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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
7章

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噂話

謹賀新年

「あの、今来ていたのは、コニファーさんですよね?」

「そうよ。シィスルちゃん、どうかしたの?」


倉庫側から来たので、荷馬車を見かけたのだろう。


「何があったと言うわけではないんですが、マリーの事を見て、『ああ、あの子が、マリーちゃんか』って、なんか意味ありげな会話をしていましたので、なんだろうと思いまして」

「コニファーの皆さんと、こちらで特に、マリーゴールドちゃんの事を噂したりはしていないわよ?」

「そうですよね。なんだったんだろう」


不安げなマリーゴールドに、ユリが尋ねる。


「マリーゴールドちゃんは、思い当たることはある?」

「特にございませんので、(わたくし)も思い当たらないのでございます」

「何か不安があったら相談してね」

「ありがとう存じます」


話を聞いていたソウが、意見を述べる。


「それって、誰かがマリーゴールドに惚れたとかそう言う話なんじゃないのか?」

「あー、マリーゴールドちゃんが貴族の御令嬢って事を知らない人から見たら、物凄く奥ゆかしい美人さんにしか見えないわね。でも、マリーゴールドちゃんが納得できない相手とは、相手に権力があったとしても認めないわよ。うふふ」

「ユリが認めなかったら、誰も逆らえないよ」


強力すぎる味方に、マリーゴールドがやっと笑顔になった。


「さあさあ、お昼ごはんの用意を始めましょう」

「手伝います」「お手伝いいたします」


シィスルとマリーゴールドが手伝ってくれるらしい。


「メリッサさん、もう一度作る?」

「先ほどと同じくらいの量なら作れます」

「では、それでお願いします。シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん、ホワイトソースは作れるわよね? ベーコンとホウレン草入りのホワイトソースを作ります。スパゲッティのソースです」

「はい」「かしこまりました」


メリッサの事は、麺の用意をしながらリラが見てくれるようなので、ユリは、シィスルとマリーゴールドに指示を出しながら6人前のソースを作り、11人前と、半人前2つを作り上げた。


「スープ飲みたい人は、飲んで良いわよ。デザートは、イチゴとサクランボのショートケーキがあるわ。スパゲッティのおかわりは、同じものの半人前か、ミートソースの店売りを食べて良いわよ」


クリームソースのスパゲッティは、メリッサとイポミアに大好評だった。その他の皆は、柔らかいグラタンみたいだと感想を漏らしていた。


「グラタンより、熱くなくて食べやすいにゃ」

「おいしー! おいしー!」


緑色の食材(ホウレンソウ)とベーコンが入っているため、キボウは大満足だったらしい。

イチゴとサクランボのショートケーキも、皆喜んで食べていた。ユメとキボウは城でも食べたが、形が違うと味が違う!? とユメは考えながら食べているようだった。

シートスポンジの方が、丸く焼いたスポンジより軽いので、その違いだと思われる。


食べ終わり休憩に入ると、人がいないことを確認したソウが、少し深刻な顔で近づいてきた。


「ユリ、ちょっと話がある」

「ここで話せない話?」

「俺の部屋で話そう」

「わかったわ」


なんだろうと思い、ユリはついていった。

部屋に入ると、ユリに椅子をすすめ、ソウは向かいのベッドの方へ座った。


「どうかしたの?」

「城にケーキを届けたときに、ユメとキボウに会ったんだけど、そのとき言われた。ユメ、転移できなくなったらしい」

「え!? どういうこと?」


いきなりの報告に、理解が追い付かない。


「キボウの説明によると、得意魔法ではない魔法は、習得したときの記憶がなくなると、習得も無効になるらしい」

「そうなの!?」

「ユメの、ルレーブだった頃の記憶が、一部なくなったんじゃないかと思う。世界樹の森で全ての前世を思い出したって、前に話していたことがあるから、今のユメの記憶は、昨年の11月を失っている途中なんじゃないかと思う」


ユリは絶句してしまい、ソウも何と声をかけるべきかと迷っていた。そこへ、窓の外からユメとキボウの声が聞こえ、意識が窓へ行った。


「大丈夫なのにゃ!?」

「だいじょぶ、だいじょぶー」


明るいキボウの声に、平静を取り戻した。


「ユメちゃんとキボウ君を、手伝いに行きましよう」

「そうだな」


二人で畑に行くと、枯れかけたチューリップの鉢を持ったユメが、頑張って移動させているところだった。


「それ、移動させるのか?」

「雨がかからない場所に、このまま移動らしいにゃ」

「手伝うわ」「手伝うよ」


何しろ、チューリップの鉢は大量にある。ユメ一人では大変だ。キボウはその他の植物の面倒を見ていて、戦力にはならない。

倉庫の植物用の支柱などをしまっていた辺りにある、棚に鉢を並べた。ユメでは届かない高い段にはソウが並べ、120鉢のチューリップ全てを移動させた。


「二人とも、ありがとにゃ!」

「面倒見ろとは言ったけど、こういう大変なのは頼れよな」

「わかったにゃ」


ユメはニコニコとして嬉しそうだった。


「休憩するにゃ?」

「外おやつ用に出すものを出してからね」

「手伝うにゃ」

「手伝うよ」

「てつだうー、てつだうー」


植物の世話が終わったらしいキボウも合流した。


店で出るであろう数を引いた巻巻(まきまき)と、ショートケーキの耳をいれたココットと、朝作ったクルミ餅をカットし、1枚半分を外おやつ用に出してきた。お茶は、温かい方がほうじ茶で、冷たい方にはバタフライピーの冷茶を出した。


「ハナノ様、いつもありがとうございます」

「今日は、同じものが揃わないので、好きなものを食べてくださいね」

「ありがとうございます」

「何か要望やリクエストが有ったら、教えてくださいね」

「はい」


残り時間はしっかり休憩した。


昼休みあけ、昨日よりは客側も落ち着き、もめる者もおらず、午後は平和に過ぎていった。

今年もよろしくお願い致します。

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