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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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姿絵

「おかえりなさい。そして、いらっしゃい。今日は学校無いの?」

「明日が開校記念日で、今日は午前授業です」


平日の昼に来た(よう)を不思議に思い、ユリが尋ねると、(よう)が答えた。


「お昼ご飯は食べたの?」

「何かある?」


ソウは食べていないらしい。カエンと(よう)もまだのようだ。


「皆と同じもので良いなら有るわよ」

「悪いけど、お願い」

「問題ないわ」


カエンと(よう)は2人がけに座り、ユリの横に座っていたユメが、気を遣って席を移動しようとして、ソウに止められていた。


なお他の席は、もうひとつの4人がけに、マーレイ、イリス、メリッサ、イポミアが座り、カウンターに、リラ、シィスル、マリーゴールドが座っている。


食事が終わると、シィスルとマリーゴールドは帰り、カエンと(よう)は、手伝うと言い出した。なんと、明日も手伝ってくれるらしい。


「カエンちゃん、お仕事がお休みなら、ゆっくり休んだら良いのに」

「いえいえ、御相談がございます。少々お時間をよろしいでしょうか?」

「なあに? どうしたの?」


カエンは改まって、話し始めた。


「わたくしの結婚式にあたって、ユリ御姉様のご都合をお伺い致したく、(まか)り越しました」

「いつ頃になるの?」

「9月を予定しております。ユリ御姉様の御都合はいかがでございますか?」

「おめでとう! 呼んでくれるなら絶対出席するわ!」

「曜日や月初や月末等の、より出席しやすい日時やお時間はございますか?」

「お店は、土日が休みだけど、9月の事なら大分先だから、お休みのお知らせを出して、カエンちゃんの都合に合わせてちゃんと出席するわよ?」

「大丈夫なのでございますか?」


そこでユリは、カエンが何を心配しているのか理解した。


「婚約式は、私には割りと急だったから少しバタバタしたけど、3か月先の予定は休業を公表すれば問題ないわ」

「9月10日土曜日を予定しております。お越しいただけますでしょうか?」

「勿論、出席させていただくわ。って、私はどちらで出れば良いの?」

「お兄様と御夫婦でお願い致します」

「なら、黒留袖ね」

「はい。そうでないと、食事に困るかと思いまして」

「確かにそうね。うふふ」


昼休みに入り、厨房を覗いたカエンが積んである番重の中の若鮎を見つけ、少し羨ましそうにしていたので、ユリは作り方を教えた。どうやらカエンは、和菓子が好きらしい。以前、くずきりも喜んでいた。


ユリは材料を少しより分け、外おやつ分を確保し、残りをカエンに差し出した。


「これ、好きなだけ作ってみて良いわよ」

「よろしいのですか!?」

「みんなも作ってみたのよ。(よう)君も作ってみる?」

「はい!」


するとカエンは持ち込んだ鞄から何かを取り出した。


「ユリ御姉様、こちらをどうぞ」


それは、猫の焼き印だった。3種類もある。


「うわ!これ、どうしたの?」

「頂き物のどら焼きに、肉球マークが押してあるのを見かけまして、こちらを作っていただきました」

「買い取らせてもらえるかしら?」

「こちらは差し上げますが、どうしてもお支払なさりたいのでしたら、パウンドケーキでお願い致します」

「うふふ、わかったわ」


カエンと(よう)は強化夏板を1台ずつ使っているので、ユリは鉄板を使い、早速小さい皮を焼き始めた。小さめの楕円形に焼き、若鮎とは違い、小さい求肥を包み、長さが短くなる方向に折った。


カエンに用があったらしく、リラが早めに戻ってきた。


「あ!ユリ様何作ってるんですか?」

「外おやつ用よ。カエンちゃんから、素晴らしい焼き印をもらったのよ」

「これですか? どうやって使うんですか?」

「鮎の模様をつけたのと一緒よ。焼いて使うのよ」


リラが早速使いたがったので、ユリが焼いている外おやつ用の皮に、焼印を押してみた。


猫の顔だけの印、歩いている姿の印、座っている姿の印、どれも素敵な焼印だ。


「良い感じねぇ」

「素敵ですね!」


ユリとリラがその出来に満足していると、ユメとキボウが戻ってきたらしい。


「何してるのにゃ?」

「なーにー」


ユメは、ユリの手元を覗き込んだ。


「にゃー!黒猫にゃ!!」

「クロネコおかしー、クロネコおかしー」


ユメとキボウに1個ずつ渡すと、ユメはじっと眺めながら呟いた。


「これ、売るのにゃ?」

「明日の外おやつ用よ」

「又、売ってくれって言われるにゃ」

「あ」


ツナマヨ海苔巻きの騒ぎを思い出した。「ツナマヨと言えば、幻の『黒猫様のお弁当』のおにぎりの名前」と騒がれ、節分のあの日は大変だった。マリーゴールドと、一日中予定外のツナマヨ巻きを作り続けたのだ。


「明日分は若鮎で、明後日と明明後日(しあさって)は、黒猫で作りましょうか」


「はいユリ様、提案があります。これを、ここを潰して、こんな感じでどうでしょうか?」


リラは、縦に持って、皮の真ん中を押し込み、まるで猫耳がついたような形に変形させた。


「猫みたいにゃ!」

「猫みたいね」

「ねこー、ねこー」

「リラさん、凄いですわね」


カエンも誉めた。すると、リラが何か思い出したらしい。


「あ! 私、カエン様にお祝いを言いに、早く戻って来たんです!」


カエンは、少し驚いてリラを見ていた。


「カエン様、ご婚約おめでとうございます」

「リラさん、どうもありがとう」

「こちら、描いてみました。よろしければ、お納めください」


受け取った四角い布を開くと、(がく)に入った巫女装束のカエンの姿絵だった。ユリとソウの結婚式の時の衣装のようだ。


「凄いですわ! ありがとうございます」


リラは、クリスマスにもらったカシミアの手袋のお礼をする機会を伺っていたらしく、絵皿を頼まれたことを思い出し、絵を描いたら喜んでもらえると考えたようで、かなり前から用意してあったのだとか。


「姉上だ!」


(よう)も来たようで、絵を見て驚いていた。


「カエンの絵か。リラが描いたのか? さすがだな」


ソウも戻ってきて、リラが描いた絵を誉めていた。

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