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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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小梅

昨日の仕事終わりに聞かれたのだが、何と青梅が手に入るらしい。


「ハナノ様、北の商人から声をかけられたのですが、青梅というものはお使いになられますか?」

「はい!! 是非お願いします! 青梅で20kgでも30kgでもお願いします!」


ユリのあまりの食いつきに、マーレイが若干引いていた。


「ユリ、20~30kgも何作るの?」


ソウが不思議そうに尋ねた。


「青梅は、梅酒、梅ジュースね。小梅なら、カリカリ梅で、完熟梅は梅干しとか、梅ジャムとかかしらね」

「カリカリ梅って、ユリって作れないもの、無いの?」

「醤油とか味噌(みそ)とか味醂(みりん)とか作れないわよ?」

「あ、うん」


ソウは、聞くだけ無駄だったと感じたようだ。

梅酒と言ったときに、マーレイも思い出したらしい。


「あの、とても売れたシャーベットの」


小さく呟く声が聞こえた。


「小梅でも、青梅でも、完熟梅でも引き取るわよ」

「小梅とは、小さい梅でしょうか?」

「そうそう小さい梅よ。たぶんね、産地では花粉用の受粉木として小梅があるはずなのよ。商品として出す気がないなら諦めるけど、売ってくれるなら10kgぐらい漬けて、おやつにするわ。なるべく青々した小梅ね」

「かしこまりました。確認しておきます」


そんな話を仕事終わりにしたのだった。



翌日Eの日(だいちのひ)の13時頃、花梨花が直接やってきた。


「ユリ・ハナノ様! ユリ・ハナノ様!」


男性の声なので、ソウが様子を見に行くと、花梨花と菊之助が木箱いっぱいの小梅を持って待っていた。

すぐにユリが呼ばれ、小梅を見たユリは、大喜びだ。


「ユリ様、小梅を何に使われるのですか?」

「え? カリカリ梅って聞かなかったの?」

「伺いましたが、思い当たるものがございません。どのような物でしょうか?」

「漬け物感覚で、カリっとした梅漬なんだけど、そう言えば、割りと新しいものなのかも」


ユリは詳しい作り方を説明し、青梅と完熟梅の注文も直接した。持ち込まれた小梅は、レシピのお礼にと、そのまま渡された。


量ってみてはいないが、20kgくらい有りそうだ。


「さあ、梅が柔らかくならないうちに作ってしまいましょうか」

「ユリ、リラに声かけなくて大丈夫か?」

「あはは、ありがとう。又怒られるところだったわ」


新しいレシピは誰かがいるときに作ってください。と、しつこく言われているのだ。

ユリは以心伝心を送ることにした。


『ユリです。花梨花さんから小梅をいただいたので、カリカリ梅を作ろうと思います。見学しますか?』

『30分ほどお待ちいただけるなら、全員で伺います!』


食いぎみに返事が返ってきた。


『準備して待ってるわね。卵の殻が有ったら持ってきてください』

『良く判りませんが、今日使った殻がたくさん有るので、持っていきます』


「ソウ、連絡したわ。30分後に全員で来るそうよ」

「そうか」


ソウは笑っていた。予想通りだと思ったのだろう。


ユリは梅を量り、500gをいくつか用意した。量った粗塩も同数用意し、ホワイトリカーを準備し、鍋にお湯も沸かした。


「間に合いましたか!?」

「声かけたんだから待ってるわよ」


14時少し前、リラが走ってやってきた。後からシィスルとマリーゴールドとリナーリが息を切らせて走って追い付いてきた。


「あ、あの、ユリ様、私も参加して、良いのですか?」

「勿論よ。リナーリちゃんも興味があるなら参加してね」


そこに、丁度ユメとキボウが戻ってきた。


「何やってるのにゃ?」

「カリカリ梅を作ろうと思ってね。ユメちゃんも参加する?」

「良いのにゃ?」

「勿論よ」

「キボーも、キボーも!」

「はい。キボウ君も参加してください」


様子見していたソウが、キボウが参加できるなら簡単そうと考えたらしい。


「なら、おれも参加して良い?」

「ソウの分も計量済みよ。うふふ」


ユリは、500gを8つ量っておいたのだ。


「急ぎだろうから、さっさと説明を始めるわね」


青い梅を良く洗い、少しの間、水に浸ける。3時間くらい。

キボウが、1時間を3回時送りしてくれた。


卵の殻は中の薄皮を取り除き、3分茹で、しっかり乾かす。

ユリが「ウオスナク」と乾燥の呪文を唱え、乾燥させた。


ヘタを取ってしっかり水気を拭く。傷がある梅は除く。

ここは特に丁寧に。


梅の1割りの粗塩を加え、揉み混むように良く馴染ませる。

今回は50g


漬け込む場所に、少々のホワイトリカーと、梅と、お茶パックに入れた卵の殻を加え、軽い重石をのせ漬け込む。

お茶パックがなくても、カーゼ等に包めば良い。


ジッパーバッグを使って漬けたので、移動も楽だ。


「色を赤くしたい人は、塩揉みした赤紫蘇を加えると良いんだけど、手に入らなければ、乾燥ローゼルでも良いです。水分が出てから加えます。食べ口を優しくしたい場合は、糖分も加えます。一緒に塩の倍くらい足してください」


「ユリ、バタフライピーを足したら、青いカリカリ梅になるにゃ?」

「残念ながら青くはなりません。でも、赤紫っぽくはなるかもしれないわね。試した事がないから正確には判らないわ」


ユメは、バタフライピーを足してみたいらしい。


「ユリ、なんで卵の殻を加えるの?」

「梅の水分が出ると、その酸で梅のペクチンを柔らかくしてしまうのを、卵の殻を加えることで、ペクチン酸カルシウムとか言うのになって、柔らかくなるのを防ぐんだったかな? 貝殻でも良いらしいけど」

「成る程な」


ソウは、成分的に気になったらしい。


「では皆さん、袋に名前を書いて、涼しい場所か、冷蔵庫に入れてください。1か月くらいで出来上がります。色を染めたい人は、水分が出てから足してください」


ユメとキボウは冷蔵庫に入れずに、冬箱に入れて時送りをしていた。


「ユリ、食べてみても良いにゃ?」

「時送りしたの? 私にも1粒貰える?」


ユメとキボウは、その場の全員に配ってくれた。ユメは塩だけで、キボウは砂糖入りだ。


「これ、食べたこと有るにゃ!!」

「あら食べたこと有るのね」

「なんか、思い出したにゃ。屋敷の調理人が、どうやっても柔らかくなるって言って悩んでいたはずにゃ!」


それはきっと、カルシウムを加えていないから。


「ユリ様、ありがとうございましたー!」


ユメとキボウから試食を貰ったベルフルール組は、全員が砂糖を足してから、走って戻っていった。


「嵐のようだったな」

「火曜か金曜まで待って、梅が柔らかくなったらカリカリ梅作れなくなっちゃうし、しょうがないわよね?」


ユメとソウは、鞄に入れておけば良かったのでは? と思ったが、あえて指摘しなかった。残りの小梅は、ユリが2つの漬け物樽を使い、砂糖入りのカリカリ梅になるよう漬け込んだ。小梅は、約24kgあったらしい。樽に丁度10kgずつだった。

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