泡立
「ユメちゃんとキボウ君が戻ってきたので、飲み物を飲み終わったら、試作を始めましょう」
急がせたつもりはないが、何人かが慌てて飲み干していた。
「作ってみたいゼリーがある人は、申し出てください」
ユリの言葉に一番早く反応したのは、なんとシーミオだった。
「はい! しーちゃんは、りんどじゅーちゅといちどみるちゅがいいでつ!」
「えーと、りんごジュースとイチゴミルクかしら?」
「はい。その通りです」
メリッサが肯定していた。
「では、りんごジュースのゼリーを作りましょう。他に希望はありますか?」
「キボー、あおぜーりー」
「キボウ君は、サファイアクリームソーダゼリーですね。他には希望有りますか?」
「ジンジャーエールのゼリーも食べ、じゃなかった、作りたいです」
「イポミアさん、ジンジャーエールのゼリーも作りますね」
他に意見はないようだった。
「では、食べたい人はお手伝いをしてください」
「はーい!」「はい」「はい」
ユリは、リラに配合を渡し、ジンジャーエールゼリーの用意をして貰うことにした。リラは今さらりんごジュースのゼリーの作り方は興味もないと思われる。
「ここに、リラちゃんに量って貰ったゼラチンが有ります。型から取り出すゼリーは硬く固めるため、ゼラチン10gで500mlの飲み物が固まります。器に入れたまま食べるなら、600ml~800mlくらいまでが適量です。ほどよく柔らかく食べやすい700mlを目安に作ります。りんごジュース700ml、グラニュー糖20g、ゼラチン10g、水50mlで皆さん作りましょう」
ユリが材料を指し示すと、驚いていた。
「え!? 私たちが作るんですか?」
「作ってみたいかと思ったんだけど、面倒なら私が作るわよ?」
「いえ、作ってみたいです!」
メリッサとシーミオ、イポミアとリナーリ、ユメとキボウが組になって、ユリの見本を見て説明を聞きながら作り始めた。
温めたゼラチン液を冷ましているときにリラから声をかけられた。
「ユリ様、準備終わりました」
「はーい。シロップにゼラチンも溶けてる?」
「はい」
「では、少し熱を抜いてから、常温の炭酸を静かに加えてゆっくり混ぜて、グラスに120mlずつ注いで貰える?」
「はい、120mlですね」
リラは120mlをいくつか量ると、その量に合わせどんどんグラスに注いでいった。
試作体験の3組には、グラスを7つ渡し、好きに注いで貰った。メリッサに量の目安を聞かれたので、110mlくらいと答えたが、7つのグラスの量を同じく揃えるのは大変だったようだ。
3組が7個仕上げるのと、ユリとリラがあわせて80個仕上げるのは、ほぼ同時だった。ジンジャーエールゼリーとユリの作ったりんごゼリーのグラスは厨房へ持っていき、冷蔵庫に入れた。3組の仕上げた21個は冬箱に入れ、キボウが「1じかーん」を2回かけてくれたらしい。
「出来上がったゼリーに、生クリームを絞ります。ユメちゃん、1つだけ見本に絞らせてね」
「構わないにゃ」
ユリは、ユメとキボウが作ったゼリーを1つ受け取り、生クリームでローズバッドを絞った。ユリが作っていた見本のりんごジュースのゼリーは、適当に冷蔵庫に入れたため、まだ固まっていないのだ。
「こんな感じだけど、好きに絞って良いわよ」
3組が楽しそうに生クリームを絞っている間に、ユリとリラは厨房に行き、残ったゼリー液を冷やし、とろみがついてきてから泡立て器で泡立てた。
「これを、ゼリーの上に素早く流し入れ、冷やし固めて出来上がりです。まとめて作ろうとすると固まってしまうので、ある程度の個数ずつ仕上げるつもりで作ってください」
「うわー! ビールみたい! はい、頑張ります!」
リラは楽しそうに仕上げをしていた。
仕上げを終えているものを11個だけ取り分け「ウカヤキエル」と、冷却の呪文を唱え、すぐに食べられるように冷やした。
3個は、冷蔵庫に戻し、8個を持ってお店に戻った。
「うわー! それなんですか?」
「これが、ジンジャーエールゼリーよ。見た目がビールみたいでしょ」
「これなら確かに、例え甘くなくても不思議がないですね」
「実際には甘味はあるんだけど、みんなが作ったりんごゼリー程は甘くないのよ」
キボウがユメに何か聞いているようだった。
「いつ食べられるにゃ?」
「どっちも食べられるわ。食べて良いわよ」
わいわいと試食をしていると、イリスとマーレイが来た。ユリは冷蔵庫から、ジンジャーエールゼリーと、冷却呪文を唱えたりんごジュースのゼリーと生クリームの絞り袋を持ってきて、イリスとマーレイにも提供した。
「遅くなりまして申し訳ございません」
「今日は自由参加だから、遅いとか無いわよ。あ、バラマドレーヌも食べてみてね」
リラが、イリスとマーレイにお茶を運んできた。
「リラちゃんはどうする? ここで食べていく?持ち帰ってから食べる?」
「数をいただけるなら、持ち帰ってから食べたいと思います」
「りんごゼリーは3個、ジンジャーエールゼリーは10個くらい持ち帰って良いわよ」
「ありがとうございます。今日は他には作りませんか?」
「もしかすると、サファイアクリームソーダゼリーを作るかもしれないけど、キボウ君がりんごゼリーで気が済めば作らないし、未定ね」
「帰りますが、何か作るなら呼んでいただきたいです」
「わかったわ」
リラは、持参した冬箱にゼリーを入れて、ベルフルールに帰っていった。
「ユリ様、作ったりんごゼリーはどうしたら良いですか?」
「器だけ返してくれれば、持ち帰って良いわよ。間違って割ってしまった場合は、気を付けて片付けてね。弁償は要らないわ」
それを聞いた途端、キボウが消えた。転移したらしい。
「ユメちゃん、キボウ君は何処へ行ったの?」
「世界樹様に持って行ったんだと思うにゃ」
「そっか、キボウ君の手作りだったわね」
「そういうことにゃ。次は、私が折りバラを教えるにゃ」
ユリは、2階の部屋に折り紙を取りに行った。折り紙の予備は、ユリのとなりの部屋においてある。
参加者が多そうだからと、少し多めに用意し、階段を下りてきた。
厨房に戻ると、ソウが帰ってきていた。
「あら、ソウ、おかえりなさい。ゼリー食べる?」
「ありがとう。結局何ゼリーを作ったの?」
「ジンジャーエールゼリーの、ビアゼリー風よ」
ソウに、ゼリー2種類と、お茶とバラマドレーヌを出した。
店を覗くと、ユメは先に折り紙教室を始めており、ユリも慌てて加わった。
いつもお越しくださり、誠にありがとうございます。
今さら気がつきましたが、前々回の予約投稿を1回間違って飛ばしていたようです。
お待ちくださっている方には、大変申し訳ございませんでした。




