青梅
小梅のカリカリ梅を漬けた10日後のFの日、大量の青梅が届いた。40kg以上有る。梅酒と梅シロップに20kgずつ使おうと考えている。
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8リットル10瓶 梅酒
青梅 2kg
氷砂糖 2kg
酒 3600ml(2升)
8リットル5瓶 梅ジュース
青梅 4kg
氷砂糖 3.8kg
グラニュー糖 200g
1リットル瓶数本
りんご酢
黒酢
味噌
氷砂糖
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「こんな感じかしらね」
ユリは、昼休みに必要な瓶の数を計算し、メモを書いていた。
「ユリ様、梅酒って、あのシャーベットに使ったビン入りのお酒ですよね? 梅ジュースは梅の絞り汁ですか?」
絞り汁? リラはどこからその発想が? と考え、リンゴジュースやオレンジジュースからね! とユリは思った。実際は、ユリがメモに、シロップと書かずに、ジュースと書いたからだ。
「絞り汁ではなく、ジンジャーエールや紫蘇ジュースのような、薄めて飲むジュースのもとを作るのよ」
「いつ作りますか? 勿論手伝わせて貰います!」
「梅を洗うのと、ヘタを取るのが手がかかるから、手伝ってくれるのはありがたいけど、今日は無理だから、明日頑張ろうかと考えていたのよ」
「今日はしないんですか?」
「瓶が足りないからね」
リラは少し考えてから、ユリに再度聞き直した。
「今日、手が空いたら、梅を洗ってヘタを取るのをしても良いですか?」
「それはとてもありがたいけど、良いの?」
「ユリ様、これって、お店で使うんですよね? それって仕込みですよね? ユリ様が一人でする必要はないと思います。それに、空き瓶なら何個か有るはずなので、それを使って、シィスとマリーにも教えてください」
空き瓶とは、ピクルスに使っていた瓶らしい。
「先日カリカリ梅を仕込んだじゃない? 梅の下処理は一緒で、教えるのは配合くらいよ。それも割りと単純で、梅酒は、梅1、糖分1、酒1.8で、梅シロップは、梅1、糖分1よ」
「聞いた感じは、確かに単純そうですね」
「使うお酒の種類を変えたり、糖分の種類や割合を変えたりするのよ」
「割合ですか?」
「梅酒を水なり炭酸なりで割って飲む人は、梅と糖分が1:1で良いけど、できた梅酒をそのまま飲むお酒に強い人には、糖分を減らさないと甘すぎるらしいわ。うちのは、お菓子に加工する前提だから減らさないけどね。それで、糖分を減らす場合は、熟成期間を増やすのよ」
「仕込んでからどのくらいで使用出来るか教えてください」
「カリカリ梅は、3週間から1か月で出来上がり、3か月から半年で食べきってください。
梅酒は、3か月から6か月で出来上がり、10年経っても大丈夫らしいです。
梅シロップは、1か月くらいで出来上がり、梅を取り除いて冷蔵保存で1年くらい大丈夫です。発酵しかけたら加熱します」
「わわわ、もう少しゆっくりお願いします」
「後で表にして渡すわ」
「ありがとうございます」
リラは何やら考えがあるようだ。
「明日、梅を洗ってヘタを取る人を募集しましょう」
「募集するの?」
「この材料は、高価ですか?」
「んーだいたい、1kgが、梅1000☆、氷砂糖1500☆、酒1升3000~☆くらいかしら」
「一番安く作っても、梅酒は5500☆くらいなんですね」
「売るなら、瓶代と手間賃も入るわよ? 梅1kgは4リットル瓶ね」
「出来上がり1リットルくらいで作ったら、いくらですか?」
「そのまま1/4にして、瓶代と手間賃取れば良いんじゃないの? 1400☆と瓶代と手間賃かしらね」
「うーん、無理かぁ」
「人を集めるなら、自由参加にして、アルバイト代と、ランチ提供すれば良いと思うわよ?」
「それでみんな来ますか?」
「元々私一人でしようと思っていたくらいだから、誰も来なくても問題ないわ」
そんな話をしていたら、皆が昼休憩から戻ってきた。
「明日、梅酒と梅ジュースの仕込みをします。自由参加です。アルバイト代と昼食付きです。参加希望の方は、帰る前までに教えてください」
「何時頃ですか?」
「参加希望人数にもよりますが、10時頃からの予定です」
「参加するにゃー!」
「キボーも!」
「あのぉ、シーミオを連れてきてもよろしいでしょうか?」
「是非。シーミオちゃんが手伝えることもたくさん有りますよ」
営業が始まり、少し手が空いた時間に、リラはシィスルとマリーゴールドを呼び出した。
「ユリ様、シィスとマリーに御指導ください。私が注文をこなしておきます」
「あ、うん。シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん、梅酒、梅ジュース、梅味噌、酢漬けを教えます」
「ありがとうございます」
「ありがとう存じます」
一足先に、シィスルとマリーゴールドに指導することになり、お店の注文をリラに任せ、解説を始めた。
「梅の下処理は、カリカリ梅と同じです。梅6800g 、洗ってヘタを取ってください」
「はい」「かしこまりました」
二人はメモを取りながら真剣に手早く仕込んでいった。難しい手順などは無いので、その都度ユリに質問しながらあっという間に4種類を終わらせた。
一通り教えると、シィスルとマリーゴールドは帰り、ユリは仕事に戻った。
「リラちゃんは教わらなくて良いの?」
「私は明日来ますので、問題ありません」
「明日わざわざ来なくても、今見ていたから作れるんじゃないの?」
「明日は、助手が出来ますね。えへへ」
何を言っても言いくるめられそうなので、ユリは諦めた。
「明日、手伝う人に、個人用の梅ジュースか梅酒を作ってもらったら喜ぶかしら?」
「どういう意味ですか?」
「1リットル瓶に、好きな方を差し上げますよって、各自作ってもらうのよ」
「うわー! それ良いですね。お父さんが強制参加だ。あはは」
「マーレイさん忙しいんじゃないの?」
「梅酒が貰えるなら、2時間くらいなんとかすると思いますよ?」
「本人が希望するなら良いんだけどね」
メリッサは娘のシーミオを連れてくると宣言していたので、帰り際に簡単に話しておいた。この話は夕飯の時に全員にした。するとリラの予想通り、マーレイもイリスも参加希望だった。
「リラちゃん、昼にシィスルちゃんとマリーゴールドちゃんが仕込んだのは、出来上がったらベルフルールに持っていって良いわよ」
「ありがとうございます!」
結局、明日は全員参加らしい。




