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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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箱詰

お店の営業が終わる頃、なんとかバラのマドレーヌも作り終わった。結局、プレーン(薄黄)、イチゴ(薄赤)、紫芋(薄紫)、ブルーベリー(紫)、ローゼル(赤)、南瓜(黄)、ココア(茶)を作った。薄い3色は400個ずつ、濃い4色は200個ずつの合計2000個だ。余った生地は、最後に同じ鉄板に絞り入れて焼いた。7色で100個くらいになった。最後の生地は、まだオーブンに入っている。その他に、マーレイとソウに抹茶クッキーで、葉っぱを600枚作って貰った。


食事前に、ユリは皆に声をかけた。


「希望者のみにお願いします。ご飯のあとで、箱詰めの残業があります。無理はしなくて良いです」

「あの、それは、私たちも参加できますか?」


ユリに尋ねたのは、外販売をしたお手伝い組の男性だった。


「私はとてもありがたいけど、お時間は大丈夫なんですか?」


外は暗くなり、辻馬車もなくなるので、ユリは心配したのだった。


「帰る方向はほぼ一緒なので、4人で帰れば何も問題ありません。むしろ、新しいお菓子を先に見ることができるとなれば、是が非でも参加したいところです」

「それでしたら、よろしくお願いします」


メリッサは、「明日見に来ます!」と言い、夕飯のおかずをユリから受け取り帰っていった。明日は、各種ゼリーの試作だ。


食事を始め、今日の販売について聞くと、昨日よりは客の方も慣れているので、格段に売りやすかったと答えていた。商品の残りは若干有るが、ユリが鞄にしまいこむ程度で、そのうち希望者に提供されることであろう。


各自食べ終わり食器を片付けると、ユリは箱を取り出した。


ユリがソウに頼んで用意した箱は、菱形の小箱と、しずく型の大箱だ。菱形の小箱は、バラマドレーヌ3個とクッキーの葉が入り、しずく型の大箱は、バラマドレーヌ7個とクッキーの葉が2枚入る。双方白い中敷き入りだ。最初は、同じ味のものをだぶらせて詰める予定でいたが、リラが色味(いろみ)のバランスを言い出したので、結局、7色作ることになった。


「時計回りに、プレーン(薄黄色)、ブルーベリー(紫)、イチゴ(薄赤)、南瓜(黄色)、紫芋(薄紫)、ローゼル(赤)、中心にココア(茶)を並べてください。箱の尖った部分には、クッキーの葉っぱを2枚置いてください」


ユリが箱の説明をすると、ユメが何か言いに来た。


「ユリ、人いっぱいいるから、少し外しても良いにゃ?」


キボウまで手伝っているので、確かに人数は多い。ユメを入れて12人いる。


「大丈夫よ。そもそも残業だから、希望者のみよ」

「リラも連れていっても良いにゃ?」

「私は構わないけど、リラちゃんに直接聞いてくれる?」

「わかったにゃ」


ユメは、リラに手伝って貰いながら、何かしたいことがあるらしい。リラに声をかけ了承を貰ったようで、厨房へ行ってしまった。


ビニール手袋か、傷つけずに持てるトングを使って貰い、バラマドレーヌを箱詰めしていった。中敷きの通りに置くだけなので、間違いもなく美しく詰められていく。


「ユリ様、味見はないんですか?」


ほぼ詰め終わる頃、イポミアが尋ねてきた。


「今日食べるより、明日の方が美味しいわよ」

「え? そんな事って有るんですか?」

「バターケーキ類は、焼きたてより、生地が落ち着いてからの方が美味しいのよ」

「そうだったんですか!」

「明日来るのでしょう? 明日、来なくても明後日、味見を出すわよ?」

「はい!ありがとうございます」


全て詰め終わり、ユリは大きい4箱を手に取った。


「今の残業分、お金で払うのと、これを持ち帰るのとどっちが良いかしら?」

「もちろん、お菓子が欲しいです!」


お手伝いの4人が、揃って同じ答えだった。

大箱入りバラマドレーヌの価格は2200(スター)である。残業は40分ほどだったので、ちょうど良いだろう。


「今、聞いていたと思うけど、食べるのは明日からにしてくださいね」

「はい!」


ユリから、16000(スター)と大箱入りバラマドレーヌを受け取り、お手伝いの4人は、ご機嫌で帰っていった。


「ユリ、バラマドレーヌの箱を1つ欲しいにゃ」

「構わないけど、何に使うの?」

「ちょっと待っててにゃ」


ユメは空箱をひとつ持ち厨房に行ったが、すぐに戻ってきた。


「見本に使うと良いにゃ!」


それは、紙で出来たバラマドレーヌそっくりの折り薔薇だった。


「ユメちゃん凄いわね! これ、作ったの?」

「リラたちに手伝って貰ったにゃ」

「たち?」


どうやら、シィスルとマリーゴールドも手伝ったらしい。ユメが折り紙を教えると言ったら、リラが呼んだそうだ。

他のメンバーも、ユメたちが作った折りバラを絶賛していた。


「ユメちゃん! 私にも教えてください!」

「いつ教えるにゃ?」

「明日はどうですか?」

「何時に来るにゃ?」

「では、ユリ様の試作のあとではいかがでしょうか?」

「それで良いにゃ」


待っていてもリラが来ないので、ユリは不思議に思った。


「ユメちゃん、リラちゃんたちは?」

「たぶんのびてるにゃ」


ユリが厨房を覗きに行くと、作業台にぐったりのびた三人がいた。


「折りバラありがとうね。とても素敵だわ」

「1個しか折れませんでした。ほとんどユメちゃんが作りました」

「そんなに難しいの?」

「難しさもありますが、手順が多くて大変でした」


リラたちによると、ユメは既に作ってある折りバラを数個リュックから出すと、足りない色を作るために、手伝いを頼んだそうで、7個入りの大箱は、ユメが一人で仕上げたらしい。リラたちは、やっとの思いで1個折って、小箱用の折りバラを作ったそうで、ユメは約45分で3~4個折ったようだ。


「明日、イポミアさんが、ユメちゃんからこのバラを習うらしいわよ」

「ミア(ねえ)チャレンジャーだなぁ」


リラは明日も見に来ると言い、3人は帰っていった。

店の方も、マーレイ&イリス夫妻とイポミアが帰り、戸締まりをして皆で階段を上がった。

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