追加
ザルの上に置いてあったバタフライピーの花を全て干し籠に入れ、軒下にぶら下げてきた。
「どのくらい干すのにゃ?」
「1週間くらいかしらね」
ユメは何か考えたのか、突然言い出した。
「ユリ、バタフライピーのお茶のパックは売って貰えるのにゃ?」
「どういう意味?」
ユリには、ユメの言葉の意味がわからなかった。客が持って帰りたいとでも言ったのだろうか?
「キボウがお城で配ったのにゃ」
「あー、それで、お茶で持っていってもしかたないから、ティーバッグで持って行きたいのね。一人前ずつのと、30人前くらいのと、どっちが良い?」
「冷やして飲む方で頼むにゃ」
「なら、30人前の用意するわね」
「ありがとにゃ!」
皆で2階に戻り、少し部屋で休憩した。
昼休みあけ、ユリは早めに厨房へ行き、バタフライピーのお茶のパックをいくつも作った。「10リットルくらいのお湯に入れ、そのまま冷まして、良く冷やして当日中にお召し上がりください」と、書き添えた。
バタフライピーのお茶は、放置して酸化すると、美しい青色が、だんだん青紫になり、紫になり、あきらかに色が変わってくる。そんな状態を飲んでは大変なので、当日中にと書き添えたのだ。
「ユリ、もう作ってくれたのにゃ!?」
まだ早いのに、ユメがあらわれた。
「どのくらい必要かわからなかったから、一応20パック作ったけど、城の全員が飲むわけでもないわよねぇ。でも、欲しいと言われたら、そのまま全部置いてきて良いわ」
「ユリ、ありがとにゃ!」
ユメはリュックサックにお茶パックを全てしまうと、部屋に置きに行った。
お店の営業が始まると、予想通りと言うか、「巻巻」の情報が行き届いていた。次々に注文され、足りなくなりそうと感じたユリは、材料の計量をマリーゴールドに頼み、色紙を貼った箱を3つマーレイに頼み、特急で作るのだった。
求肥を3種類作り、キボウに1日時送りしてもらい、カットしているとユメが来た。
「ユリ、店内の客は、文字が書けるのにゃ」
「あー、そう言えばそうね。明日は箱じゃなく、んー、でも、投票として書いて貰うのを読むのは面倒なのよね」
「確かに面倒にゃ」
店内は、試食とはいえ皿で出していた。ココナッツ食器店の小皿を使っている。帰りがけにその皿を箱に入れるときの音が、カシャン、カシャカシャンと聞こえている。
「ユリ様、試食のお菓子を持ち帰りたいと言うお客様が、」
メリッサが相談に来た。
「何人が何個欲しいって言っているの?」
「お一方で、4つです」
「今日は値段がつけられないんだけど、これ安かったら、次々頼まれるわよね?」
「恐らく」
問題は、数を用意できないことと、本日のみの価格設定なのだ。
「お皿ごと欲しいなら、お皿は1枚につき100☆。お菓子は特注扱いで、1つに付き300☆ね。販売を始めたら、もう少し安くなると言っておいてね」
「はい。伝えて参ります」
小皿の仕入れは0~30☆だが、磨いて手間がかかっている。この価格でも、抹茶味とココア味はいくつか売れた。ノーマルタイプが売れないのは、にゃんこ焼きを買った方が断然お得だからだと思われる。
「ユリ様、注文が落ち着きました。私も焼いてもよろしいでしょうか?」
「マリーゴールドちゃん、お願いします」
「昨日、明日分迄全て用意しておいて正解だったわ」
おかげで、今日の試食に使える量があるのだ。
手が離せないタイミングで入った注文は、マーレイが作って出してくれていた。
「ユリー、キボー、てつだうー!」
「何を手伝ってくれるの?」
キボウが何か訴えに来た。世界樹様のクッキーは渡してあるので、何だろうと思っていると、ユメが説明に来てくれた。
「ユリ、バタフライピーの冷茶がなくなったにゃ」
「え、そうなの? 今ちょっと手が」
ユリとマリーゴールドは、猛スピードで巻巻を焼いていて、手が離せない。
「大丈夫にゃ。私とキボウで作っておくにゃ。マーレイにお湯だけ汲んで貰うにゃ」
ユメは、明日のお城用に渡しておいたバタフライピーの冷茶用のお茶パックを使い、10リットルを2つ作ってくれた。キボウが時送りをし、冷茶用2リットルポットに分け、冬箱に入れ更に時送りをし、すぐに使えるバタフライピーの冷茶を作っていた。
「ユメちゃん、キボウ君、どうもありがとう」
ユリは一瞬振り返り、ユメとキボウにお礼を言った。
「次も任せるのにゃ!」
「まかせる、まかせるー!」
ユメとキボウは、元気にお店に戻っていった。
大きめなグラスにたっぷり入った、冷たくほんのり甘いお茶は、大人気だった。
にゃんこ焼きも とても好評で、昨日来られなかった人たちも大満足だったらしい。2種類の冷製スープは、双方飲む人も多かったそうだけど、いつもなら双方飲む人が頼まないのを不思議に思っていたら、明日も来ると話し帰っていったそうで、今日はとても暑く、冷たいものは気候的にもぴったりだったようだ。
手が空いたユリは、ストック分として少し厚めのシートスポンジを作り明日に備え、本日の営業を終了した。




