試作
全員がボールチャーハン希望だったので、ユリも同じ物を食べることにした。お手伝い4人の分も店に運んでいくと、ユリを見て話しかけてきた。
「ハナノ様! 先程いただいたゼリー! いつから販売ですか? 私、感動しました!」
「あれね、作ってみたかっただけで、販売予定は未定なのよ」
「え? なぜですか?」
「頭の中にあった物を形にしてはみたけど、まだ試作段階なのよ」
「あれが、試作」
「ゼリーの固さとか、甘さとか、見た目とか、調整してから販売するのよ。同じものをたくさん作らないといけないからね。きちんと配合を数字にする必要があるのよ」
「数字に、はい、確かにそうですね」
商売人なので、ユリの商売としての説明に納得していた。次は、目をキラキラさせたイポミアからだった。
「ユリ様、ルビーソーダも、ゼリーになりますか?」
「同じように作ればできるわね」
「ジンジャーエールはどうですか?」
「作れなくもないけど、少しだけ難しいかもしれないわ」
「難しいのですか?」
「ゼリーとして固めてしまうと、飲んでいるものより甘さを感じなくなるからね、糖分を増やさなければならないのよ。でも、ピリッとした感じがジンジャーエールの特徴だと思うんだけど、お菓子って、甘い物だと思われているでしょ? 買った人はわかるかもしれないけど、貰った人は、食べてがっかりしてしまう可能性があるのよ」
「見た目にも、甘いゼリーではないとわかる必要があるということですか?」
「簡単に言えば、そういうこと」
「確かに難しそうですね」
「まあ、対策はあるから、今度試作品を作っておくわ」
「是非!試食させてください!!」
「ちゃんとみんなに食べて貰うわよ」
「やったー!」
昼食を食べ始めると、ボールチャーハンを初めて食べる4人は、とても喜んでいた。やはりユリとユメ以外がおかわりをし、皆、充分堪能したらしい。
「うちでも絶対出します!」
「ベルフルールでも出すのかい!?」
「ユリ様から教わり、完璧です!」
「絶対に食べに行くよ」
リラの宣言に、お手伝いのメンバーが歓迎していた。
「さあ、コーヒーゼリーとフルーツ宝箱。どちらを食べますか?」
数は半々くらいだった。唯一、答えなかったキボウに聞こうとそばに行くと、第三の選択だった。
「キボー、あお、ぜーりー!」
「サファイアソーダゼリー?」
「あたりー!」
すると他の皆も、食べたそうにしていた。
「残り5個だから、キボウ君とお手伝いの4人に食べて貰うわね。いつもの皆は、ルビーソーダゼリーと、ジンジャーエールゼリーの試食がいずれ待っているからね」
ユリの言葉に全員が納得したので、お手伝い組に提供した。
「ユリ様、いつ作りますか?」
「え? 試作の事?」
「はい!」
「イポミアさん、手伝ってくれるの?」
「良いんですか? 是非お手伝いしたいです!」
「なら、明日にでも試作する?」
「はい!」
「あ、私も手伝いたいです!」
「私も見に来て良いですか?」
リラとメリッサだった。
「構わないけど、せっかく休みなのに、良いの?」
何だかんだと、見に来たい人はどうぞと言うユリの言葉に、ほぼ全員が来る予定らしい。
その後、食べ終わった人から休憩に入った。
「ソウ、明日自分で買いに行こうと思っていたんだけど、試作を作る約束をしてしまったので、土曜日の朝までに、苺とキウイフルーツを買ってきて貰えないかしら?」
「それって、アルストロメリア会の分?」
「うん」
「それなら購入済み。俺の鞄に入ってるけど、ユリに渡そうか?」
ソウの午前中の予定は、この買い物もあったらしい。
「ソウ、凄いわね!」
「ローズマリーから依頼があったから、向こうに渡す予定でいたよ」
いつもは、噂だけで作りたいものを決めてくるので、具体的な材料が揃えられないことがあったが、今回は、屋敷の料理人が食べているので、細かく材料の指定が出来たらしい。
「あ、それから、初物や、他の果物も預かってるよ」
見せて貰うと、色々な果物が鞄に入っていた。
「うわー! これも使えるわね! ソウ、ありがとう」
「ユリが喜んでくれて良かったよ」
ソウが休憩に入り、ユリは外おやつを出してから休憩に入った。




