買物
「ラーメン美味しかった!」
「そうだね。結構うまかった」
店を出た二人は、通りをぶらぶらと歩いていた。
「食器屋さんってある?」
「食器は基本的に注文生産かな」
「そっかぁ。ちょっとデザートカップが足りなくて揃えたかったけど」
「あー、そういうのか・・・もしかしたらあるかも」
そう言ってソウは、ユリの手を繋いで きびすを返した。
「どこ行くの?」
「こっちにちょっと面白い店があるから」
そこは青空市で、品揃えはまるでリサイクルショップのようだった。
「不思議な品揃えね」
「破産した商家や貴族から引き取った債権的、競売的なそういったいわくの有る品だからね」
「そうなのね」
「庶民にはちょっと高いし、富裕層はプライドがあって買わないし、でも元は良いものだから商売に使うにはうってつけだよ」
確かにどんなに良いものでも見える場所に他家の家紋付きは買えないよね。
剣の柄に家紋が付いている。
まずは目についたのは花の柄のあるお洒落な小型の家具で、次にドレス類だった。
「家具もドレスも要らないなぁ」
「確かあっちに・・・」
ソウの案内についていくと厨房関連の中古があった。
ワイングラスやカトラリー、皿やティーセットまで有る。
調理器具類がないのは、そのまま使うからだそうで、住む人が変わっても貴族の目に触れにくい場所はあまり変えないらしい。
皿や器を見ていくと、奥の方にお目当てのものがあった。
「あ!あった!」
ココット類がたくさん有った。
ほとんど真っ白で、たまにライン入りがある。
まれに色つきもあるけど、どれも数が揃っている。
ココットは1つ300☆らしい。
「300☆かぁ」
「お嬢ちゃん、いくつ欲しいんだね?たくさん買ってくれたらおまけするしの」
人の良さそうなおじいさんに声をかけられた。
「じゃあ、もしこのココットを全部買ったらいくらにしてくれるの?」
「1500個以上有るからの。全部は買えないだろうけど、本当に全部買うなら100000☆で良いかの」
「買った!!」
「えぇ?本当に買うのかい?」
「はい! ・・・はい、これお代」
ユリはあわてて大金貨を出した。
おじいさんは本当に驚いているようだ。
「凄いのぉ。お嬢ちゃん、何者だい?」
「アルストロメリアってお店やってます」
「・・・・・・あ!マーレイの主人のところかの!」
ん?主人って誰?ソウのこと?
「これは失礼いたしましたのぉ。女主人の凄い料理屋だって聞いてるのぉ」
おじいさんはにっこり笑っていた。
え、主人って私のこと?
ぐるぐると考えているとソウが交渉してくれた。
「後で取りに来させるから、それで良いかな?」
「はい。まとめておきます。他はよろしいですかのぉ?」
「ユリ、他に欲しいものは?」
店で使う食器は辛うじてなんとかなっているから持ち帰り用だけ欲しいのよね。
「お菓子の持ち帰り用に使うから、同じ形でたくさん有る器ならいくらでも欲しいかな」
「それでしたら、このココット型に近いものを集めておきましょうかのぉ?」
「え!良いんですか?」
「お安いご用です」
おじいさんはにっこりと笑った。
「手付金いくらですか?」
「信用があるので大丈夫だのぉ。まとめて売れるなんてありがたいですのぉ」
「そういうものですか」
「1つ辺りが60☆くらいで集めておきますのぉ」
「ありがとうございます!」
ユリ的には1つ100☆以下なら良かったのだが、思ったよりかなり安くすんだ。
ソウによると、後でマーレイに取りに来てもらうらしい。
「おじいさん、どうもありがとう!」
「いやいや、お礼を言うのはこちらですのぉ。お嬢ちゃん、ありがとう」
お店のおじいさんは笑顔で見送ってくれたので、ユリはニコニコして手を振りながらその場を離れた。
「すごく良い買い物したー!」
「良かったね。ユリ」
ソウはとても機嫌の良いユリを見て嬉しくなった。




