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花屋

「他に見たいものはある?」

「んーお昼も食べちゃったし、食べ物屋さんには入れないわね。ソウのおすすめとかはある?」

「おすすめかぁ。・・・花屋さんでも見る?」

「うん!花見たい!」

「じゃあ、花屋さんに行こう」


四季があり、もとの国と気温帯があまり変わらないので、植物の生育にほとんど違いがない。

違法薬物系の植物でもない限り、農作物系は持ち込み制限もないので、ソウは好きに持ち込んでいる。

もとの国から個人持ち出しが禁止だったのは、特定外来生物の判定が難しいからであって、この国へ一切の植物の持ち込みが禁止だったわけではなかったのだ。

事前申請があれば、苗や種も持ち込めたが、誰も申請者はいなかった。


なんだかとても良い香りがしてきた。


「なんだろう?良い香りがするー」

「んー・・・くちなし?」

「うん!くちなし!どこからかなぁ?」


通りをひとつ曲がると、沢山のくちなしが植えられていた。


「うわー!凄い!」


濃い緑色の葉に、柔らかい色合いの白い花、ネジのような(つぼみ)


「良い香りー」


そう言えば、香りが強すぎて母はくちなしが苦手だったなぁと思い出した。

じっとくちなしを見つめているとソウが心配して声をかけてきた。


「ユリ?どうかした?」

「くちなし、母が香りが強すぎて苦手だったって思い出しちゃった」

「そう言えば、昔そんなことを言ってたね」


子供の頃、この香りが好きで鉢植えがほしかったけど、母が苦手だったから買わなかった。

母は、買っても良いのよ? って言っていたけど、苦手な人がいるものを買う気になれなかった。


「ユリ、くちなし買おうよ。一重咲きのなら実もできるから2倍お得だよ」

「うん。お得だね」


少し泣き笑いになりながらうなづいた。


くちなしの庭を通り越し、今は花の付いていない薔薇のアーチをくぐると鉢植えが沢山置いてある花屋さんについた。


「あ、バタフライピーがある!!」

「ん?バタフライピーって、青いお茶の?」

「そうそう。図鑑でしか見たことがなかったんだけど、乾燥していない花は初めて見た!」

「鉢植えだし、買っていく?」

「うん!買いたい!」


良さそうな苗をソウに選んで貰うことにした。


「くちなしは1鉢で良い?バタフライピーはいくついるの?」

「くちなしは1鉢で、バタフライピーは5つくらい欲しいかな。南側に植えて、いっぱい収穫できると良いな」

「なら、支柱も要るかな」

「ソウ、ありがとう!」

「いえいえどういたしまして」


今花がついているものは本来買い時ではないが、どうしても花がついているものに目がいってしまう。


今年は大分手遅れだけど、とうもろこしとか枝豆とか、よし、来年にかけよう。


色々な花や野菜の苗も売っていた。

種の扱いもあり、店舗内には切り花も売っている。


切り花の一角に、緑色のコーナーがあり、これは花じゃないよね?と思っていたら、薬草だったらしい。

よく見ると、ミントやセージがあった。

薬草?ハーブ?まあ、同じようなものかしらね。


「あ!アルストロメリア!」

「買っていこうか」

「うん!」


赤いアルストロメリアが切り花コーナーにあった。


「そうだ、花瓶」

「そういえば、前衛的な器に飾ってあったね」


ソウは苦笑するように顔を背けた。

ここに来たときにソウから貰ったアルストロメリア、活ける器がなくて使わないコーヒーポットに活けていたのだ。


確かに、あの時あれを見たソウは驚いていた気がする。



陶器でできた白い花瓶を選んだ。

洗いやすそうなことが選ぶ基準。


「切り花と花瓶はともかく、土つきの花は持ちきれないわね」

「配達を頼んでくるよ」

「お願いします」


ソウが配達を頼みに行ったので、ユリはユメのお土産が何かないかと探していた。


「ユメちゃん果物が好きだから何か良いものないかしら」


うろうろ見ていると、まだ緑色の実がびっしり付いたブルーベリーを見つけた。ほんの少し色付いた実もある。


そのままでも食べられるし、ジャムにもなるし、これ良いかも!


「なにかあった?」


ソウが戻ってきた。何かの植木を見ながらにやにやしているユリを見つけ声をかけた。


「これ、ブルーベリー、ユメちゃんのお土産に良いかと思って」

「へえ、これブルーベリーなのか。緑色だとわかんないね。良いんじゃない? これも買っていこうか」


ソウについて来たお店の人に配達の追加を頼むと、ブルーベリーについて説明された。

どうやらブルーベリーは2種類買った方が実のつきが良いらしい。

お店の人に相性の良いものを選んでもらい3鉢購入することにした。


ここはレモンと月桂樹を買った店らしく、お得意さん扱いだった。


赤いアルストロメリアと花瓶だけ持ち帰ることにして店を出た。


すっかり買い物で時間が過ぎてしまい結構遅くなった。


急いで帰ったが、ユメの姿がなく、夕飯の時間にもユメは現れなかった。

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