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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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珈琲

休憩明け、外おやつを出し戻ってくると、全員揃っていた。


「何かあったら、すぐに声をかけてくださいね」


全員が揃って返事をした。


ユリとシィスルはボールチャーハンを作り、アイスクリームが出来上がると詰め込みを手伝い、30分単位で15個ずつ揚げていた。注文がずれてくる分は揚げた後にユリの鞄にしまい、その繰り返しを続けていた。


大分たった頃、イリスが申し訳なさそうに許可を取りに来た。


「あの、ユリ様、近隣のお客様なんですが、どうしてもお子さんに食べさせたいとのお申し出がございまして、どうにかすることは無理でしょうか?」

「え? イリスさんの知り合い?」

「端的に言えば、メリッサの従兄弟(いとこ)です。メリッサが断っていますが、(なか)ば泣き落とし状態になっています」

「メリッサさんを連れてこられる?」

「はい」


すぐにメリッサがきた。


「ユリ様、ご迷惑をお掛けしまして申し訳ございません!」


メリッサは、厨房の入り口で勢いよく頭を下げていた。


「あ、違うのよ。咎めるために呼んだんじゃないわ。従兄弟さんは、何か理由があるの?」

「はい。うちの娘が、ここで食べたことを話したらしく、従兄弟の子供は、私も食べたいと、常日頃言ってはいたのですが、風邪を引いたようでして、食欲がなく、ここの料理なら食べると言ったようでして、その」

「そういうことなら、女神の慈愛・パウンドケーキを1枚持たせて、あなたが帰るときに、5人分持ち帰れば良いわ。お代はボールチャーハン1人前分受け取ってちょうだい」

「か、かしこまりました!」


メリッサは、急いで、伝えに行った。


「ユリ、特例作って大丈夫か?」


ソウが心配して声をかけてきた。


「んー、特例っていうか、女性や子供が来られないから、そういうことが起きるんだと思うのよね。女性や子供を同伴しないと入れない日とか作ったらどうかしら?」

「あー、問題はそっちか」

「え? 他に問題あった?」

「ごねればなんとかなると考える人が出ないか?」

「それは私が対応するわ。なんなら、ソウが睨んできても良いわよ? うふふ」

「ああ、そうするよ。ユリはあんまり危ない事はしないでくれ」


ユリはちょっとした冗談で言ったつもりだったが、ソウにはそのまま受け取られてしまった。

あらら。しょうがない、話を切り変えましょう。


「シィスルちゃん、女性と子供の日を作るとしたら、どのくらいの頻度が良いと思う?」

「は、はい。あの、まずは、月に1回から始めて、評判が良ければ増やしたら良いと思います」

「あ、そうよね。いきなり半分変えちゃ駄目よね」


ユリの言葉に、厨房にいた全員が驚いていた。ユリとしては、同じメニューになる2日目の、火曜日(かえんのひ)金曜日(きんのひ)をあてようと考えていたのだ。


「あの、ユリ様、マリーにも、ボールチャーハンを持ち帰ってもよろしいですか?」

「構わないけど、明日顔出しに来るなら、そのとき出すわよ?」

「たぶん来ます! ありがとうございます!」


ユリとしては、外販売のメンバーが変わると考え、食べたい人には出し、2日目になるメンバーには希望者に違うものを出せば良いだろうと思っていたのだ。


ボールチャーハンの目処が付き、アイスの詰め込み以外、少し暇になった。


「シィスルちゃん、少し揚げ物任せちゃって良い?」

「はい」


ユリは、ボトルコーヒーを箱ごと持ってきた。900ml入りが12本入っている。ゼラチン180gを5倍の水で(ふや)かし、温めた1本分のボトルコーヒーに加え良く溶かした。そこに常温のボトルコーヒーを全て加え、ソウが洗っておいてくれたゴブレットに、120mlレードルを使い注ぎ入れた。コーヒーゼリーが97個出来上がる。


「ユリそれ、コーヒーゼリー?」

「そうよ。ユメちゃんのリクエスト」

「俺の分もある?」

「え!? ユメちゃん、97個も食べないと思うわよ?」

「そうか」


ソウは、笑いながら納得しているようだった。


「ユリ! もう作ってくれたのにゃ!?」

「はい。作ったわよ。後で食べましょうね」

「ありがとにゃ!」


何か取りに来たらしいユメも、コーヒーゼリーに気がついたらしい。笑顔で店に戻っていった。

ユリが冷蔵庫にしまっていると、シィスルが手伝いに来た。


「ユリ様、これは何ですか?」

「これは、コーヒーゼリーと言って、苦い飲み物のコーヒーを、お菓子のゼリーにしたものです。生チョコの種類にもコーヒーがあったでしょ」

「はい」

「あ、もちろん、シィスルちゃんの分もあるわよ。甘味は足せるから、夕ご飯の時にでも食べましょう」

「はい!」


その後も、出来上がったアイスクリームをココットに詰め込み、ボールチャーハンを揚げ、順調に数を製造していった。

グラタンを50、ドリアを50仕込み、「ウカヤキエル」と呪文を唱え冷却し、チーズをのせていると、ユメが慌てたように厨房に来た。


「ユリ、どうしてもボールチャーハンをおかわりしたいって言ってるにゃ」

「私が対応するわ」

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