丸飯
ユメとキボウが出掛けて行った。
お店の詰め込み作業の方は目処がつきそうだが、厨房は、未だにてんてこ舞だ。店の方は、仕事が片付き次第、飲み物を作り、小休憩を取るよう伝えてある。
大きなおにぎりを作り終わり、それらにフライの衣をつける。シィスルと手分けして、粉を付けた手で握り直し、液卵に通し、パン粉をつける。ご飯1升で約40個、2升分の80個に衣が付いた。
「マーレイさん、この後揚げ物をするので、アイスクリームを完全に任せてしまって良いですか?」
「かしこまりました。イリスたちに手伝って貰うことに致します」
「マーレイさんお願いします。 シィスルちゃん、揚げるのとソース煮込むのどっちが良い?」
「揚げてみたいです!」
ユリは、ソースを温めつつ、サラダを作りながらシィスルに揚げかたを説明していた。
「大きいから中まで温まらないとチーズが溶けなくて美味しくないからね。綺麗な揚げ色になるように、時々回転させてね」
「はい!」
大きな物を菜箸でつかむのは大変なので、揚げ物用の網とトングも渡した。まずは人数分の13個を揚げて貰い、出来上がると、更に13個揚げて貰った。
トマトソースを皿に盛り付け、揚がったものを1つずつのせた。手が空いたらしいメリッサが、サラダを運ぼうとしていたので、声をかけた。
「これも運んでください」
「これ、なんですか?」
「ボールチャーハンよ」
他のメンバーも運びに来て、厨房が片付き、全員席について食べ始めた。
「うわ! 中に何か入ってる!」
「溶けるチーズにゃ!」
「おいしー!、おいしー!」
皆に好評だが、トマトの好きなキボウには、大好評だった。ものすごい勢いで食べている。
「ユリ、何でボールチャーハンって名前なの?」
そういえば、ソウには説明したことがなかったと思い、説明することにした。
「そもそも、ライスコロッケとか、スップリって呼ぶのが一般的だとは思うんだけどね。なんかよその店で販売終了になって、それを好きだった子供が凄く悲しんでるって聞いてね、作って招待したらその子が、『ボールチャーハン!』って呼んで喜んでいたのよ。それでうちでは、ボールチャーハンってそれ以来呼んでいるわ」
「へぇ、ユリが付けたんじゃなかったんだ」
何故か皆が、感心するように頷きながら聞いていた。
「ユリ様、もう1つ頂いても良いですか?」
「1人当たり2~3個の予定だから、もう揚げてあるわよ。3個目が欲しい人は、声をかけてね。揚げるから」
皿にトマトソースを足し、揚げてあるボールチャーハンをのせていった。
「食べられるなら遠慮せず食べてちょうだいね」
男性の方が食べるのが早いけど、お手伝いの4人は、おかわりを言い出せないらしい。
「ユリ、3個目頼む」
ソウが3個目を頼むと、次々におかわり希望を申し出ていた。なんと、キボウまでおかわりするらしい。ユメが、いったいキボウのどこに入るんだと驚いていた。
ユリが揚げようと厨房に行くと、メリッサが追いかけてきた。揚げてみたいらしい。揚げかたを説明し、11個分を頼んだ。
「油に気を付けてね」
「はい!」
メリッサは楽しそうに、菜箸でボールチャーハンを油の中で回転させていた。
揚げ終わり、店に運び、おかわりをしないユメのために声をかけた。
「食べられるなら、フルーツ宝箱をもう1つどうぞ」
ユメは急いで取りに行き、嬉しそうにフルーツ宝箱を食べていた。
他の皆も食べたいらしく、イポミアが11個持ってきていた。
「ユリ様、6種類だけですか?」
「そうよ」
質問して、少し考えたらしいイポミアは、自分の考えを話すのだった。
「たまにしかない、大当たりとかは作らないんですか?」
「それすると、当たるまで食べ続ける人が出るわよ。ヨーグルトのジャム当てをした時、10回近く食べた人が何人もいたわ」
その時その場にいた、ユメ、イリス、シィスルが頷いていた。エイプリルフールの茄子ジャムの時の話だ。
「種類を制覇したい人には、むしろ買って帰って貰わないと、いつまでもお店に入れない人だらけになるわ」
「あわわわわ」
「ユリ様、フルーツ宝箱の販売制限はありますか?」
「今回は、外販売は、3個セットのみ合計6個まで。店内は、飲食分は制限無し、持ち帰りは3個まで。セットのみの販売になります」
「ハナノ様、それですと、例えば、原色セットを2つでもよろしいのでしようか?」
「はい。その通りです。間色セットを2つでも可能です」
「ユリ様、ボールチャーハンはどうなりますか?」
「お一人様1回のみ、持ち帰り不可です」
皆、メモを取っていたので、大丈夫だろう。
「質問がなければ、お昼休みはしっかり休んでくださいね」
全員昼休憩に入り、一升炊きの炊飯器を3つセットし、ユリも休憩に入った。




