、悩んでいたわ。もし来るなら、7時までに連絡をして、7時半に来る約束よ」

「まだ7時前か」


ソウは笑いながら、一旦部屋に戻っていった。

ユリはおやつを詰め込んだあと、食パンの耳をカットしていた。


「うふふ。これで良いわ」


カットした食パンの耳を袋に詰めていると、リラから以心伝心が届いた。


『リラです。行けるようになりました!急いで伺います』

『まだユメちゃんが起きていないから、慌てなくて大丈夫よ』


時計を見ると、6:59だった。ユリは、ユメを起こしにいった。


「ユメちゃん、7時になったわ」

「にゃ?」


少し寝ぼけたユメが、体を起こし呟いた。


「おかあさま」

「ユメちゃん、お出掛けしますよ。朝ご飯を食べましょう」


「にゃ! おはようにゃ。なんか夢を見ていたにゃ」

「リラちゃんも、来られるみたいよ」

「良かったにゃ」


ユメは顔を洗いに行き、リビングにはソウとキボウが待っていた。


全員揃って、食べながら説明した。


「今日は、池や沼があるところに花を見に行きます」

「何の花にゃ?」「なーにー?」

「予定では、(はす)と、睡蓮(すいれん)です」

「予定なのにゃ?」

「水面の、美しい花としか聞いていないのよ」

「楽しみにゃ」

「たのしみ、たのしみー」


食事が終わるとユメとキボウは、畑を見てくると言って、先に階段を下りていった。


「ユリ、他に手伝うことある?」

「もう無いわよ。私も着替えてくるわ」

「了解」


ユリは夏物のワンピースに着替えた。このワンピースは、ソウの実の両親、月見夫妻から贈られたものだ。ユリが選ばない感じの上品なデザインで、品質の高い布と縫製で、とても軽やかで涼しい。なんと御中元で、カエンの助言らしい。


「さすが月見家。上品さが違うわね」


ユリがあまりに洋服に興味がないので、まわりは服を与えたくなるらしい。和装はしっかり持っているが、洋装はある程度しか持っていないので、とてもありがたい。


「ソウ、お待たせ」

「それ、カエンが持ってきた服?」

「うん。とても良い感じよね。自分じゃ選ばないからありがたいわぁ」

「良かった。似合ってるし、良い感じだね」

「うふふ。さあ、出掛けましよう」


店の外に行くと、ユメとキボウの他、リラとマリーゴールドが待っていた。


「おはようございます」「おはようございます」

「おはよう。シィスルちゃん1人で大丈夫なの?」

「今日は、臨時で父が補助する予定ですが、作り置きがなくても店が回せるか、試してみたいと言われました」

「あー、マーレイさんがいるなら何とかなるわね」

「そのうち店を休みにして、全員一緒に出掛けたいなと思っています」

「そうね。どこか行きましょうね」


「みんな一緒に()()()()()()()にゃ!」


ユメの言葉に、全員が一瞬「え?」と思い、察してしまった。みんなで足湯に行った記憶は残っていないことを。


「必ず行きましょうね」

「ありがとにゃ」


場所を聞いて知っているソウが先に転移する。ソウはユリではなく、キボウを連れて転移していった。すぐにキボウが迎えに来て、全員を連れていった。


「水の匂いがするにゃ」

「思ったより、涼しいわね」

「水辺が多いから気温が低いのかもな」

「この畑、何が植わってるんだろう?」

「あ、全く酔わなくなりました」

「よかったねー」


川と畑しか見えない場所から歩き始めた。


「川に黄色い花が見えるにゃ」

「んー、コウホネかしらね?」

「ユリ、凄いにゃ」


立ち止まって川を見ていると、地元農民と思われる人から、にこやかに話し掛けられた。


「花、見に来たんかー?」

「あ、はい。水辺の花が綺麗との噂を頼りにまいりました」


ユリが応答したが、視線がユメで止まっていた。


「そいなら、こちらん道から、もしや、黒猫様?」

「呼んだにゃ?」


ユメが返答したことにより、少し震えながらユリを見た。


「まさか、聖女王様!?」

「うふふ。お忍びなので、内緒でお願いしますね」

「か、かしこまりましたー」


何か悩みながら、ユリたちの後を着いてきた。


「急ぐなら、先に行って構わないぞ?」


ソウが声をかけたが、そんなことは、思い付きもしなかったと言わんばかりに驚いていた。


「あ、あの、美味しいお店の、料理の、野菜の、珍しい、」

「私は平民ですので、私が聞きましょうか?」


何て話せば良いか言葉にならないらしい姿を見て、リラが声をかけていた。


リラに言われ安心したのか、バリバリの方言を早口で捲し立てていた。ユリも聞いていたので、むしろリラより話を理解した。


外に出さない素材で、珍しい野菜があり、今収穫をしているからとすすめたかったらしい。


「それって、綺麗な水の野菜ですよね? 山葵(わさび)ですか? 蓴菜(じゅんさい)ですか?」

「ワサビはありませんが、watershieldです」

「ウォーターシールド? 水の盾?」


ユリがわからないでいると、ソウが何か思い出し、教えてくれた。


「ユリ、蓴菜のことだと思うよ」

「そうなの? なら、欲しいわ。売って貰えるなら、お願いします」


用意してくるので先に花を見てきてください。と、走って行ってしまった。


「確かに、蓮の花を先に見ないとね」

「急ぐか」


ソウの案内で、蓮の池に到着した。


「うわ! 花、大きい!」

「こちらが蓮の花で御座いますか?」

「白いのもあるにゃ!」

「ロータス、ロータスー!」

「ちょうど良い感じね。早い時間に来た甲斐があるわ」

「池によって、花の種類が違うみたいだな」


しっかり囲まれた池が何か所もあって、上からも見えるように整備されたらしい橋もかかっていて、花を色々な方向から見ることが出来、かなり楽しい。


(つぼみ)も大きいにゃ!」


男性の手よりも大きな蕾に、ユメが驚いていた。


「あ、散った花弁(はなびら)がある! 前にユリ様が教えてくれた散蓮華(ちりれんげ)だ!」

「あら、よく覚えていたわね」


「リラさん、何で御座いますか?」


マリーゴールドには、心当たりがなかったらしい。


「杏仁豆腐を食べるときに、レンゲって呼ばれる陶器の匙があったでしょ? あれの名前の由来らしいよ」

「あー、コバヤシのラーメン屋か」


ソウも当時を思い出した。


「ちりれんげー? なにー?」

「キボウ君、今度食べに連れていくわね」

「わかったー」


白い蓮は、真っ白な花と、少しピンクのラインがあるタイプとあって、ピンク色の蓮は、濃い色の花や、薄い色の花があり、いずれも花弁の付け根は白かった。


「蓮は、荘厳(そうごん)な感じよね」

「ユリ様、何ですか?」

「神々しいような、(おごそ)かな感じって意味かしら」

「開く花弁の真ん中から何か光るものが出てきそう」


リラの感想に、皆で想像をして、笑ってしまった。

そんな話をしながらも、リラは素早くスケッチしていて、少し覗いて見ていたら、蓮の花の中心が輝いている絵があり、絵を描けるって凄いわぁとユリは感心したのだった。


「ユリ、気が済んだら、少し離れた場所に行くぞ」

「はーい」

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